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第二話 雷を放つ魔獣 後編

 冒険者となって一週間、狩ったことのある魔物の討伐依頼や採取を中心に依頼をこなした。討伐依頼は依頼主が魔物の素材を必要としている場合が多く、ギルドに売れないため思ったより稼げなかった。工事の手伝いのような、街中での力仕事の依頼は意外と良い報酬だったが、戦闘経験を積みたいのでパス。その結果、

「稼げん!もっと実入りのいい依頼をやらねばならん!」

 いずれは内地に行くための渡航費用も貯めたいし、新しい装備だってほしい。

「はい!私にいい考えがあります」

「なんだねアメリー君」

「カインがイカ焼きを食べる量を減らせば解決するであります!」

「却下だ。私が前衛として戦うには大量のイカ焼きエネルギーが必要なのだ」

「イカ焼きに限らず、私の三倍は食べてるよね……食費が~」

 まあ、おふざけはこのくらいにして。

「そろそろ依頼をこなすのにも慣れてきたし、難度が高めの依頼に挑戦してみてもいいと思うんだ」

「具体的にはどんなの?」

「少し遠出をする必要のある採取系依頼がほしい。戦ったことのない魔物には挑戦したいが、もし勝てそうになくて逃げ出しても依頼自体は完遂できるものがいいな」

「分かった……ええと、廃鉱からの採掘依頼。魔物が出て廃鉱になったところに希少な金属が残ってるんだって」

「却下だ。鉱石なんて見分けられないし、重たくて持ち帰るの大変そう」

「じゃあ、これ。シェルクラブ漁、凄い稼げるよ!でも雇用期間一年だって」

「却下ああ!」

「もう、文句ばっかり、自分で読んでよ……あ、これなんてどう?月光草の採取依頼。バレル山の山頂付近で取れる特別な薬草なんだって。報酬は……応相談ってなってる」

 バレル山か。確か往復で三日くらいの距離だったな。今まで見たことのない魔物との戦いも経験できるかもしれない。問題は報酬だが、

「よし、とりあえず話を聞きにいってみようか」

「賛成、行こう!」


 依頼主は宿屋の近くの商店に住んでいた。街はずれで、言っちゃ悪いがちょっとボロい店だ。こりゃ報酬は期待できんかもしれないな。店番の女性に声を掛ける。

「ごめんください。冒険者です。月光草採取の依頼者はあなたですか?」

「はい、そうです!どうぞ上がってください」

 俺たちは中へ通された。女性は奥にバタバタと引っ込む。おかあさーん、冒険者さん来てくれたよ!と声が聞こえた後、お茶を持ってきてくれた。

「すみません、母は体調が優れず……本当は一緒にご挨拶したいのですが」

「いえ、お気になさらず。それに申し訳ないのですが、まだ依頼を受けると決めたわけではないのです。詳しいお話を聞かせてもらえませんか」

「はい。お願いしたいのは月光草の採取です。母の病気の治療に使う分だけで大丈夫なので、量は二、三本で十分です」

「お母さん、病気は重いんですか?」

 アメリーが気遣わしげに尋ねる。おい、俺は早く報酬を聞きたいのだが。

「もともとあまり体が強くはなく、慢性的な病に侵されていたんです。体調が良くなったり悪くなったりを繰り返していたのですが……一年前、体調が悪くなった時に、父は私たちを捨てて出ていってしまったんです」

 女性が重い息を吐く。恨みとやるせなさが混じった、暗い目をしていた。

「父がいなくなり、私と母で仕入れと店番をこなさなければならなくなりました。その無理が祟り、いよいよ病気が重く……薬屋さんが無料で診てくれたのですが、見立てによると月光草から作れる薬が必要だそうです」

 話を聞き、アメリーがうるうるしている。おい、そんな目で俺を見るな。依頼を受けるかは報酬しだいだから。

「事情は分かりました。依頼票には報酬が書かれていませんでしたが、どれくらいの金額をお考えですか?」

「母が倒れてからほとんど店を開けることが出来ていないので、申し訳ありませんが金銭的余裕はありません。父は素材を仕入れるために自分で魔物を狩ることもあったので、いくつか装備が残ってます。それを報酬にできませんか?」

