夢で逢えたなら
テレビでスピリチュアルな番組がやっていた。
私はそんなこと思ったこともないし、信じたくもない。
もうこの世にイナイノダカラ。
私は物心がつく少し手前で大切な人を失った。
二度と戻らない時間。
そして薄れゆく記憶。
どれだけの悲しみの雨を乗り越えたって、他人にはこの気持ちは分からないだろう。
光を失い、道に迷い、私の世界が暗闇に閉ざされた。
蘇ってほしいなんて贅沢は言わない。
夢で逢えても悲しくなるだけだ。
それなら、この薬の副作用だけでもどうにかしてほしい。
あなたのせいではない。
これは自分の弱さ故の、天命なのだと。
五月晴れの空が今日も美しかった。
でもなぜ、目頭が自然と熱くなるのだろう。
自然と溢れ出る涙と、この感情をなんと形容すればよいのか。
私はこんなに涙もろい弱い人間になったのだろうと。
いや違う、泣くことで心が洗われ強くなっていくのだと。
そしてあなたが見れなかった未来の世界を見て、私はここにいるよと大きく胸を張れる人間でありたい、と思う昼下がりであった。