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叶えてあげる☆

作者: 桜色

「はぁ、たく1限目から超キツいし。」股をおおっぴろげだらしなく机に頬杖をつき、あくびをしながら少女は言う。少女はお世辞にも可愛いとは言えない顔つきでどちらかと言えばタクマシイ顔つきだ。その周り囲うようにして集まっている何人かの少女達は彼女よりも遥かに女の子の顔をしていた。

「梨子!だらしなく股を広げないの!女の子なんだから!」周りを囲う女の子の内の1人のいかにもお節介そうな娘が不細工な彼女(梨子)をヤレヤレとも言いたげに叱るが、効き目はなくため息ばかりついている。世にも哀れな不細工の梨子は初恋という人生の一大イベントに心を痛めていたからだ。自分の不細工さを一番に理解している梨子だからこそ、恋焦がれる事自体が恥ずかしく耐えがたいものである。ふと、梨子が目をやるのはクラスで一番の美少年、立川 茜。そう、彼女は彼に恋をしていたのだ…が、

「おい、おい、加美!そんなバカブスほっとけよ!」茜は先程のお節介女に向かって言う。不細工ながらにも頑張ったメイク…ヘアスタイル…すべての努力を彼の一言で砕け散った気がした。



ただのよく突っかかってくる男友達といままで思っていた…小6になって一年ぶりに同じクラスになって知る。

大人になった?今までガキっぽかった茜の突然の成長ぶりに梨子は戸惑うと同時に恋心を自然と抱くようになっていた。けれど、告白なんて出来るはずもない。そんな切ない思いでいた梨子に今日の彼の一言。岩のように重くなったランドセルを背負い涙で滲んだアイメイクを擦りながら梨子は学校帰りの道を歩く。涙で崩れたメイクで更に不細工になった梨子は穴に埋まりたい気持ちでいっぱいだった。


ふと、遠くから何かが聞こえる。

静かな住宅地のど真ん中であり得ない声!!叫び声だ。

しかも、だんだんと梨子に向かって近づいてくる!?右?左?後ろ?前?どの方向にも人影はないのだが【声】はお構い無しに近づいてくる。まさか…と思い梨子は空を見上げようとしたが見上げた先には空は無くそこには梨子が今、一番見たくないような美少女の顔があった。勿論、重力の法則によって一秒もたたない内に梨子は美少女の下敷きになるのであった。「痛いじゃないのよ!」

梨子は美少女を突飛ばし叫ぶ。

痛い事よりも彼女が可愛い事に腹がたった梨子。

突飛ばされた美少女が起き上がると背中に黒いコウモリみたいな小さな羽根があった。

よく見ると変な格好をしているフリフリのミニスカにヘソ出しスタイル!何かの格闘ゲームのコスプレみたいだ。

おまけに大事そうに三日月みたいなのを先っぽにつけたステッキを抱えている。

近くでそういった集まりがあったのか?ドッキリ?まさか…有名人でもないし…頭おかしくなったのか?色んな想像で梨子は頭がパンクしそうになる。【まず、あり得ない】しかし、目の前の幻覚は一向に消えないどころか梨子の手を握りしめてきた。幻覚の手は柔らかく暖かい…そして、彼女は更にあり得ない事を言う。

「初めまして!ボク、悪魔のクーです。あなたの望みを1日だけ、叶えにやって来ました!」

童話や古い少女漫画にでも出てきそうなセリフをしかも真顔で…!?

微笑むクーと名乗る悪魔に梨子は

「悪魔なんだから願いを叶えたら魂を喰らうんでしょ?」と言い放つ。少し申し訳なさそうにクーは言い返す。

「一応、1日だけ寿命を頂きます。ボクはそうすると百年また生きることができます。寿命1日短くするのと願いを叶える…どちらがあなたにとって特かと言うことです?」梨子に迷いはなかった。【どうせ幻覚か夢だ!とことん最後まで付き合ってやる。】



「わかった!梨子、まかせて。」

今までの茜に対する切ない想いを梨子はクーに打ち明けた。するとクーは張りきって梨子に魔法をかけ始める。

「ラーメン、ソーメン、明太子!」クーはそう言いながらステッキから出る光のオーロラのベールで梨子を包む。無論、その呪文は意味はない。クーが雰囲気づけに好きな日本語をならべただけである。そんな事とは知らず呪文の言葉の真意を頭の中で梨子は必死に探していた。その間に不細工だった梨子は世にも美しい美少女になっていた。「どう?これがクーの魔法の力だよ?」鏡を見せられた梨子は唖然とする。コンプレックスなんて一つもないような完璧な姿に今までとは違うため息がこぼれた。

