学生で馬鹿騒ぎするのはどの世界でも一緒
「来週は社会見学・・・行く場所は秋洲の霊術学校か。」
優生は学校から保護者向けに送られた封筒を見ながら有坂尊の予定を軽く朗読した。
「どんな学校?魔法みたいなことを習う学校?」
「そう考えてもらって間違いない、天性が半分関わってくるが後は本人の努力次第。」
優生はブラウン管の表に数字を打ち込みながらそのことを伝える、ここにきて分かったことなのだがこの世界にもブラウン管以外にも液晶ディスプレイは存在する。何故使用していないのかというと個々の地区の人たちは東の人と違って昔の物を大事にしたりするからと返答が返ってきた。東の人とは東京のような立ち位置なのだろうか。
だがここが首都なので東の地区は完全に東京のような場所ではないだろう。ついでにスマフォはあるかと聞いたらタブレットならあり、実質スマフォの役割を担っているのは携帯ゲーム機の発展型の端末だと言ってパソコンのウィンドウでその写真を見せてもらった。
確かに弟の持っていた携帯ゲーム機そっくりだ、そこでSQNYの文字があれば完璧だと思った。だが結局はスマフォになるものはなかった、スマフォを持つぐらいならタブレットを使用した方が良いとこの世界の人たちは判断したそうだ。
実と言うとそのタブレット自体も最近普及し始めたばかりで元世界と比べてあまり普及していない。変な発展の仕方、かといって不自然ではない、今までの環境との違いで何となしに心が胸がモヤモヤした。
「そうだ、お前も行ってきたらどうだ。この世界のことあまり知らないだろ、交通費と飯代なら渡してやるぞ。」
ふすまに向かって優生が声を発するがその向こう側からは返事はない、全くと呟きながらキーボードのキーをたたく。自分で引き止めるように言っておいて何だが少し非常識ではないのかと有坂は思った。事情のせいでここに住んでいるとはいえ住処を与えてもらい仕事をもらっている、だがその恩師に対して最初の溝はあっても付き合っていくと言う物が大人ではないのか。
優生はちゃんと歩み寄ろうとしているが彼にそんな気はない。
「何時集合だ?」
「え~っと八時半までに校門に集合だって。」
「分かったこういうのは学生の間にしか味わえないから今のうちに楽しんでおけ。」
そういって彼はカレンダーに書き込む、なんだかんだ言って面倒見がいい巨人さんだと少し失礼なことを有坂は思った。
そのときこの世界の携帯の着信がなるディスプレイには桜坂と表記されていた。
「もしもし、有坂。今暇?」
「うん暇よ、もしかしてクラブの話?」
「そうそう!入部届は作っておいたわよ。藤崎はもうサインしたんだ!あと他にも聞きたいことが沢山あるから!お菓子もあるから来ないと損よ!」
「それじゃあお言葉に甘えて。」
有坂尊は桜坂尊と気づけばいい友人になっていた、性格は真反対なのだが彼女の純粋さや真っ直ぐさに惹かれたのだろうか。
「土曜日なのに午後も学校に行くのか、別にお菓子を食べてもいいが晩飯は用意しているから残したらダメだぞ。」
「そこらへんは大丈夫です、そこまで子供ではないんで。」
と言いつつもお菓子を食べすぎて食べれない自分を連想した。
錆びの町から電車に乗り、白亜のように白い無機質なコンクリートで作られた学校に着くとそこから部室へ向かう。
中の光景は元世界と変わらず本当に異世界に来たのかと思うがそれでも新しい友人そして新しい自分の居場所。何故だろうか、、親の過度な期待そして英才教育に潰されそうで窮屈だった元世界、でもここでは違う。
「もしかしたら、自分の世界に帰れないことを内心で喜んでいたのかもね。」
収容所で会った藤崎との会話をふと思い出す。するとその藤崎が妖怪の娘を引き連れて(というか引きつられて)続々と校舎がにぎやかになった。
「あ、有坂さん!」
一目小僧ならずの一目娘が藤崎を後ろから抱きつきながら頬を摺り寄せている。
「おひょ~女の子のぶれざぁだ。」
大きな目を彼女のブレザーに向かう、桜坂は普通の人間の数倍は大きい目を見て少し唖然としたが、さっき実感できなかった”異世界”を実感できた。
「さて!オカルト部の活動内容を説明する前に、藤崎!貴方の世界のオカルトを話してみて。」
「え~っと一応幽霊の話は抜きにして・・・UFOの話。」
「確か宇宙からやってきた知的生命体が使っている乗り物ね。実は私たちの世界にもUFOはいるの。」
