表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

修羅場とは突然にやってくるものである

急遽、勇人の家に来る事になった橋本と花咲。そこで繰り広げられる修羅場。

ラブ神が家に住む条件として、勇人の父が出した以外な条件とは!?

さらに今回は、勇人の以外な過去の真実も明かされる!

「ただいまー....」

「「おじゃましまーす」」

「おかえりお兄ちゃん。あ、彩音さんと恋色さん!」

「久しぶりだね~佐奈ちゃん」

「ヤッホー!佐奈!」

こいつら無駄にテンション高いな....。嫌な予感しかしない!

「うん!それで今日はどうしたの?」

「なんか勇人の様子が変だったから佐奈に何かあったか聞きたくて!」

ぐ....!いきなりストライクゾーン狙ってきやがる!

「あるよ!それもすっごいのが!」

「佐奈ちゃん。それ教えてもらっていいかな?」

橋本が笑顔で佐奈に言った。けどおかしいな...。目が笑ってないぞ!

「あの....」

「勇人は黙ってて!」

拒否権どころか、話す権利すらないようだ!

「それで佐奈ちゃん?何があったの?」

「実はーー」

やばい!なんとかして食い止めなければ!と思った時、一つ名案が浮かんだ。メニューよ開け!俺は脳内に訴えた。そしてメニューの中にある一時停止ボタンを脳内タップした。その瞬間、三人の動きがピクリと止まった。

「ふぅ....」

なんとか間に合ったぜ!後一歩遅れてたら....いや、そんな事考えてる暇はない!ラブ神の所に行って事情を説明しなければ!俺は、階段をいつもより速く駆け上がった。

「ラブ神!」

階段を上った勢いのまま部屋の扉を開けた。

「そんなに慌てているのは、時間を止めた事と関係があるんですね?」

ラブ神は冷静な対応をしながら居座っていた。

「ああそうだ!今、俺のクラスメイトが来てるんだが、お前が俺の家で暮らすって事話したらなにされるかわかんないんだ!だから助けてくれ!」

俺は必死でラブ神を説得したがラブ神は首を横に振った。

「そんな事しても無駄です。いずれかはばれるに決まってます。ここはおとなしく、本当の事を伝えるべきでしょう」

「って言われてもなんて言ったらいいか....」

俺がそう言うと、ラブ神は大きな胸を張った。

「安心してください。ちゃんと私が指示してあげます」

「指示?どうゆう事だ?」

ラブ神は悪戯っぽく唇に綺麗な指を添えた。

「それはその時のお楽しみです。とにかくあなたは時間を進めてください。それとメニューを開きっぱなしにしといてください。速くしないと時間が進んでしまいますよ?」

「そうゆう大事な事は先に言え!」

俺は諦め、ラブ神の指示に従う事にした。


俺は今、三人の前に立っている。橋本と花咲は見るからに怒っている。怖い!けどかわ....って何を考えとるんだ俺は!俺は首を横に激しく振り、深呼吸をした。

「よし!」

俺は、一時停止ボタンを先程の様に脳内タップした。そして時間は動き出した。

「うちに女の人が来たんだよ!それもすっごい美人の人が!」

「へー。そうなんだ。高原君どうゆう事かな?説明して?」

「ど、どうゆう事って言われても、そうゆう事なんだけど....」

くっそ!ラブ神の奴何してやがる!メニュー開いとけって言ったのになんも起きねえじゃねえか!

「佐奈!今すぐその女連れてきて!」

「わかった!」

「は、花咲何言ってーー」

「しゃべるなって言ったでしょ?」

「....」

もうだめだと床に膝を着き、絶望していると階段から足音が2つ聞こえた。

「連れてきたよ!」

「なんの騒ぎですか?いったい」

そう言って階段から降りてきたのは他でもない。佐奈とラブ神だった。あれ?おかしいぞ?今時間止めてないはずなのにラブ神を見た瞬間、橋本と花咲の動きが止まったんだけど!?そんな二人にはお構い無しに、ラブ神が口を開いた。

「勇人君?この女は誰ですか?」

お前、事情知ってるよね?とゆうか、なんで浮気ばれた見たいになってんの?(二回目)

「あ、ああ。二人ともクラスメイトだ。こっちが花咲、そんでこっちが橋本だ」

俺は指を指しながら説明した。

「クラスメイトですか」

「そうだ」

なんでこいつクラスメイトの所強調してるの?