「すごい!こんなになれるなんて…クー、あんた凄いよ。」梨子はクーを褒めたたえる。クーは恥ずかしいのか顔を赤らめ次の魔法に取りかかる。

「ドライブ、どら焼、ドラ○もん!」ステッキから出る光は遠くに消えていく。

「何に魔法かけたの?」梨子の問いにクーは自慢気に言う。

「茜くんに可愛くなった君との思い出を植え付けたよ!設定は幼なじみの一つ上のお姉さん。」

他人の記憶操作まで出来るんだ。梨子は改めてクーの力を実感する。

「これで、茜くんをデートにさ誘えるよね?」クーはクリクリとした瞳で梨子に言う。

「でも…もう夕方だし…」梨子がそう呟くと空にオーロラが現れ一瞬にして太陽を引き戻した。

「今日は日曜日。時間は朝の10:00。これで大丈夫かな?」今度ばかりは梨子も腰を抜かしそうになった。【あり得ない!】そんな梨子の様子が面白いのかクーはにんまりと微笑み、指を鳴らすと同時に茜くんの家の玄関までワープしてみせた。梨子は無論、腰を抜かし、暫く動けなくなった。

「頑張って!ボクは影で見守ってるから!」そう言って腰を抜かした梨子を放ってどっかへ飛んでいった。

「ちょっと!?」そうマッタをかけるが…手遅れ、何処にも見当たらない。さらに追い討ちをかけるように茜が家から出てきた。よりによって、腰を抜かして間抜けな体制の時に…。梨子は思わず、真っ赤になって顔を俯ける。

「桜姉さん(クーがつけた名前)大丈夫?」茜は梨子?いや、桜を抱き起こす。初めて間近で見る茜の顔に桜は身体が熱くなるのを感じた。「ありがとう。」なんとか桜は声をしぼりだすと茜は優しく微笑む。

「今日は何処に行きたい?」

「えっ!?」桜は驚く。

「どうしたんだ?桜姉さん、忘れてる?今日は一週間も前から約束してたデートの日だろ。」茜の言葉にクーの記憶操作の技術を知る。桜は、クーの魔法に甘えて茜の腕を抱き締め一緒に歩きはじめる。いつも意地悪な茜が優しくしてくれる。嬉しいけれど複雑だった。【ブスだからいつも、あんなに意地悪なの?】茜の横顔に心の中で問いかける。

小4の時…一度だけ茜が梨子に優しくしてくれた事があった。雨がやまず暗くなるまで梨子は正面玄関でひとり立ち往生していた。だんだん怖くなり泣きべそをかいてうずくまっていると茜が現れて梨子を黙って家まで送ってくれた。

きっとブスだから?可愛いとか?関係なく茜くんは優しいんだろうな…梨子は茜を見つめる。この綺麗な瞳に愛されるのは一体どんな人なんだろう?「で?今日は何処がいい?」視線を急に合わせられ桜は顔を赤らめる。それを見透かすように茜は微笑む。

「遊園地!賀茂川遊園地に行きたい!」すぐ近くにある人気の遊園地の名を桜は一番に言う。一度でもいいから茜と一緒に行きたいと思っていたからだ。

「わかった。そうしようか。」遊園地に向かって二人は歩く。茜くんの隣にいられる!桜はそれだけで胸がみたされた。



【誠に勝手ながら本日はお休みさせていただきます。】

遊園地につくと正面玄関に誠に勝手な張り紙があった。「どうしよう…。」せっかくの今日1日の魔法なのに…。桜はうつむくと、地面があるはずのそこに彼女はいた。

「大丈夫。茜くんには見えてないよ。安心しなよ!ボクが今から最高のデートスポット用意してあげるから。」そう一方的に言い放つと光の粒となって消えて行った。

「見ろよ!あれっ!」暫くボーゼンとしていた桜は興奮しきった茜の声で目覚める。

「なになに?」桜は茜の差す方角に目をやると…


巨大な空母!?みたいな飛行物体がこちらへ向かってくるではないか!?桜はクーの自信に満ちたあの笑顔を思い返す。

【いくら何でもヤリスギだ!】桜はクーを目で必死に探すが、何処にもいない。

「ヘェ、オープン記念。1日無料招待だって。入って見ようよ。」何の疑いもなく、茜はその目の前に着陸した、非現実的な飛行物体への【入り口】と書かれた看板のある方へ歩いて行く。桜は慌て茜を追いかける。看板の下の扉には無料の言葉が踊った派手な広告がコレでもか!と言わんばかりに貼られていた。恐る恐る中に入る桜をよそにすっかり興奮しきった茜は勝手にどんどん進んでいく。桜が扉の中に入り終えた頃には茜はすでに目の前の階段を上り終えていた。