有坂はその時ネットでみた内容を思い出した、確か南の方でUFOのようなものを目撃したと聞いた、また軍隊の秘密兵器だとも聞いたが実際の所はどうなのだろう。
「UFOといえば最近変な物がレーダーに映っているらしいよ。大平洋方面からだって。今日のニュースで言ってた。」
藤崎はポッキリーのチョコの部分をボリボリと食べながら言った。
「転移者が操縦している可能性もあるからって戦闘機が飛び回っているらしいね、でも見つからないんだって。」
「速度は1500kmだから輸送機とは違うし、24時間以上は飛べない・・・ということは」
「藤崎何でそんなことを知っているの?」
有坂はオタクという人種はどこから情報を集めているのか素直に疑問に思ったが
「ゲーム、ネット、雑誌、同種の人間から。」
すると桜坂の方がへぇと関心をする、関心したことに関して何でと藤崎が問うとこっちの世界ではある程度規制がかかっており武器の名前までは知っていても詳細や特性までは公開されていないと答えた。
「情報規制に、ディストピア・・・恐ろしい国だ。といっても小銃とかそういった系は普通に公開されているっぽい。確か軍は自衛隊と同様免許とか無料でとれるし入れば好きなだけご飯も食べれるから・・・」
「あんた賢いわね。」
その時有坂は藤崎には悪いがこういうものだけしか発揮できなさそうな気がした。
「さて、お菓子何にしよう。」
菓子は50円まで、単純計算をすれば日本円で500円。まるで小学校時代に戻ったみたいだ。
「酢昆布。」
「ビーフジャーキー」
「カルパス」
「チョイスがおかしい・・・」
有坂はデコに手を当ててため息をついた、ああ何を考えているのか。
ごくごく有り触れていそうな光景を鬱陶しげに眺める、白い髪に褐色の肌、彼は異世界人と完全に同化している様子を別館の屋上から恨めしげに見ていた。
「異世界人のためにわざわざ遠足まで用意しやがって。」
彼はその考えをあまりよろしく思えなかった、皇国は日本の一地方として存続しているが、殆ど実感もなく何も感じられなかった。そんな中彼らがやってきたのだ。
彼の父は粒子加速器の技術者である、故に家に帰ってこれないことが多かった。術者の人間でありながら技術職に就いている、これは別に珍しいことではないがハイブリット技術は量産が難しいこともあり、このような専門的な部門にしか需要がない。そのせいもあり希少価値が変にある。
「くそ、帰るか。」
帰ってもどうせ一人だ、億劫で屋上で寝ていたが獣人のハーフが故に驚異的な視力が仇になり異世界人を発見してしまったのだ。
「ん?」
目の前に羽族の者が飛び交っている、都市部では珍しい光景で一部の者にしか飛ぶことは許されていない。よくよく見れば着物を着た女性だ。おそらく神妖域の者だろう。
「何を運んでいるのやら。」
父親が国家プロジェクトにかかわっているだけあってある意味縁がある、だが自分は彼女のことを知らないし彼女も自分のことを知らない。 彼女はどんどん大きく、いや近づいてきた、気のせいだと思ったが確実に近づいてきている。
ついに人間でも確認できるほどの大きさになった後彼女は屋上に降り立った。
「ふう、え~っと君オカルト研究部ってどこにあるか知らない?」
「え~っと部活棟は向こうの建物。」
「ありがと。」
彼女はまた羽ばたき部活棟の方へはばたく、どうやら縁は向こう側にあったようだ。その時何故か彼の心に寂しさが感じた。
「うぃーっす、九尾からご飯の差し入れ。」
窓から侵入してきたそれは断りもなくずかずかとそして当たり前のように入ってきた。
「お~ご飯食べてなかったからペコペコだったよ助かったよ。」
「稲荷ずしばっかりね。有坂は食べる?」
桜坂が藤崎よりも先にパクリと稲荷ずしを食べる。
「私はお昼食べてきたんだ。」
「ふ~ん、何これ甘い。これって関西圏の形だね確かおいなりさんって言うんだっけ?」
「あ、かっぱ巻き。」
「ちょ、何でかっぱ巻きにわさびが!?」
彼女が来た途端有坂はより一層騒がしくなりより一層楽しくこの時感じた、日本の事を忘れようと努力して。
秋洲の某所
「どう転ぶか分らんね。」
漢方薬の調合室のような場所で変な発行物体をそのまま水溶液に入れながら彼女は言う。
ボサボサの黒い髪に白い服そしてタバコ。
「樹の廃人になってくる、そうすれば何か分かるだろうし。」
「乱用するなよ。下手すれば本当に樹になりかねないし。」