「そうゆうあんたは誰よ!」

先程まで固まっていた花咲が口を開いた。

「花咲さんと言いましたか。申し遅れました。私は、今日から勇人君の部屋で一緒のベッドで寝ます、姫宮愛美と言います」

「勇人と一緒に!?」

「高原君?説明してほしいな?」

「お、お兄ちゃん!私、そんな事許さないんだからね!」

「勘弁してくれえええええええ!」

俺のソウルシェイク(魂の叫び)が家全体に響き渡った。


「それじゃあ説明するぞ」

俺達は玄関から場所を移動した。流石に玄関で立ち話もなんだしな。けど

「なんで俺の部屋!?」

「うるさい!あんたの部屋の方が話やすいの!」

橋本と佐奈が頷く。

「それに久しぶりに来たかったしね~」

「私もお兄ちゃんの部屋結構久しぶりかも」

「あらみなさん。私は先程まで勇人君のベッドで寝ていましたけど」

「愛美は黙ってろ!いつまで経っても話が進められないだろうが!」

俺のその一言で空気が変わった。(ような気がした)。

「勇人今、名前で!?」

「高原君、その事も説明してね?」

ああもう!めんどくさい!後、佐奈聞こえてるからな?「私以外の女を名前で呼ぶなんて......」って言ってるの!さっきも呼んでたし、いつからヤンデレになったんだよ!?

俺は、事情を説明した。こいつが家庭の事情で帰る場所がない事、空いてる部屋がなく俺の部屋で寝る事、なぜか二人でいる時以外は名前で呼ぶように言われた事。もちろん、一緒には寝ないという事も。家庭の事情ってやつ以外は全て本当の事だ。

「そっか~。それなら仕方ないね」

「ちょ!彩音!あんた認めちゃうの!?」

「しかたないわ。帰る場所ないんだから。高原君の両親は納得してくれたの?」

「いや、それは今日父さん達が仕事から帰ってきたら話す」

「納得してくれるの?」

「ああ。多分......」

そう言われると不安だ。母さんは許してくれそうだけど父さんがな......。

「勇人君。言いましたよね?責任とってくださいと」

ラブ神がそう言うと、花咲は顔をりんごの酔うに赤くした。

「せ、責任!?勇人なにしたの!?」

「違う!俺はなにもしてない!」

何言ってるんだラブ神の奴!俺はラブ神を睨み付けると、ラブ神は口元を押さえながら笑みがこぼれるのを必死に防いでいた。こいつ絶対楽しんでやがる......。

「それで質問はもういいか?」

俺がそう三人に聞くと橋本が手を挙げた。

「高原くんは愛美ちゃんの事どう思ってるの?」

「は!?なんでそんな事聞くの!?」

「私が気になるからかな?」

「答えになってない気がする!」

「それでどうなの?」

「............」

俺の声には耳を傾けず、再び質問してきた。

俺が言葉に詰まっているとメニュー画面にミッションが追加された。俺はラブ神の方に視線を合わせる。ラブ神は首を縦に振った。どうやら今頃、指示が出されたようだ。俺はそれに気づきミッションを開いた。

ーーー本当の事を答えろ。

は!?これがミッション?どうゆう意味だ!?

「高原君?」

「あ、ああ」

恐らく今の「高原君?」は、早く答えろよチンタラしてんじゃねえぞ?って意味だろう。こうなったらいちかばちかだ!ここはラブ神の指示に従おう!どっちみちミッションクリアしないとこれから先へは進めないしな!

「俺はラブ神の事を美人だと思っている。後、ドS」

「って事は好きってわけじゃないって事!?」

花咲は眼光を大きく開いた。

「出会った日に恋に落ちるなんてありえないから!」

「へぇ~そっか。美人だと思ってるんだ」

「わ、悪いか?」

俺が少し拗ねたような口調で言うと、橋本は首を横に振った。

「そんな事ないよ?誰から見てもそう見えるもん」

橋本がそう言うと、佐奈と花咲が頷いた。

「あ、ありがとう、ございます......」

あれ?さっきまでの態度はどこいったの!?一気に普通の女の子になってるけど!