「桜姉さん!凄いよ。早く来いよ!」上の方から声がする。三十段はあろうかと言うこの階段を僅か十秒足らずで昇らせてしまう。男の子の好奇心の強さを初めて桜は実感する。

階段を上った先にはアノ、有名テーマパークを思わせる偽物キャラクターの着ぐるみ達が出迎えてくれた。ショーは水や花火などを使ったド派手な物。正直、凄いと思った…けれど偽物キャラクターのデザインが不気味で不快としか思えなくなった。相変わらず茜は

「すげぇ!」

「わあぁ」なんて繰り返し言っている。桜は思い切って茜を連れて走る。

「何だよ!?いい所なのに。」不満そうな声をあげる茜。桜は顔を膨らまして茜を見て言う。

「だって、ショーに夢中でちっとも私の事、見てくれてない!せっかくのデートなのに…。」怒っているはずなのに、桜は目頭が熱くなり暖かい雨が零れ落ちるのを感じた。

「ごめん…。」茜は静かに答える。

「ね、ジェットコースター乗らない?」桜が微笑みながら言うと茜はイタズラな微笑みを返した。



楽しい時間はあっという間で気が付くと夜になっていた…。

「そろそろ帰ろうか?」茜がそう切り出す。

「あっあの…」

桜は真っ赤に顔を火照らせて言う。



知ってましたか?



好きです



好きです



好きです



不細工な私を愛してくれなくても…



好きです



偽りの姿でも…伝えたい

好きです

「好きです!」


涙が零れ落ちる。だって、もし彼が桜を好きだと言っても、私は不細工の梨子…叶うハズのない恋だから。



「ごめん…俺、ほかに好きな奴いるんだ。だらしなくてほっとけなくて…何で好きになったの?って本当、思うよ。」


光の粒子が二人を包む。オーロラがいくつものベール放つ…。


「クラスメイトの梨子っていう奴が好きなんだ。」



「本当?」


桜は梨子に戻っていた。気が付くと賀茂川遊園地の入り口に戻っていた。

「えっ!?何で?梨子が?」茜は我に戻るなり真っ赤になり自問自答を繰り返す。梨子もなんだか恥ずかしくなり

「なっ何にも聞いてないよっ。」と帰ろうとする梨子の腕を掴む茜。

「返事…くれよ。」




「えー!?梨子が茜くんと付き合ってるぅ!?」

次の日、ブスと美形の異色カップルは学校中を騒がせた。【あの後、結局クーは現れなかった。なんか茜くんも記憶曖昧だし…夢だったのかな?】梨子がそんな事を考えていると教室に先生が入ってきた。

「今日は転入生を紹介する。」


まさか…



「方城 空だよ!宜しくね!」

男の子の格好した、紛れもないクーの姿がそこにあった。



「あぁ、席は梨子の隣な?あのブスの隣。」



「カッコいい!」



感嘆の声


「何考えてんのよ!?第一、お前は女だろっ!」空が隣に座るなり、梨子は小さな声で怒鳴る。

「ボク、男の子だよ?ちょっと可愛くしてただけ…それに」



「それに?」



「ボク!梨子の事好きになっちゃった!」



そう言って空は教室のど真ん中。クラスメイト、茜くんがいるなかで梨子のファーストキスを奪う。まだ、まだ波乱は終わらないみたい。

感想☆評価待ってますので宜しくお願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] や、こういうノリは結構好きです。 気になる点は二つ。まず主人公の心の声は【】よりも()で表した方が分かりやすいと思います。理由は一般的だからなのですが、読む側にとっては一般的なほうが良いよう…
[一言] 評価依頼ありがとうございました。 小学生のラブストーリーで、微笑ましかったです。ストーリー的にはよくあるラブコメ・ファンタジーのようですが、もっと情景描写や心理描写を入れて描き込めば面白くな…
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