「なるほど。ではその装備を見せてください」

 女性は奥から装備を運んできた。

「おおっ、鉄の槍。これはかなりほしいぞ」

「私はあんまり装備はいらないから微妙かも……」

「これなんてどうだ、ほれ。お前なら装備できそうじゃないか?」

 俺は青銅の胸当てをアメリーに渡す。

「お前ならってどういう意味よ、さすがに男性用は無理だから!」

 ごそごそと物色する。俺たちが使えそうなのは鉄の槍、革の帽子、短剣くらいだった。護身用としてアメリーにでも持たせておこうか。もし新品でこの三つを買いそろえようと思ったら、俺達駆け出しにはそうそう手が届かない値段だ。

 装備が強くなれば、より稼げる依頼も受けやすくなるだろう。

「この三つをいただけるならば、依頼をお受けしたいと思います」

「申し訳ないのですが、報酬は後払いでも構いませんか?」

 む、正直鉄の槍の使い心地は早く確かめたかったし、俺用に改造もしたかったのだが。俺達が万が一死んだり、あるいは持ち逃げされたりしたらと考えたら当然か。

「はい、いいですよ」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 正式に依頼を受けるため、ギルドに一旦戻って依頼票を受け付けに提出する。ついでにバレル山についての情報を受け付けのお姉さんに聞くと、いろいろと教えてくれた。

 その後は旅の準備を整えた。とはいっても、お金が無いので大した物は準備できない。新しく買ったものは丈夫なロープくらいだ。

「それでは俺の槍の為に、バレル山へしゅっぱーつ!」

「お母さまの病気を治すために、しゅっぱーつ!!」

 俺達はバレル山へ向かい、歩き始めた。



 山への道のりは草が踏まれて獣道のようになっていた。腕試しや登山目的で行く冒険者が少しいるそうで、山も人が通ったことで登山道のようなものが出来ているらしい。

 一日目は山のふもとまで行く予定だ。二日目で山へ登って月光草を採取出来たら降り、三日目で帰る。

 登山道の入り口が見えてきた頃、初めて見る魔物であるワイルドボアに出会った。突進が得意な魔物で、攻撃は読みやすいが直撃すると危険だという。

「はっ」

 俺は余裕でひらりとかわす。ハングリーベアよりは速い突進だが、急に曲がったりはしないし体が小さいので怖くない。だが

「ちょっ来な、きゃあ!」

 後ろから悲鳴が聞こえた。しまった、一直線に並んでしまっていたのか。

 アメリーが地面を転がり、ワイルドボアは近くの木に激突して止まった。

 俺は背後からワイルドボアを仕留め、アメリーに駆け寄る。

「大丈夫か」

「魔力障壁で逸らしたから、なんとか無事……もう、カインのせいでワイルドボアが見えなかったんだからね、危なかったじゃない!」

「真後ろに立ってるお前が悪い」

「ぐぬぬ……」

 まあ無事でよかった。


 一日目はワイルドボアを倒したあたりで野営にした。急に手に入った「晩飯」を運ぶのが面倒だったのだ。

 肉をかじりながら、アメリーと話す。

「なあ、魔力障壁ってどういう魔術なんだ?あの突進を対処できるなら結構便利そうだ」

「ほんとはちゃんと詠唱もあるシールドって魔術なんだけど、あれは魔術っていうより魔力そのもので押し返してるというか……ちょっと見てて」

 アメリーはワイルドボアの骨を置いて手をかざす。すると、反発するように骨が弾かれてコロコロと転がり、すぐに止まった。

「この通り、軽く押し返して弾くくらいしかできないの。カインに殴られたりしたら全然止めきれないかな。さっきのあれは、少しだけ勢いを逸らして反対側に自力で避けただけよ」