その後、ラブ神ら質問攻めにあった。ラブ神は迷惑そうに答えていたが何処と無く嬉しそうだった。橋本と花咲が帰ってからも頬の筋肉が緩んでいた。


「父さん、母さんそうゆう訳だ。頼む。しばらくの間泊めてやってくれ」

そして今、俺の家族とラブ神が食卓を囲んでいる。俺は橋本達に説明した事と似たような事を説明した。母さんはやけにニヤニヤしているが父さんは眉間にしわをよせている。その父さんの表情を見た佐奈とラブ神は先程から真顔だ。つられて俺も頬の筋肉を引き締めた。少しの沈黙の後母さんが口を開いた。

「あら。私はいいわよ?よっぽどの事情があるなら仕方ないじゃない」

母さんの返事で食卓には温かい空気が流れた。しかし、それは父さんによってすぐに冷たい空気へと変えられてしまった。

「駄目だ」

「なんでだよ!?」

俺は思わず、席を立ち大きな声を上げてしまった。

「勇人君。落ち着いてください」

隣に座っているラブ神が袖を引っ張てきた。おそらく「座ってください」という事だろう。

「勇人。俺の話を最後まで聞け」

「......」

俺はゆっくりと腰を下ろした。

「まず、一人住人が増えるだけで生活費がばか見たいに高くなる。さらにうちはそこまで裕福な家庭じゃない」

俺は反論しようとしたが反論できなかった。父さんの言ってることが正論すぎるからだ。俺が諦めかけていると父さんが意外な言葉を口にした。

「けど俺が経営しているストメロで働いてくれるなら話は別だ」

父さんの言葉に俺だけでなく、母さんと佐奈まで驚いている。

「ストメロとはなんでしょうか」

ラブ神が真剣な表情で父さんに聞いた。

「本当はストロベリーメロンって言うんだけどな。簡単に言えば読者モデルっていうやつだ。そこで働いてくれれば泊めてやる」

父さんがなぜラブ神に読者モデルをやってもらいたいかは言わなくてわかる。ラブ神が美人だからだ。メイクなしにこの美人さだったらメイクしたらもっとすごい事になるのだろう。父さんはこう思っているはずだ。

「モデル.....」

ラブ神がそう言いながら俯き真剣に考えている。

「最初は週に一回とかだ。けど恐らく人気が出るはずだ。俺はそう見込んでいる。もしそうなったらほぼ毎日仕事だ。その事を考えてーー」

「やります」

「「え!」」

佐奈と声が重なってしまった。いや、だってそんな即決するとは思ってなかったし!しかし、ラブ神の声はとても冗談を言っているような声ではなかった。

「お前ポーズの取り方とかわかるのか!?しっかり表情作ったりできるのか!?」

「大丈夫です」

「お前......」

俺があの時ラブ神にあんな事言わなければ.....そのまんま見えない存在だったら.....。そう思うと罪悪感が込み上げてきて拳に力が入る。

「そんな顔しないでください。ちゃんと本来の目的の事もやりますから」

「本来の目的って?」

「いえ、なんでもありません」

「お前本当に......」

と言いかけたところで母さんが

「勇人?これは愛美ちゃんの事なんだから愛美ちゃんの好きなようにさせてあげなさい?」

と口を挟んできた。

「けど......」

「そうだぞ勇人。姫宮の意志で決めさせてやれ」

分かってる。分かってるんだよそんな事!この世界はゲーム化されていてこいつはラブコメの神様なんだ!そう言いたかったのに口が開かない。

「それで姫宮は本当にやるんだな?」

「はい。やらせてください」

そう言ったラブ神の目は真剣だった。ここまできたらもう....

「愛美」

「はい。どうしました?」

「頑張れよ!」

こう言うしかなかった。ただの強がりかもしれない。けどこいつが本気なら俺もその気持ちに応えるしかない。

「はい。ありがとうございます」

「よし!そうと決まったら今日は姫宮の歓迎会だ!母さん準備してくれ!」

先程の事は嘘だったかのように父さんが声を上げている。普段めったり大きな声をあげたりしない父さんが、極稀に大きな声を出す時がある。それはーーー

「あら。あなたったら。本当はこんな美人な子が我が家に来てくれて嬉しいんでしょ?」

「そ、そんな事ないぞ。それに美人な子ならいつも見てる」

「「そ、それって......」」

母さんと佐奈はどこか期待を含んだ目で父さんを見ている。

「毎日雑誌の写真撮影のーー」

父さんがそこまで言いかけた所で母さんが

「勇人、愛美ちゃん。悪いけど部屋に戻っててくれないかしら?料理の準備があるし」

そう言って父さんを睨み付けた。どうやら野菜と一緒に父さんも料理されるようだ!父さんすっごい震えてるけど大丈夫か!?