メガネをかけて頼りなさそうなその友人が警告を言う。その友人は神主の服を着ており少し場違いを感じざる得なかった。
「しかし樹もよく了承してくれたな、あいつは拒絶すると思ったが。」
「信用されているのよ。」
そう言って歯医者の治療用の椅子みたいな何かに座る、それは殆どが木製とパワーストーンのような接続素材を使用していた。
「それっじゃ。」
「はいよ。」
レバーを引くと椅子刻まれている文様と文字が青白く変化しそして発光する。しばらく発光が続くとプツンと気絶したように彼女と椅子がガクリと倒れた。
「これ下手すれば手挟んで指千切れるぞ。」
彼はため息をついてその椅子につながれているケーブルを見る。
「これ・・・光ファイバーのケーブルだよな何でつながっているの?」
同時刻皇都
「ん?」
「どうした五十六?」
「誰かが樹にアクセスした。」
「多分陰陽の人らだよ気にすることはない。」
同僚がそういうが彼は何か納得のいかない顔をした。あの日から業務が減り、先ほど羽族から差し入れてもらった稲荷ずしをモグモグとのんびりと食べる。
「しかし犯罪者のリストか・・・これどこから手に入れたんだ?」
警察のデータを見ながら思った、それはプログラム混じりの内容で
無論素人の目から見ても分かる文字がある故に分らないことはないのだがこれをまた文字だけを抜き出しリストに乗せ直すと思えば面倒そのものだ。
<1000121>
<i>s1</i>
<i>1</i>
s1:
山道太一
~~~~~
「山道ってやつこの世界に来る前はとんでもないな、詐欺に暴行恐喝。こりゃあ危険物だ、とてもじゃないが娑婆に出すことは出来ん。第一元世界の法じゃあ償ったとはいえないな。」
今彼は樹のグループ総出で捕まり刑務所に送られている、無論あの開拓地にも送られている。おそらく生きては帰ってこないだろう。
「まぁ、うちも厳しすぎる点もあるけどな。」
「ところで、元界人が社会見学をするみたいだよ。」
「社会見学ねぇ。もしかして陰陽術のところ?」
五十六はそれだけ言うと書類をみてそれをふぁさっと机の上に置いた。
「ついでに樹にリンクしたがっているお客様は誰なのか確認しますか・・・」
修学旅行当日
「皆さん、忘れ物はないですか?」
「うぃ~っす。」
元世界グループ藤崎は相変わらずブレザー服のままで集合しているせいか学生服やかなり目立つ。
「元界人さまさまだな、退屈な授業がなくなったし。」
学ランとセーラー服に包んだ学生はこういう授業が休めるビックイベントを楽しんだ、大人になっても慰安旅行があるぐらいなので歳をいくらとってもこのような行事は楽しいのだろう。
「聞け諸君!我々は今純朴性が残っている女子生徒を目の前にして何もアプローチをかけないつもりか!?携帯パソコンが出来てから穢れてしまった元世界の日本女子高生に持っていない何かを持っている処女達を目の前にして何も行動を起こさないのか!?否!断じてそのようなことはない!皆の衆我々はナンパ作戦をなんとしても成功させるぞ!!」
「そうだ!皆藤崎に続けぇ!」
「いざヴァルハラに!」
「・・・・馬鹿じゃないの。しかもこの世界にも携帯あるし・・・」
藤崎を筆頭に元世界の男性は謎の集会をいつの間にか開いており、そこら辺の選挙の演説より熱い演説を冷めた目で有坂を中心に女子は眺めていた。そして女子も馬鹿な男子を相手にするよりこっちの世界の男子の方が魅力的に見えたのだ。
「おお元界人グループが何かやっているよ!」
「・・・とりあえず入ったら何か大事な価値観を失いそうなので絶対に行ってはならないと本能がうずいている。」
この公立高校の生徒たちは空港で直接待ち合わせていた、空港は生徒で埋め尽くすことができないほど広くその生徒の集団が小さな点のようにしかならなかった。
「しっかし大きい空港だな関西空港とか上海空港みたいだ。あと仁川空港。」
「うちのところだと殆どジェット機なのに、ここだと結構な数のプロペラ機があるんだ。」
一人の男子学生が呟くと藤崎がネットで得た知識を披露する。
「燃費と国土の広さだ。」
「燃費は分かるが、国土の広さは関係なくね?」
すると藤崎はピカーンと擬音が付きそうなほど目を輝かせ、彼に説明し始めた。
「この皇国は全国をまだ電化できてないことと高速鉄道も近くの大都市にしか結んでないんだ。」
「それって・・・遅れてるってこと?」
