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修行の日々

※柳生十兵衛三厳が小野忠明に師事した……という事実はありません。あくまで創作上の設定です。

 十兵衛は小野忠明からも兵法を学ぶ。父の宗矩は修行で十兵衛の右目を潰してしまい、それゆえに息子に兵法指導を行わなくなってしまったからだ。


 十兵衛が宗矩から組討を学ぶようになったのは、小野忠明の元で数年修行してからである。


「まあ、見とけ」


 忠明は道場にて、手の平大の石を左手に置き、それに右手の手刀を軽く打ち下ろした。


「お、割れた」


 忠明の声に十兵衛は左の隻眼を大きく見開いた。


 力をこめたように見えなかった手刀で、石は忠明の左手の上で真っ二つに割れていたのだ。


「特別な技術というわけではないが…… 兵法練磨の間に、わしは遊んでいたのだろう。この石割れろと。いつの間にかできるようになった。師(伊藤一刀齋)もほめてくれたなあ」


 驚く十兵衛に忠明は尚も告げた。


「できぬと思う内は、できる事すらできぬ。できるかも、という疑念も即ち失敗に通ずる。できると信じ、ただ繰り返し、そうしてできるようになるのだ十兵衛さん」


 忠明の言葉に、十兵衛は柳生の庄の一刀石を思い出した。


 身の丈を越す大岩が真っ二つに割れていた。割ったのは祖父の石舟斎宗厳だという。


 あの神業は、今忠明が見せた手刀での自然石割りの果てにあるのではないか。


「……いい顔つきだな十兵衛さん。普段と目つきも違う。気に入らぬのが気に入った。さ、組討でもやるか」


 隻眼の十兵衛では距離感がつかめぬ。だからこそ宗矩も忠明も、十兵衛相手の時は組討の練磨を重要視した。肌をすりあわすほどの接近戦の中で、勝機を得よと。


「肩、肘、膝、頭も使え」


 忠明の組討は相当に荒っぽい。組討で組み合った瞬間に、頭突きなども使えという。もちろん、それにこだわる事なく、組み合った瞬間に対手を倒すという心と技のしかけも重要だ。


「元々、槍術棒術、剣術、組討の三つを合わせて兵法というのだ…… さ、十兵衛さん次だ次」


 疲労した十兵衛を前に忠明はカラカラとよく笑う。老人とは思えぬ気力だ。


「剣は毒、酒も毒、女も毒だ」


 忠明の教えは深い……

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