「それじゃあ失礼します」

ラブ神がどこか微笑ましそうに言った。

「じゃあ母さん。準備できたら呼んでくれ」

「はーい。ゆっくりしててね」

母さんの返事を聞いた後、俺とラブ神はリビングを後にし階段へと向かった。その途中

「それじゃあ俺も.....」

「お父さんは駄目」

「そうよあなた。だいたいあなたはいつもいつも.....」

という会話が聞こえてきた。これは長い説教になりそうだ.....。


「なぜ許可したのですか?」

「しない方が良かったのか?」

俺とラブ神はベッドに腰かけながら話している。

「いえ、そうゆうわけでは......」

「ならいいだろ」と言おうとしたが、続けてラブ神が口を開いてしまった。

「勇人君にとっては不都合なのではありませんか?私が仕事をするという事はその分ミッションの更新が遅くなり、元の日常に戻すのに時間がかかるという事に......」

「そんな事分かってる」

「ならどうして......」

「どんな事があってもクリアする自信があるからだ。こんなのただの根性論だと思う。けど何故か、クリアできる気がするんだよ」

俺はラブ神の瞳を見て力強く言った。

「そうですか」

どこか呆れるように言ったラブ神だが表情は柔らかかった。会話が一旦途切れると同時に、下から

「姫宮ー。降りてきてくれー。早速明日から仕事あるからその事について話がしたい」

という今にも死にそうな声が聞こえてきた。父さん大丈夫かよ!

「わかりました。今行きます」

ラブ神は腰を浮かせた。

「それじゃあ勇人君。先に行きますね」

「ああ」

ラブ神が部屋からいなくなると俺はそのままベッドに横になった。

「はぁ......」

ラブ神の言う通りだ。もしこのままラブ神が仕事を続ければ間違いなく元の日常に戻すのは遅くなる。けどそれを望んでいる自分がいる。なぜ望んでいるのか。自分に何度問いかけても答えは分からなかった。


「ん......」

置き時計に目をやると時刻は七時。あのまんま寝ちまったのか......。俺は重い体を起こしリビングへと向かった。

「お兄ちゃん遅いよ!」

リビングに入っていい匂いがしたと同時に佐奈が問い詰めてきた。

「悪い悪い。つい寝ちまった」

「まあいいや。今できた所だし」

「ならなんでさっき遅いって言ったんだよ!」

「さ!覚めないうちに食べちゃお!」

話をそらしているのはバレバレだけど俺も腹減ってるしな。ここはおとなしく気づいてなかった事にしてあげよう。

「「「「「いただきます」」」」」」

「うっま!やっぱ母さんの作る鍋は上手い!」

「あら。今日は愛美ちゃんにも手伝ってもらったのよ?」

「嘘だろ!?」

「本当です」

ラブ神は長くて綺麗な銀色をした髪を片手で振り払った。これ美人がやると破壊力抜群だな......。

「勇人。姫宮に見惚れてないで飯を食え。早くしないと無くなっちまうぞ」

そう言って父さんは肉を箸で摘まんだ。

「見惚れてなんかねえよ!」

「本当か?」

「あ、ああ」

視線を泳がせていると頬を少し膨らませたラブ神が視界に入ってきた。

「どうした?」

「いえ、別に」

ラブ神はそっぽを向いてしまった。なんでこいつ拗ねてるの?俺なんかした?

「勇人たったら~。女心を分かってないんだから」

「分かるわけないだろ!女じゃないんだから!」

もし俺が女心を分かってたらきっとあの時......

「お兄ちゃん、どうしたの?そんな難しい顔して」

「いや、なんでもない」

俺は一瞬蘇った記憶を再び脳の奥底に閉じ込めた。


「はぁ......」

今の時刻は朝の八時。いつもなら気持ちよく朝を迎えているはずなのに、瞼は重く頭がぼーっとしている。結論を言おう。一睡もできなかった!原因は俺のベッドで無防備な姿で気持ち良さそうに寝ているラブ神だ。なんど理性が崩壊しそうになった事か!もちろん俺は床に布団を敷いている。けど父さんが「部屋ないし勇人の部屋で寝てくれ」って言った時は流石にビックリしたけどね!まさか父さんの口からそんな言葉が出るなんて思ってもかった......。