「違う違う、確かに遅れている箇所もあるけど日本でも多分無理。理由はここの世界が馬鹿みたいに広い。この皇国だけでオーストラリアと同じぐらいの広さがある。だから全てを電化にしてしまうと馬鹿見たいなコストがかかるんだ。」
「だから飛行機?」
「そう、加えてディーゼルで動く機関車も走っているし、一部だと、まぁ半分以上は観光目的だけど蒸気機関車も現役で動いている。」
「広いからか・・・だからか、何となくこの街とか家とか広いなと思った。」
『区画整備されてなくて、変に日本っぽくごちゃごちゃしたところもあるけどね・・・』
機内に入るとこちらの世界と余り内装は変わりはなかった、ただ英語表記が全くないぐらいだろう。飛行機が離陸する瞬間でおぉと小さな歓声をあげて皆窓の方を見る。
「あんまり変わらないと思ったけど、結構違うもんなのね。」
有坂は下を眺めるとそこには東京のような灰色のモザイクではなく例えで言えば何かの電波塔を中心に放射状に道路が出来上がっていることと、しっかりとマスゲームのように区分けしている。
飛行機でこんな風にウキウキしたのはいつ以来だろうか、ふと小学生の頃を思い出した。両親と海外旅行に行った時だろう。中学から受験や成績を意識しざえないようになり心の底から楽しむことはできなかった。
「家族・・・か」
自分でも気づかないぐらいの声で、無意識に呟いた。
現地の空港は意外にもヘンテコな光景ではなく普通の空港だった、ただ違うところは茶色を基調としている点だけだろうか。
教師からある程度の説明が終わると、元界人グループのシャトルバスの中に何故か桜坂がおり藤崎たちは雑学トークを繰り広げながらこの世界の陰陽術と言った物の説明を行っていた。
「ふ〜ん自分は使えるのかな?」
「九尾に使えないって言われたんだったら無理なんじゃないの?」
「ですよね〜。」
藤崎はため息をつきその街を見た、その街はアスファルトではなく石畳がしかれており建物も京都風というより平安風の光景だった。京都と違い茶色ではなく紅白のツートンカラーで統一されており、茶色といった京都のような部分もあることはあったが少数だった。
「何か神社をでっかくしたような町だな。」
「まぁ、陰陽術の町だからね。」
桜坂が根本的な理由を言う。
「まずはお土産やというのもあるけど・・・いきなり買うと後から後悔する。」
「分かってんじゃない。」
桜坂と藤崎は腕を組み何かを友情を芽生えさせた。
「一緒に行くわよ。」
「応!」
シャトルバスが去っていき、しばらくすると竜と馬を合体させたような変な二足歩行の生き物が馬車のような物を引っ張ってきた。
それに乗ると普段バスや電車のような機械類しか乗ったことの無い生徒にとって新鮮でワイワイしていた、何故か藤崎に至っては毎日乗る機会があるにも関わらずはしゃいでいたが。
「これがエコの究極体!!」
「馬車は人類を救う!」
謎の宣言を繰り広げている藤崎と桜坂の後ろから何故か御光が見える。
「に、日章旗が!あの二人の後ろに!」
日本人の男子生徒が熱血タイプの漫画みたいなリアクションと取るが有坂は一般的なツッコミを彼らではなく彼に言う。
「日章旗は一般的に日の丸のことをいうの旭日旗が自衛隊と暴走族が使うやつ。てか何で旭日旗をチョイスしたの?」
「有坂さん、今は珍走団って言います。」
「でも分かりにくいでしょ?」
「まぁ・・・否定はしません。」
江戸時代や京都とは違う雰囲気、中国や韓国の雰囲気ににているこの街は本当の意味で和風ファンタジーの光景がそこにあった。
「うむ、これこそ本当の異世界って感じ。」
「一目ちゃんで慣れたって思ったけど、外見が怖い生き物が多い。」
藤崎の住んでいる村は妖怪村というより、萌村かハーレム村に近いような気もした。だがここはそんな物を抜き取り本当の意味での妖怪街となっている。
「何か神主みたいな格好をしてる人が平然としているね。正に住めば都とはこのことかも。」
「都だけにね・・・ってやかましいわ。」
以前の世界と変わらない東京の様な自分たちの街と違う賑やかさと街の光景はまるでテーマパークに来たような気分だった。
「何か色んな国が混ざっているみたい。」
有坂はそういうと桜坂がそうよと肯定した。
「元いた世界だと都道府県だけだけど、こっちは州とか省の制度を使っていて外国みたいになっているのよ。それに大きさが大きさだからね。」
「別の国・・・ああ確かこの国は連邦国家だっけ?」
