入学編III
「みなさんありがとうございました。それでは連絡に移ります。」
自己紹介が全員分終わると、教師のレイラが言った。
「ええ、明日からは授業が始まります。入学者案内に書かれたものを忘れずに持ってきましょう。あと、もう一点、来週には何があるか、もう知ってますよね。そう、武術大会です!みなさん初めて会った人も多いでしょうが、四人までのチームを組んでください。優勝者は今月分の授業料タダですよ!」
《おお、伯母さん達から自立する第一歩だ!何としても勝たねば》
《お主も大変であるな…》
喜ぶアルスにシエルが囁く。
「ただし、チーム申請の締め切りは明日までです。早めにしておきましょうね。それではホームルームを終わります。」
ホームルームが終わると皆は周囲の人を誘い出した。
「ねぇ、一緒に組まない?」
「一緒にやろうぜ」
そんな声が飛び交う。
もしかしたら自己紹介で強そうなやつに目をつけてたやつもいるかもしれない。
《俺みたいな普通のやつには寄ってこないだろうな。明日余ったやつとでも組めばいいか。きっとあの学年主席さんは別クラスみたいだが大層人気だろうな》
そんなことをいって教室を出ようとした時、
「なあ、アルスだったよな、一緒に組まないか!」
そう言って声をかけてきたのは、ガッチリとした体つきの男だった。
「確か…アレックス君?」
「アレックスでいいぜ。アレックス・ライスターだ。宜しくな。」
「こちらこそ、アレックス。俺はアルス・シュナイダー。武術大会の件、こちらこそ宜しくな。」
《なんだこいつ見た目の割に人を見る目があるではないか》
《おまえ口悪いな》
シエルの囁きにまたしても突っ込む。
「アルスは剣術が得意って言ってたよな。俺も大剣が得意なんだ。」
「そうか、よかったら今度一緒に訓練してみないか?」
「いいな」
そんな話をして別れを告げた。
二人以上で武術大会には参加できるとのことだったので安心してアルスは寮へと続く道へ向かう。
と、ここで、
「まって、アルス君」
アルスには呼び止める声に二度ほど聞き覚えがあった。
一度は天空龍シエルと出会ったあの日。二度目は先の自己紹介。
アルスが助けた少女クレア・ローゼンベルグだった。
「あの日ちゃんとお礼も言えなかったし、病院でも足の治療で暫く動けなかったから。あの時は本当にありがとう。」
「そんな大したことないさ。そうだ、クレアさんは武術大会のチームはどうなった?もしよかったら俺とアレックスってやつと組まないか。」
「誘ってくれてありがとう。でも私はいいわ。」
「そうか…わかった。これから宜しくな。」
「ええ、宜しく。」
そんなことをいって別れを告げた。
《なんだ、クレアもチーム決まってたのかな。》
《そんなことよりお主、あの少女を助けられたのは我のおかげであろう。お主だけ感謝されるのには納得いかんぞ。》
いつもの如くシエルが話しかけてきた。
《おまえなぁ。はいはい、ありがとうございました。》
《なんだその心のこもってない挨拶は。》
そんな話をしていると、いつの間にか寮に着いていた。
《ここて暫く暮らすのか…》
石造りで10階ほどあるまだ新しめの建物だ。ドワーフの職人が造ったのだろうか。
《ええと、俺の部屋は…ここか!》
部屋を開ける、と先客がいた。