「こいつ......寝顔は美人じゃなくて可愛いんだな......」

い、いかん!雑念は振り払え俺!俺は首を横に振り、ラブ神に声をかけた。

「おい。朝だぞ。起きろ~」

「ん......。誰ですか?」

「寝言は寝て言え!勇人だよ、勇人!」

「ゆうとくんでしたか。すみません。おはようございます」

「ああ。おはよう」

「学校はよろしいのですか?」

「今日は土曜日だ。明日も学校は休みだ」

そう!今日は土曜日!いつもなら家でゴロゴロするだけだけど、今日はそういう訳にもいかない。

「午後からイチメロ行くんだろ?」

そう。今日はラブ神初の撮影の日だ。


俺達は歩いてイチメロへと向かっている。もとからそこまで遠い距離ではなく徒歩20分くらいだ。父さんと行く予定だったんだが用事ができたらしく、先に家を出てしまったようだ。

「着いたぞ」

「ここがイチメロですか。普通の建物ですね」

ラブ神の言った通り超普通だ。2階建てになっていて、一階は撮影を行う場所であり、2階は会議などに使われている。綺麗な建物だが少し小さめだ。

「それじゃ入るぞ」

「はい。少し緊張しますね」

俺は扉を開けた。すると同時にカメラのシャッター音が建物全体に響いていた。

「すごいですね......」

この光景にラブ神は驚いているようだが俺はそうでもない。父さんの忘れ物を届けるために何度も来ているからだ。とわ言っても一ヶ月に一回とかそんなもんだけどな。

「悪いな。先に行っちまって」

片手を挙げながらスーツ姿のとうさんがら近くに寄ってきた。

「いえ。お気になさらず」

「よし。それじゃあメイクしにいくか。勇人、お前はどうくる?」

「どうするって俺もメイクするって事か!?」

「そんなわけないだろ。お前もついてくるかって事だよ」

ですよね。知ってました。

「んー。いや、待ってるよ」

「そうか。なら撮影でも見てるといい」

「そうさせてもらうよ」

じゃあなとラブ神に手を振り俺はベンチに腰かけた。

「あい変わらずすごいな」

やはりモデルというだけあってみんなポーズや表情を完璧に作っている。これをラブ神ができるかと思うと少し不安にもなってくる。そう思いながら撮影を眺めていると俺はある人物に目が釘づけになった。

「嘘......だろ?」

見間違える訳がない。大きな瞳に、短く緑色をした髪の毛。綺麗なスタイルでありながら顔は幼さが残っている。俺の視線に気づいたのか、撮影を止め俺の方に近寄ってきた。

「勇人先輩、ですよね......?」

「ああ。久しぶりだな。あかり」

「......」

「......」

沈黙が続く。しかしその沈黙はラブ神によって消された。

「勇人君。お待たせしました」

「ああ。早かったなあ、愛美?.....」

「どうですか?」

そう言って俺の前で一回回った。そのせいで履いていたスカートがひらひらしている。化粧をしているのか、さっきよりもはるかに大人に見える。

「なにか言ってください」

「あ、ああ。似合ってるよ」

「そ、そうですか。ありがとうございます」

「あ、ああ」

「そ、それより」

恥ずかしくなったのかラブ神が話を反らそうとしている。

「その女は誰ですか?」

どうしてこう、俺の周りの女子は浮気現場みたいにしたがるんだよ!?

「こいつは俺の「元彼女です!」後輩......っておい!」

「元彼女......?」

ラブ神は目を点にしている。今にも魂が抜けそうだ。

「本当なんですか?」

「ああ......そうだ」

俺は床を見ながら唇を噛んだ。

「自己紹介した方がいいですよね?勇人先輩」

俺は無言で頷いた。

「私の名前は、佐伯あかりです。中学3年生です。一年前に勇人先輩と付き合ってました」

ペコリとあかりが頭を下げた。

「私は姫宮愛美です。勇人くんと同じ高校一年生です。今日からここで働かせてもらいます。それと勇人くんと一緒に寝てます」

「おい!誤解を招くような言い方をするな!」

「本当の事じゃありませんか」

「一緒に寝てるんじゃなくて一緒の部屋で寝てるだけだろ!」

いや、それでも問題なんだけどね!?

「二人は付き合ってるんですか?」 

「なんでそうなる」と言おうとしたが今の話だとそう聞こえるのも無理ないよな!