「そう、でも同じ国には変わりがないの。」
その時バタタタとオートジャイロの爆音が横切る、和服を来た男性は珍しいなとぼやきそのまま建物の中に入っていった。
「五十六〜何で自分はここにいるの?」
オートジャイロに乗っている彼は県庁所在地の箇所までとびそのまま帰るのかと思ったがどうやらそれは無理のようだ。
「ここは?」
そこはこの街の神社だろうか、だがその大きさは天理教の建物のような雰囲気をまとっていた。
「あのばかでかい鳥が密集している所があるだろ?あそこにおりてくれ。」
「食べられたりしないですよね?」
「しない、しない。」
「本当に?」
「・・・・・・ああ。」
「何だよ今の間は!?」
「大丈夫だ、こんな鉄のかたまりを食べようとするやつはそうそういない!」
「外出たら食べられますと行っているような物じゃないか!!」
そう言いながらもオートジャイロを着陸させ普通に降りた。
「それにしても便利な世の中になったな、鳥を使っても半日はかかっていたのに。」
五十六は瓦だらけの建物の中に入る。だがその瓦だらけの建物とは裏腹に中身は空港のようなデザインだがどこか古くささを感じさせる空間だった。
「私有地だからこそ許されるな。」
もしこれが公共のものだったら景観に悪いとされ罰則の対象になるだろう。
「問題はこの先のことか。」
コツンコツンと革靴の足音が甲高く響く、その中身は昔何かの博物館だったのか色々な展示物が埃まみれになってあった。
「新世界の地球儀・・・。」
太陽の大きさは元世界でもこの世界でも共通して大きい、この世界の地球が10倍以上巨大だとしても太陽と比べれば小さなものであった。
「太陽系にポツンとある小さな青い星、新世界。そしてその中で浮かぶ小さな島国でしか自分たちの活動圏は誇示できない。」
五十六の隣にいつの間にか彼がいた。
「やぁ、久しぶりだね。」
そこには植物の蔓で巻かれたテレビのモニターが電動カートに乗っており、その後ろには蓄電池が大量に搭載されていた。
「せめて顔を映し出したらどうだ?」
するとモニターの画面にハテナマークが浮かび上がり何故そんなことをする必要があると質問を返した。
「全く、樹を貸してやっているのに何だいその態度は?」
「代表者じゃない、自分はあくまでも末端であり端末じゃない。」
「それだよ、折角の樹なのに何故個別に感情と意識を作らせているのか理解に苦しむ。」
するとモニターに理解不能と文字が浮かぶ。
「沢山の人生を歩みたい、沢山の人生を感じたい。効率のためじゃなくそれを感じたいために樹になっている。」
「やれやれ、何で君たちは。」
そうスピーカーから音声を出すと蔓がのびてカートごと天井に飲み込まれる。
「君が何を聞きにきたのか、それは今回の転移のことだろう?だが残念ながら私は何も知らない。今までも、そして今回もだ。」
「・・・だが政府は”私たち”を疑っている、この外には何が広がっている?この外の世界で何が起きている?」
そういうと彼は疑いを強調しそして疑われていることを告白した。
「それは君たちの事情だろう。」
彼はそういって切り捨てた、あんたにとって関係ない話ではないと五十六は言ったがそれでも彼は不介入の意思を告げる。
「最近、樹にアクセスする人間が多い、しかも陰陽関係の人間ばかりだ。お前も巻き込まれるぞ?」
「だから、それがどうした?」
「自分の身に起きることなのに何も関心が無い訳ではないだろう?」
「・・・どうだろうか。」
すると室内の電気が光り灰色のカーテンが開かれる、そして展示物がそれぞれ分類も関係なしに並んでいた。
「ここに並べられている機械を見てどう思う?」
皇国の生産物、皇国の兵器、皇国の歴史。そして奥に新幹線など日本のものも展示されていた。
「歴史、歴史。武器や生活こそは変わっても繰り返すことは一つ。あの野蛮な世界では戦争を繰り返しまたこの世界でも戦争を繰り返した。今でこそ平和だがもし元の世界に帰れるとして君たちは戦争に巻き込まれない自信はあるのかな?」
天井近くの壁に設置された巨大モニターからには戦争の映像と画像、そして自分たちと米軍の映像が流れた。
「君たちの故郷を荒らした国々に天誅を与えんとす。そういう考えを持つ思想家や軍人を押さえれる自信があるのか?」
日本人は押さえれるだろうどちらかといえばそんな意思は無いだろうが、しかしこの世界は違う。昔の日本の意思が生きている、仇討ちを考えている人間がいる。
