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プロローグ:1 『誰かの手記』
―――曰く。
『悪』とは人の弱さから生まれるものだという。
だが、弱い人間とは必ずしも『悪』であるのか?それは違う。弱い人間にも『善』の心はあるだろうし、強いと思われている人間だって、『悪』を孕んでいるのかもしれない。
だから。
『悪』や『善』というものは、所詮は第三者から見た先入観であったり固定観念であるのかもしれない。他人の見たものが自分に対する全て、というのはなんと薄気味悪く、気味の悪いものなのだろうか。
しかし、しかしだ。その薄気味悪く、気味の悪いものが現在の世の中というものではないか。そんな世界から目を背けずにいることができたのならば。吐き気を催すような邪悪を受け入れることができるなら。それこそ本当の『善』の心を持っている強い人間になれると『僕』は思う。
であれば、これから書き連ねる『少年』の物語も世界を知って受け入れる努力をしようとする『善』の物語なのではないだろうか………