「なるほど。だがそうやって自身の動きと組み合わせれば使えるってことだな」

 魔力障壁で一瞬相手の動きを遅らせて、その間に攻撃とかできたら強そうだ。

「よしアメリー、俺にそれのやり方教えてくれ」

「えっ、いいけど……結構きついよ?」

「とにかくやってみるさ」


「むむむむむ……むーん」

 俺は小石に手をかざし、念じて動かそうとする。魔力障壁を使う第一歩らしい。

 動かす力を広く防御のために張れば魔力障壁、一点に集中して物を飛ばせばストーンバレット(アメリー流)になるんだとか。

「むむむ……なあアメリー、これなんかコツとかないの?」

「石が動くのを強くイメージして。幻覚が見えるまで」

「え?なんつった?」

「幻覚が見えるまでイメージ。石が動く夢を毎晩見るようになったら習得は近いよ」

 ……俺にはちょっと、無理かもしれない。



 二日目は山を登り始めた。聞いていた通り人が通った形跡がはっきり残っていて、迷うことはなさそうだ。

 山の中腹からは木々が減り、岩肌が多く露出するようになってきた。切り立った崖も多く、うっかり足を踏み外せば無事では済まないだろう。

 先人が残した目印を頼りに細い道を進んでいくと、木に大きな鳥がとまっているのが見えた。今まで見たことがない相手だ。

「魔物か……?倒していくしかないか」

 道の左右は崖になっていて、迂回はできない。鳥はじっとこちらをにらみつけていて、勝手にどこかへ行ってくれるのも期待できなそうだ。

「アメリー、一緒に突っ込むぞ。俺を飛び越えてお前を狙ってくるかもしれないから離れすぎないように」

「分かった。槍が届かないところまで飛んじゃったら私に任せておいて」

「行くぞ!」

 気合を入れて突っ込んだ。鳥は翼を広げてこちらを威嚇してくる。

 でけえなおい。翼の先から先まで測ったら3m近くありそうだ。ちょっとビビりながらも槍を突きだす。

「はあっ!」

 だが飛び上がって軽々と回避されてしまった。そのまま羽ばたき、徐々に高度を上げていく。

「敵を穿て!ストーンバレット」

 そこへ石が飛んでいき、避けようとした鳥の翼に当たる。今の石は俺がしっかり尖らせた特別製だ。どうやら貫通したらしく、血がボタボタと垂れ落ちる。

「ケエエン!」

 だがサンダーバードは落下はせず、相変わらず槍の届かないところを飛んでいる。体勢を立てなおした奴の口から、細い光がまっすぐ放たれた。光の先は、アメリーの体の中央を照らしていた。