「あの頭でっかちの日本の官僚に頼むか?天皇に復讐は止めよと言わせてくれと。とてもじゃないがそれを言わないと思うぞ。」
ああ、確かにそうだろう。責任を取りたくないが故に許可はしない、皇族の政治利用は戦後のタブーになっている。
「故に君たちに協力しない例え自分に被害が被ることになろうと、大きな戦争を起こしかねない、ならば今のままが一番だ後世に悪く語り継がれるぐらいならばな。」
「分かったよ、それが君の意思だな。」
「そうだ、始祖君。五十六に余り仕事をまわすなよ。」
始祖の目をした五十六は収穫のないままその場を後にした。
「面白い!」
天理教のような巨大な神社の内部に入るとそこには鬼や式神がウロウロしていた、そして浮世絵から出たような行列もあり見ているだけで日本の昔話に出てくるような、子供のときに読んでもらったような絵本のような、そんな感覚がよみがえってきた。
「アトラクションでは味わえないこの感覚!すげえ!」
「もうスルーしても良いかしら?」
有坂は藤崎のリアクションにいちいち反応するのが面倒くさくなり、流せるようにまでなったが、それ以外にも桜坂や現地で知り合った妖怪も加わり最早桜坂の同級生だけでは対処出来なくなっていた。
「私は桜坂と一緒に遊びに行くから藤崎のことよろしく。」
「OK!アニメの話題でなんとか大人しくさせてみるよ!」
男子高校生が飛び出すように藤崎の方に出発をしていった。
「ほんっと男って馬鹿。」
「さてさて、次はどこに行こう。」
「そればっかりだね。」
素朴な味のする和菓子を口に放り込みそのまま彼は次のことを考える、確かに変な箇所では遅れているが変な所で進んでいた。
液晶テレビがあまり普及していないかと思えば東の方や一部の地域では普及していたり、また実物は見たことは無いがSFに出てくるジェットパックっぽい乗り物があるそうだ。
「しかし20人も一気に押し寄せたけど大丈夫かな?」
「売り上げに貢献しているから良いんじゃね?」
「おばちゃん!水だけ!!」
「・・・・」
和菓子屋さんに学生服を来た生徒に埋め尽くされるその光景は正に修学旅行独特の光景だ。
「しかしこれだと、本当に元の世界と変わらないねぇ、しかも今自分の周りには日本人だけだし。」
この世界の日本人、皇国人は自分たちと接触する機会が少ないせいか、数人しかこのグループにいなかった。
「やぁ。」
不意に藤崎の後ろから声をかけられる、するとそこには10歳ぐらいの少年が立っていた特徴的な耳を兼ね備えて。
「君は、エルフ?世界観ぶち壊しだね。」
藤崎はオタ友達の会話を中断し半目にしながらその少年を観察した。
笹型の耳に緑を基調としたRPG風の服装、まさに西洋ファンタジーの御三家ともいえる種族がそこにいた。
「ふぇふぇふぇ。」
するとどうだろうか彼はドロドロ溶け始め藤崎達を驚かせた。
「ぎゃああ何か溶けたぁ!?ヤバいグロい!?」
「待て!内蔵とか見えてないからグロじゃないかも!?」
「うぉぉぉ、そうだ!グロじゃない!!いやそれでもグロだろ!!」
だがエルフだったスライムから笑い声が聞こえ、男子生徒は皆静まるようにそれをみた。
「そぅれ!」
するとそれは狸の姿になる。
「いや〜元世界から来た日本人は素直に驚いてくれるからうれしいなぁ。」
「た、狸!?」
『いや、皇国人も多分ビックリするかも・・・』
よく酒屋で見る酒買い狸のようにコミカルで二本足で立っており大きなとっくりを背負っていた。
「お〜写真写真。」
藤崎はPSPっぽいスマホ、そして周りの男子学生は皇国で支給された携帯電話で感心するように写真を撮り始めた。
「うへ、俺ってアイドル?」
「狸氏狸氏、ツルペタロリ少女をキボンヌ出来れば変身シーンを再現。」
「・・・ゴメン、言葉の意味よくわからんし何故か悪寒を感じるからパス。」
「それじゃあ、さっきのショタエルフに変身キボンヌ。」
「・・・何故だろういたずらを仕掛けたのに逆に罠に引っかかった気分。」
狸は何故かこのメンバーに対していたずらをしたことに対して底知れぬ後悔をした。
「分かったよ、狸君どら焼きをあげるから。」
「何でどら焼き!?アレは猫だから!!あとあげても便利道具は渡せないよ!」
「あ、23世紀のロボットのこと知っているんだ。」
「一応こっちでも掲載されているんでね。」
「ん?どゆこと?」
