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閑話

「バレル山にサンダーバードだあ?」

 髭面の巨漢が依頼掲示板を見つめ、素っ頓狂な声を上げる。

 彼の名はアントン。ギルドでカイン達に絡んでいた冒険者だ。

 目線の先にあるのはサンダーバード討伐依頼。このレベルの魔物が街からそう遠くない場所に出るのは珍しい。

「どうもあのガキ二人がサンダーバードにやられて逃げてきたらしいっすよ」

「ガキんちょどもがバレル山まで行けるかあ?依頼失敗をごまかすために嘘ついたんじゃねえの」

 アントンの後ろには金魚の糞が二つ。チンピラじみた格好をしているが、一応アントンのパーティメンバーであり、冒険者だ。

「あのガキどもは何度か見かけたが、どうやら真面目に依頼をこなしているようだぞ。それに見ろ、この依頼はギルドから出ている。ガキがギルドを騙せるとは思えん」

「あっ、本当っすね」

 魔物の危険度や出現した場所によっては、ギルドが依頼を貼り出したり、冒険者を直接指名して依頼する場合もある。サンダーバードはそれだけの相手だということだ。

「ふん、ここらのひ弱な冒険者じゃあ荷が重いだろう、ここは俺様が片付けてやる」

「さすが兄貴!そこにシビれる憧れるっす!」

 アントンは依頼票を手に取り、カウンターへと向かった。



「どうやらあの木を巣にしているらしいっす」

 斥候役のチンピラAが岩陰から様子を窺う。サンダーバードは人間の気配に気づいているようだが、動き出す様子はない。

「よし、作戦通りいくぞ。アースガードは持ったか」

「大丈夫っす」

「行け!」

 チンピラAが素早くサンダーバードへと接近する。遅れてアントンもドシドシと走っていく。

 チンピラBはその場で弓を引き絞り始めた。

 サンダーバードは飛び上がって迎撃態勢を取った。

「ていっ!そこっす!」

 チンピラAが投げナイフを連続投擲する。サンダーバードは回避しきれず、わずかに翼を傷つけた。

 サンダーバードの顔がチンピラAへと向けられ、口から細い光がまっすぐに放たれる。

 雷魔術の通り道を作るための予備動作だ。

「今だ!」

 合図を受け、チンピラBが矢を放った。だが、同時に稲妻が放たれる。

「ケエエエン!」

 轟音とともに放たれた稲妻が地面を焦がす。チンピラAは崖に張り付くように回避していた。

 そして、サンダーバードの翼の付け根には深々と矢が突き刺さっている。矢をより確実に当てるため、最も素早いチンピラAがおとりとなったのだ。

 サンダーバードはフラフラと不安定に飛びあがる。無理に羽ばたく度に血液が飛び散った。

「敵よ、俺様の前にひれ伏すがいい!ダウンバースト!」

 アントンが魔術を発動し地面へと向かう風を起こす。サンダーバードは耐えきれずに地面へと降りた。通常ならばサンダーバードクラスの敵にはそよ風のような物だが、傷付き不安定になっている今は十分な効果があった。

 ちなみに、やたら偉そうなのは彼が詠唱を自分好みに変えたからだ。

「もらったあ!」

 アントンが斧を振りかぶりサンダーバードへと迫る。体勢を崩し回避できないと悟ったサンダーバードは攻勢に出た。

「ケエエン!」

 口から光が放たれる。大きく振りかぶっているアントンは動きを途中で止めることが出来ない。

 再び響き渡る轟音。

 だが、その直後にサンダーバードの首が宙を舞っていた。

 アントンの斧がサンダーバードを捉えたのだ。サンダーバードが動かなくなったのを確かめると、どっかりと腰を下ろした。

「兄貴、大丈夫っすか!?」

「アースガードで受けてなけりゃヤバかったな。ちょっと左手が火傷するくらいで済んだ」

 アースガードは金属のワイヤーを何本か地面へと垂らしている独特の盾だ。電撃を地面へと逃がす効果があり、サンダーバード対策として用いられる。

「それにしても兄貴の魔術、いつ見ても凄いっすね!尊敬っす!」

「いやあそれほどでも……あるがな!」

 ガッハッハ、と笑い声が響いた。



 意気揚々と下山する一行。

「これでかなり儲かりましたね兄貴!そろそろハクメンスに行くのもいいんじゃないっすか?

「そうだな、ガハハ!サンダーバードがほんとに居てくれて良かったぜ!」

「あー、兄貴も半信半疑だったんじゃないっすかー」

「まあな。あの小僧の性格からすると、サンダーバードに出会っても突っ込んでいって無駄死にだろうと思ってたんだが……嬢ちゃんの方がうまくやったかな」

 アントンの想像は半分当たっていた。カインが死ぬまで突っ込まなかったのはその前に気絶をしたからだ。その後、アメリーが撤退の判断をしたところは当たっている。

「兄貴、随分あいつらのこと気にかけてるんすね」

「あの小僧、貪欲に強さを求めるギラついた目をしてやがった。まあ、そういう奴は大抵無駄死にするから、一回痛い目見せてやろうと思ってんだがな。嬢ちゃんの方がうまくブレーキ掛けて生き延びれたら、強くなるかもしれん。まあ俺様の方が強いが!」

 ガッハッハ!と、豪快な笑い声が山彦となって響いた。

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