「いや、付き合ってないぞ。事情があって昨日から一緒に暮らし始めたんだ」

「良かった......」

「なんだって?」

カメラのシャッターを切ると音や、ポーズの指示の声によって、小さな声はすぐにかき消されてしまう。

「な、なんでもないです!それじゃあ私、撮影戻りますね!」

あかりは逃げるように撮影へと戻っていった。

「勇人君、メニューを開いてあかりさんの好感度を見てください」

「は?どうして......」

「いいから」

「はい」

怖い!怖いよ!美人が怒るとまじでやばいな。メニューよ開け!これ脳内でやっててもやっぱ恥ずかしいな!俺はその恥ずかしさを紛らわすためにすぐに好感度と書かれた文字を脳内タップした。

「は......?なんだよこれ......」

一年ぶりに再開したさっきよりも驚いている。俺は釘づけになった。あかりにでなく「100」という数字に。この数字が何を示しているのかなんて言わなくても分かる。じゃあなんであいつ俺を振ったんだよ......。その疑問が脳内で何度も何度もリピートされる。

「勇人君!」

「お、おう。どうしたんだ?」

「先程から名前を呼んでいたんですが......」

「わ、悪い。ちょっとな。それでどーした?」

「ですからあかりさんの「おーい、姫宮!撮影始めるぞ」

「分かりました。今行きます」

「続きは帰ってからにしよう。お前は撮影頑張るんだぞ」

「分かりました。勇人君は?」

「俺はあかりの撮影終わるまでここで待ってる」

さっきから脳内でリピートされている事を解決するために。

「わかりました。では」

俺はラブ神の背中を見えなくなるまで眺めていた。


10分くらい経つと撮影が終わったのか、あかりが近寄ってきた。

「私を待ってたんですか?」

「ああ。撮影お疲れ」

「ありがとうございます!」

「話がしたい。あの時の事を」

「分かりました。場所、移動しませんか?」


「夕日、綺麗だな」

「そうですね」

俺とあかりは近くの公園のベンチに腰かけている。

「いつからイチメロに入ったんだ?」

「半年前くらいですかね?授業参観の時、勇人先輩のお父さんが来ててその時に声をかけられました」

佐奈の授業参観のついでにいろんなクラスでもまわったんだろうな。父さんならやりそうだ。

「それで話っていうのは私が勇人先輩を振った事ですよね?」

さっきまでの明るい表情とは反対に、真剣な表情になった。

「そうだ。一年経ったんだ。教えてくれよ」

「分かりました。全て話ます」

俺はごくりと唾を飲み込み頷いた。

「あの時、勇人先輩いじめにあってましたよね?」

「......!」

そう、俺はいじめにあっていた。俺みたいな平凡な男と学校一の美少女と言われていたあかりが、つりあうわけがなかった。最初はちょっとした悪戯から始まり、最終的には悪戯どころでは無くなっていた。

「他にも知ってるんですよ?進路が決まらなかったり、友達がいなくなったりした事。だから別れようと決めました。私から告白したのに私から振ったりして、本当にすみませんでした」

「俺から聞いたんだ。謝らなくていい」

もう話は終わったと思い、俺は立ち上がった。

「待ってください!まだ話はあります!」

「お、おお。そうか」

俺は再びベンチに腰かけた。

「勇人先輩と別れて、これで勇人先輩は傷つかない!そう思ってました。けど......そんなのただの強がりでした!別れてからもっともっと勇人先輩の事考えるようになりました!勇人先輩が卒業してから学校がつまらなくなりました!もっともっと勇人先輩と思い出を作りたかった!もっと一杯デートに行ったり話もしたかった!この想いは今日勇人先輩を見つけた瞬間に膨れ上がりました!」

そう言ったあかりは涙をたくさん流していた。その涙の一粒一粒が俺達の思い出のように地面へと消えていく。

「あかり......俺さ今友達がいるんだよ。もちろん片手の指で数えきれるくらいだ。けど俺を信用してくれてるし、俺も信用してる」

俺は自然と、ラブ神、花咲、橋本の顔が頭に浮かんだ。

「それは全員女の子ですか?」

「な、何を言ってる!」

確かにその通りだけど!

「そっかぁ......。女の子か~」

「俺まだなんも言ってないんだけど......」

「言わなくても分かりますよ?勇人先輩顔に出やすいですからね!」

あかりはそう言って悪戯っぽく微笑んだ。

「そっか」

「勇人先輩!」

「ん?」

あかりベンチから立ち上がり大きく二歩前へと出て、くるりと回った。

「やり直しませんか?」

夕日のせいか、あかりの顔は赤く染まっていた。

この度は、本編を読んでくださりありがとうございます。感謝してもしきれません。

今回は少し、シリアスになってしまいました。そして、ミッションなどをあまり出す事ができませんでした。三章ではもう少し増やす予定です。

感想などを書いていただくと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