ここの世界でもあの名作が公開されていることは分かったが、何でそしてどうやってなのかまでは見当がつかなかった。
「何でって顔をしているね。藤崎とか言ったっけ?時々元世界の物が流れ着くことはあるんだ、つまり雑誌とかも一緒に流れ着いてきたんだよ。」
「ああ、そうか何か学校で習った気がする。」
「習っていたのに分からんかったんかい・・・」
最早藤崎と狸のコント化とした光景に男子高校生の一人が一言申した。
「ところで・・・狸さんの名前聞かない?」
「・・・名前は何ですか?」
「もっと早く聞くべきだと思うが・・・・まぁいい。俺の名前はっ」
咳払いをして言い直そうとした矢先首の根っこを猫のように掴まれ宙ぶらりんになる。
「おい、山川何ここで油を売っている?」
僧の格好をした人物が彼を持ち上げていた、例えで言うなれば弁慶のような人物だろうか。
「・・・狐にどうやって油揚げをを売るかを考えていました。」
「そうか・・・なら今日は狸の鍋だ。」
「いやいや、止めて頼む!」
「すまぬな学生さん、この狸は確りと注意するでは失礼。」
ドロン
煙と共に消え彼は男子だけがそこに残された。
「・・・本当にラノベみたいな世界だな。」
男子高校生の集団は何事も無かったように食事を再開し次は何が起きるんだろう等話しながら和菓子屋を後にした。
そしてその夜。
また同じくして二足歩行の生き物に引っ張られるが藤崎は何キロぐらい出ているのだろうかと考えていた。
「藤崎はいつも変なところばかり注目しているな・・・。」
藤崎を眺めている彼は座布団の調整をするが何となしに違和感を感じるのかそれでも座布団をいじる。
「ところで・・・今思ったんだけど。」
神妙な顔をして昼の間に藤崎と行動を共にした男子高校生を見渡す。
「どうした桜坂、すごい顔をしているが・・・」
「名前有坂と藤崎以外一人も知らない件について・・・・」
藤崎は今まで目立つようなことばかりしており有名人だだが他の生徒は普通なので全く名前を知る機会は無かった。
「何で知らないのよ?登校初日に自己紹介していたでしょ?」
有坂尊は何でだと言うが全男子学生が桜坂の方に向く。
「一度自己紹介したぐらいじゃ分からない!」
「・・・」
彼女はそれ以上のこと呆れては何も言わなかった。
旅館のお座敷で元世界組と皇国組が混ぜられてながら食べる中第二の自己紹介が行われていた。
「と言う訳で自己紹介だ、俺の名前は国木田修史。」
彼はそういって自己紹介をする。特徴的を挙げるとするならばどこかでバスケでもしていそうなスポーツマンだ。
「今時の硬派だねぇ、今度この世界の硬派と一緒に並べて世代ギャップを感じたい・・・まぁこの場合世代ギャップというのはおかしいけど。」
「藤崎、頭の中で一体何を考えている?」
「まぁまぁ、そっちの男の娘じゃなく美少年は?」
「その言い方少し悪意がある件について。僕の名前は阿部大輔。」
「そうか、総理大臣目指せよ。」
「・・・いや、何でだよ。」
「そうだ阿部ちゃん、一回ぐらいポストを失脚するかもしれないけど生徒会長を目指せ。」
「もう、明らかに某総理大臣の運命じゃん!何でそんな波乱な人生を歩む必要があるんだ!」
「もしかしたら、ちょっと自分のご褒美として奮発するだけで皆から攻められたり、手術するぐらいの持病を持っても、それぐらいで休むなとか嫌味を言われるかもしれないけどガンバ。」
「もうそれ殆どある個人に対して言っているじゃん!」
「そうだぞ藤崎、こういう時は他の人物も混ぜるんだ。例えばカップ麺の値段を間違えたり高めの高級カレーとか後高級バーとか・・・。」
「何か趣旨かわってなくね!?バーに至っては未成年だから不可能だし!!」
「うるさいぞ異世界人。」
それを注意したのは少し浅黒い肌を持ち銀髪の生徒だった、そして彼も無論自分たちと同じく浴衣姿だ。
「お前、そんな言い方するのはどうかと思うぞ。」
国木田はギロリと目を向ける、だが彼も負けないぐらいの眼光で睨み返す。お座敷での不穏な空気、だが大多数のその他のおかげでその不穏な空気は負け幸運なことに騒ぎにはなっていない。
「待つんだ国木田。」
藤崎が仲裁に回り彼らの間に割って入る。
「藤崎?」
「君・・・・中々良い顔しているな。写真販ばっ・・・いや、集合写真を撮らないか。」
「・・・こいつは放っといても良いぞ。」
「ちょっ!内部から崩壊しはじめた!!助けて総理!!」
「誰が総理!?」