「危ない!」

 何をしてくるかは分からなかったが、とっさにアメリーを突き飛ばす。次の瞬間、強烈な光とともに全身に衝撃が走った。



 彼が私を突き飛ばした直後、激しい光に目を閉じる。一瞬遅れて轟音がやってきた。目を開けると、彼が体をビクリとのけぞらせ、倒れ込むのが見えた。 

「カイン!」

 私はカインに駆け寄り、背負って走り出す。何をされたのか分からないけど、多分強力な魔術だった。一人じゃ絶対に勝てない。逃げないと。

 私が逃げ出すと、鳥は元いた木に戻っていった。あそこを巣にしているのかもしれない。見逃してくれるのは幸運だ。相手の気が変わらないうちに、山道を駆け下りた。

 背中から呼吸音が聞こえる。良かった、生きてる。

 十分に鳥から離れたあたりで、大きな岩を見つけた。岩陰に隠すようにカインの体を横たえ、体の状態を確認する。

「ひどい火傷」

 服を脱がせて、傷薬で湿らせた包帯を巻いていく。火傷は背中を中心に広範囲に広がっていた。ありったけの傷薬を使い、ほとんど全身を覆った。

 光と轟音、そして全身の火傷。この攻撃は聞いた覚えがある。

「サンダーバード……」

 人間の魔術では再現できないとされる、独自魔術を扱う魔物の一種だ。そうだとすると、私たちではとても敵う相手ではない。命を失っていてもおかしくなかったのだ。

「カイン……また助けられちゃったね。ありがとう」

 私は一粒、涙を流した。



「う、うう…いつつ」

 目を覚ますと全身の痛みにうめいた。だが、なんとか動けそうなので体を起こしていく。

「カイン、目が覚めたのね。大丈夫?」

 アメリーが心配そうに見つめてくる。手足をゆっくりと動かしたり、体をひねったりして調子を確かめる。

「痛みはあるが、体は無事だ。走ったりする程度はなんとかなると思う。これ……手当てしてくれたんだな。ありがとう」

「こっちこそ、守ってくれてありがとうね」

「ところでこの包帯、下着の中までしっかり巻いてあるようだが……」

 アメリーの顔がボンっと音がしそうなほど赤くなる。

「き、きんきゅうじたいだったから!しょうがないでしょ!」

「ああ、しっかり手当てしてもらえて助かったよ」

 ついさっきまで危機にあったことなど嘘のように笑った。どうも、アメリーと一緒だと気が休まりすぎて困る。


 その後、気絶してからどうなったのかを聞いて、今後の方針を相談する。

「あの木に戻っていってくれたのは良かったが、同時に厄介でもあるな」

「そうね。あそこを巣にしているなら避けては通れないから」

 あいつともう一度やりあうのはご勘弁願いたい。あの魔術の対策を立てないと無理だ。

「……ねえ、依頼失敗ってことで帰らない?依頼主には悪いけど、事情を説明してさ」

「それが無難だな。だが、すぐ帰る必要もない。もう一あがきしてからでもいいんじゃないか?」

 俺は、目の前に立ちはだかる崖を見つめた。


「のわあああああ!」

 俺は本日何度目かの自由落下を行う。手をひっかけた部分の岩が急に崩れたのだ。

「受け止めよ!シールド」

 下で待ち構えていたアメリーが勢いを抑えてくれる。俺は転がって落下の勢いを逃がしながら着地した。

「おおーいてて。衝撃が火傷に染み渡るぜえい」

 無意識に涙がはらはらとこぼれ落ちた。やっべ、マジでいてえ。

「や、やっぱりこんな無茶な方法やめようよ……」

 作戦はこうだ。

 俺がロープを持って崖を登り、登り切れたら上からロープを垂らす。そうすればアメリーも安全に登れるだろう。もし登るのに失敗して落下しても、下でアメリーがシールドを張ってくれればダメージは最小限で済む。

 これならサンダーバードのいる場所を通らずに、崖上の登山道までショートカットできると思ったんだが。しかし……

「俺は自分で思っている以上に不器用なのかもしれない」

 何度挑戦しても全然登れないとはな。そろそろ限界だ。

「じゃあ今度は私がロープを張りにいくよ」

「馬鹿言え、お前は落ちながら正確にシールド張れるのか?そして受け身を取れるのか?そんな危ないことやらせられるか」

「それを言ったらカインだって怪我してて危ないじゃない……あっそうだ」

 何かを思いついたらしく、ロープの端を石に巻き付けるアメリー。

「こうして……ストーンバレット!」

 石が勢いよく崖の上へと飛んでいく。

「んー。えいっ」

 微妙に魔力を調整したらしく、崖上に生えている木にくるくるとロープが巻き付いた。クイックイと、ロープを引っ張って強度を確かめる。

「よし。ちょっとカイン、これにぶら下がってみて」

 言われるがままにぶら下がってみる。俺の全体重がかかってもビクともしない。

 俺は思わず地面に崩れ落ちた。痛みとは別の涙がぽたりと落ちる。

「おまっ……そんな方法あるなら最初からやれよお!俺が何度も地面にたたきつけられたのはなんだったんだよ!」

「ご、ごめん……」

 アメリーは目を逸らして謝った。思いつかなかったのはしょうがないことで、俺が落ちまくったのはただの自業自得だ。それはお互い分かっているのだが、反射的に謝ってしまうほど今の俺はみじめに見えただろうか。


 それからは魔物に見つかることもなく、順調に進んでいった。強力な魔物に遭遇してしまったら、サンダーバードを避けるために崖を降りて逃げなければならないところだったので助かった。

