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返却希望  作者: ラゼル
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返却希望は受け付けません、よ。

 今日も今日とて、京子は彼の傍にいる。ある意味不運というべきか彼女のお眼鏡にかなった白衣を着た厳しい面構えの青年と。彼女の体調も機嫌も右肩上がり。いいことづくめなのだから仕方ないとコイツは言うのだろう。


「そういや、お前の所に来るヘンなのって女ばっかりだな。犬とか、狐憑きとか。あと雪女だっけか」

「あぁ、それは私が女性担当だから」

「それは役職かなんかなのか」

 と今まで聞いた事ないぞ、と眉を顰める。相変わらず怖い顔である。

「何を今更。って、まだ言ってなかったっけ?

 えーっとつまりね……」

 あ、うっかりしていたという顔をして彼女が説明を始めようと内容を反芻していたとき。


 ガラッ


「隊長。救援要請です。出動ですっ」

「京子ちゃん行こう。雪ちゃんがピンチだよっ」

 女性両名が部屋に飛び込んでくる。ノックぐらいしてくれ頼むから。


「あら、ポチ。相変わらず幸せな中身ね。大好きよー」

「私も大好きだよー。京子ちゃん」

 そして緊急じゃないのか。誰か助けを求めてるんならいってやれ。ていうか何の隊長だ。と脳内で突っ込まずには居られない彼である。そういやポチという呼び名はよく聞くが彼女の名前は知らない。そしてそこは大好きというところなのだろうか、いやこの2人が楽しそうならいいのだろうか。まぁ、俺が差し挟むこともなかろうと更に手元のホットミルクに蜂蜜を鬼のように入れる。底に糖分が溜まるのはお約束と言うものである。


「じゃ、行ってきます。先生。淋しかったら連絡していーよ」

「……はよ、行け」

「あらヤダ。冷たい。じゃ、行こうかポチ。そしてあなた、連絡は受け取りました。そして本部で待機を命じます」

「了解です。隊長」

 隊長と呼ぶ声は楽しそうで何だか本当に緊張感がない。ほんとに救援要請なのだろうか。


***


「というわけで、京子戻りました」

「…早かったな」

 小一時間というところで京子は戻ってきた。

「そして説明の続きね。」

 あぁ、それはすごく気になる。

「この学校に私みたいなのが多いのはもう知っているわよね」

「あぁ」

 もちろんだとも。コイツに目を付けられてからというもの沢山の不思議なものを見るようになったとも。


「うちの学校は血の薄い異端のモノや、もしくは突然変異による異端が力をコントロールし、人の世界で生きるために訓練する場所なの。だから先生も一応審査は行われている。主に背後に圧力をかけてくるような団体が居るかどうかってことを特に」

「へぇ」

 そんなこと言われても単なる教授の薦めで入ったに過ぎんのだが。というかサラリと大きい事実を暴露されても困る。

「特に性格面は考慮されていません。なので私はストレスが溜まります」

 あぁ、あの女教師さんね。

「しかし性格面は考慮した方がいいんじゃないか。お前ら見たら発狂するような柔い精神の持ち主だと大変だろ。いろいろと」

「大丈夫だよ。私と話すまでああいうのと遭わなかったでしょう」

「言われてみれば、確かに」

「そう、結構ちゃんと隠せてる。もしくは信頼できる人物を見つけて協力をとりつける要領のいい子もいるけど。ポチみたいな」

「あれは協力というのだろうか」

「あれはあれでありでしょ。で、話を戻します。私はこの力の有用性とコントロールのよさを見込んで彼ら女子の相談役なの。ときたま男の子もいるけど」

「どんなのだ?」

「フェロモン体質の子」

「それは、何に対する?」

「全方位」

 さらりと出された答えに少しの寒気とそいつへの同情が浮かぶ。


「だから油断すると襲われるの。それで私は護衛役を偶に仰せつかまつるわけ」

「女性が護衛役で大丈夫なのか」

 それは危なくないだろうか。


「だから、私の能力なんだって。たとえばこの前……



***



「あら、この手は何かしら」

「君、離さないか」

「ダメよ。たちが悪いにもほどがあるわ。あぁ、触るのもおぞましいわ。痴漢野郎」

 痴漢だってー。ヤダーと周りの客がその男性から身を引いて、ざわざわする車内。

「さて、降りましょうか。駅員さんに引き渡したあげる」

「離せ。俺はやってない。やってないぃ!!!」

「往生際が悪い。この腐れ男。

 ……(      してもいいのかしら。それ)」


 彼女が男に何かを耳打ちした瞬間にピシリと音を立てて固まり、わなわなと唇をうごめかせ、どうしてそれを、と驚愕の響きを鳴らした。


***



「………一体何を言ったんだお前」

「大したことじゃなくて。ただ、彼の鞄の中身と趣味のおぞましさを告げただけ。これで容疑は確定」

 駅員さんに突き出しただけましだと思うわ。と冷ややかな目で言う。


「あー。先生の傍にいると浄化される気さえする。先生が居なかった時だったら運が悪ければ夢にでてるわ」

 なるほど精神攻撃で相手をぼこぼこにする要因なのかお前は。恐ろしい。とはいえ何だか本当にこの子は何をやっているんだかと思うも、疲れているようなので頭を拙い動きながら撫でた。


「あの隊長っていうのは」

「あれは、単なるノリ。隊長なんて役職はないですよ。私は相談役」

「そうなのか」

 いいのか、そんなノリで。

「給料も出るし」

 え、マジで。


「京子ちゃーん。がばー」

「うきゃあっ」

 ……仲良きことは善きこと哉。


「何すんの。腰打った」

「えへ、ごめーん。たいちょう」

「……何かね。部下C」

「AとBは?」

「静と先生かな」

「え、俺も入ってんの?」

 ちょっと待て。俺を巻き込むな。


 京子はポニーテイルの少女を脇に抱えペットをあやすように片手間に遊んでやっている。


「なので先生に持ってくるケーキ代はそこから出てますので。学校もちみたいなもんです」


 あっという間に色んな謎が解明された。あっさりとどうと言うことでもない事実だ、というかのように。


 あれ、もしかしてこれってもう戻れないのか。と思うもとうに遅い。


 もっとずっと前から手遅れなのである。


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