「阿部ちゃん!!アメちゃんあげるから総理と呼ばせて!」
「何で総理大臣にこだわるのかなぁ!?第一全然面白くなかったよ今の言い回し。」
「何を君は・・・美少年なんだから優しくてピュアな心を持ち合わせないといけないんだぞっ!」
「何だよそのお約束!?流石に気色悪くなってきたぞ!」
唖然とする銀髪の生徒、ただ狸の妖怪のように関わって最初の後悔した。これをきっかけに修学旅行もどきの社会見学が終わった後、藤崎からずっと馴れ馴れしく親しくなろうと追いかけられることになる・・・が今は関係のない話だ。
「と、いうことがあったんだ。」
二人の尊とトリオはユースホステスを連想するような部屋でに食堂であったことを話し合う。
「まずい空気もお前がいれば全てギャグになるな。」
「どういう意味だよ、それ!」
国木田に突っ込みを入れるが彼は華麗にスルーする。
「もう良い、このゲームで遊ぶ。」
「ああ、それ確か女の子のパンツを盗んでしゃぶるゲームだっけ?」
「国木田チゲーよ!?これは女の子のスカートを捲ってパンツを拝むゲームだ!何だよその変態ゲームは!?」
「いや・・・あんたら女の子の目の前でなんてこと言っているのよ。しかも内容が五十百歩よ・・・・ってそれどころじゃない!まずその白髪銀髪のことを論議しなきゃ!」
議論の末全く解決できなかったメンバーは他のクラスから助力を願うという、単純で効果的な方法を行使すると、彼の両親は粒子加速器の研究員だということが判明した。
「ふむ。つまり坊ちゃん育ちでグレちゃっているってことか。」
「まぁそうかもしれないけど、それだけだとは断言できないぞ。」
国木田は安直な考えをする彼に頭を抱えた。
「マジレスすると親が忙しくて寂しい幼年時代を過ごしてうっぷん晴らしに不良wwwって状況じゃないの?」
「そんなありきたりなこと・・・」
有坂が否定しようとしたとき一瞬だけ優生とその居候が頭を横切った。
『そういえば何で彼はあんな風になったのかしら?』
彼は誰にも噛みついている、態度が大きくなるのはある程度慣れてしまってから起きるものだ、だが彼の場合は・・・
「あの二人に共通することはあるのかな?ってアレ?」
ふと気づけばあのトリオと桜坂は消えていた。
「あれみんなは?」
熟考していたのか皆が出て行ったことに気付けなかった、多少の疎外感を感じた後廊下から大声と怒鳴り声そして教師との鬼ごっこを連想させる音が響いたが特に気にせず、むしろ関わってはいけないと思い夢の中へ飛び込んだ。
翌朝、朝特有の湿気と涼しさそして匂い。有坂といつの間にか帰ってきた桜坂は浴衣姿で窓の外に見える光景を改めて眺める。
「こういう所での生活も楽しそう。」
この室内に入るまで気付かなかったがここは山の上にあり、町が一望できるようになっていた、またその上空には粒のようなが浮き上がっていた、それは妖怪と呼ばれる類で仕事で右に左へ向かって飛び交わっている。
「ん?」
ふと有坂が下を向くと何故かほぼ全員の男子が正座しており主犯と思われる藤崎トリオと褐色の銀髪が走らされていた。
「何をしたの・・・」
「ん?ちょっとね。」
「え~諸君”何事も問題なく”無事社会見学が終わります。」
何故か旅館のお座敷で朝礼っぽいことを行っている。一部の単語を棒読みする教師と気まずそうにする男子高校生達、と主犯トリオ+1が目をそらした。
「では今から空港行きのバスに乗る、絶対に”騒ぎを起こすなよ”?」
教師はトリオに目を向け鼻息を鳴らしながら閉会式を行った。
「・・・あ~疲れた。」
「もう二度とするな。」
藤崎と国木田はふらふらしながらバスに乗り込む、無論男子全員だが特にあの二人は目に見えて疲れていた。
「卒業の時の修学旅行の時が次のだな・・・」
「普通こういうのは一回だけなのよ?」
あれだけ騒がしかったバスと飛行機は帰りだけみな寝息をたて、とても静かだったと教師は語ったとか。
数ヶ月後雑貨屋やコンビニで売られているオカルト雑誌にある記事が載る、日本人の学生グループが旅行に行かせたのは身体のケアが目的であり、環境変化やストレスによる自殺を防ぐためだったと陰謀論的なことが書かれていた。だが藤崎や桜坂はその記事に大して気に留めず、隣の記事を気にした。その記事にこう書かれていた。
東の海底に謎の遺跡を発見。
次もいつ更新するか分らないですが・・・長い目で温かく見守ってください・・・