 そしてついに、目当ての山頂に到着する。

「おお、あれが月光草か。話に聞いてた通り、見た目は普通の草だな」

 月光草のくせに光らないのは名前負けしてると思います。

「高い山にだけ生えてる草だから、月の光に近い場所じゃないと育たないんじゃないかって言われて付けられた名前らしいよ?」

 実際は気温とかの問題だろうけどね、とアメリー。

 意外とこいつ色んな知識持ってるんだな。月光草もサンダーバードも俺は存在を知らなかったんだが。

「まあとにかく、これで依頼達成だ!」

 俺は月光草を引き抜いてザックに入れる。

「いやー大変だったが、冒険した!って感じだな」

「そんなボロボロでなんで楽しそうなの?それに、まだ依頼は終わってないよ」

 ほら、とアメリーが指さした方を見る。そこには、人骨が散らばっていた。

「ここも魔物が出るみたいだから、早く山を降りましょう」

「そうだな……お、なんか落ちてるぞ」

 人骨のそばにペンダントがあった。貰えるもんは貰っておこうと思い、手を伸ばす。

 すると、ひょいっと避けるようにペンダントが動いた。

「おわっこれなんだ?どうなってんだ解説しろアメリー」

「んー、魔力障壁がかかってるみたい。マジックアイテムね」

「おお、そりゃいいな。持って帰ろう」

 両手で挟むようにするとペンダントを手に取ることが出来た。一度触れると、もう俺に対して反発することはなくなったようだ。早速首にかけてみる。

「よく抵抗なく人様の遺品を装備できるね」

「別にいいだろ。よし、アメリーちょっと俺を殴ってみろ!……あべしっ」

 いい物を手に入れられたが、防御力は気休め程度のようだった。



 サンダーバードの相手に時間を取られた上、俺の歩きが少し遅くなったために、予定より遅い四日目の午後に無事サッキャバへ帰りついた。

 帰り道でも何度か雑魚魔物に絡まれたものの、アメリー一人で蹴散らしてくれた。俺も傷薬のおかげでだいぶ回復していたのだが、槍はサンダーバードに気絶させられた時に落としてそのままだったからな。

 街に着き、俺はすぐに宿で休もうと主張した。しかし月光草をすぐにでも届けたいとアメリーがうるさいので、仕方なく依頼主の商店へ向かった。


「まあ!そんなボロボロになって……大丈夫ですか!?」

「カインなら大丈夫です。それより、依頼の品採ってきましたよ」

「ありがとうございます。さ、どうぞ上がってください」

 いや、俺割と重症だからね?宿で早く休みたい。

 部屋に入ると、今回は母親も起きてきて俺達に挨拶をした。病気のせいか顔色は良くないが、寝たきりというわけではないようだ。

「あなたが依頼を受けてくださった冒険者さんね」

「はい、無事月光草を採ってきました。お使いください」

「どうもありがとうございます。ところで……そのペンダント、どちらで手に入れました?」

「これですか?バレル山の山頂付近で拾った物です。冒険者の遺品だと思います」

「少し見せていただいてもよろしいかしら」

 俺はペンダントを外して手渡す。

「お母さん、これって……」

「ええ、私が昔旦那にあげた物よ」

「それがバレル山に落ちてたってことは……そっか。そうだったんだ」

 なるほど。俺にも話が読めた。この家の父親は、病状の悪化した妻の為に月光草を採りにいっていたのだ。しかし、そこで命を落としてしまう。家族に何も言わず出ていったのは心配をかけまいとしたのかもしれない。しかし結果として、妻と娘は捨てられたと勘違いして過ごした。

「ひどいじゃないですか、あなた。私のためだからって、置いて逝かれるんじゃあちっとも嬉しくないですよ」

 遺された親子は静かに泣いていた。


 悲しい過去の真実を知るのと、知らずに捨てられたと思い続けるのではどちらが彼女らにとって幸せだったのだろうか。はっきりしているのは、三人での暮らしは二度と取り戻せないということだけだった。

 俺も、取り戻したくても取り戻せない物がある。

 せめてこれ以上失わないように、出来る限りのことをしよう。

 この世界は決して優しくないのだから。

二話終了時点でのステータスイメージです。


カイン 人間 男 戦士 15歳

HP29 MP10

器用度 13

敏捷度 19

筋力  23

生命力 17

知力  8

精神力 10


技能Lv

ファイター 4

スカウト 1

レンジャー 1

持前の腕力を生かすだけの技術が、実戦を通して徐々に身についてきた。

とはいえまだまだ半人前。


アメリー

HP24 MP27

器用度 10

敏捷度 14

筋力  14

生命力 15

知力  19

精神力 18


技能Lv

ソーサラー 3

レンジャー 1

セージ 3


サンダーバード戦の経験から、魔物の知識を蓄え始める。

カインがその辺に興味ないので、私がしっかりしなくちゃと張り切っている。

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