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本当の世界  作者: ロンパン
全ての始まり
4/9

神妖域で迷子

 バタタタとヘリの爆音が春の空に鳴り響く。その下には一人の男子高校生 藤崎ふじさき あきらが自転車に乗って荷物の確認をしていた。


 「ジャンポも買ったし、そろそろ帰らないとな。」

 自転車を転がしながら近道にハンドルを切る。その近道は最近見つけたもので少し複雑な路地だ。藤崎自身でさえ時々迷うこともあり折角の近道を相殺することも多々あった。そして今その相殺する場面に遭遇してしまった。


 「右か左か・・・よし左だ。」


 特に根拠はなく左を選ぶと途中で古びた地蔵が目に入る、初めて見た物だったので急停車して止まる。すると先程のヘリに紛れ何か別のヘリの爆音が鳴り響いていた。何だろうと思った藤崎はカバンの中からサバゲー用に買った狙撃スコープを使って覗くとそこにはANAのヘリが写っていたがまるでフィルターを掛けたかのようにぼやけはじめた。ピントが合っていないとかではなく曇りガラスをかけたようなそんな印象を持った。


 しばらくすると黒塗りのヘリコプターに変わり全く別のヘリに早変わりした。そのヘリコプターはトンボの目のようなガラスが二つ兼ね備え、ミサイルを大量に装備した大型ヘリのようにも見えた。

 「うお!?」

 藤崎は軍事オタクなためある程度のことは分かるここは民間の領域で自衛隊が侵入できるはずがないことも、だが現に自衛隊の機体に加えて完全装備と信じられない態勢でうろついている光景に不自然さを感じた。

 「あんな機体あったっけ?」

 藤崎の記憶にはあんな異色なヘリコプターは知らない、自衛隊のヘリコプターにもアメリカ軍にもあのようなヘリはなかった。するとあることを思い出す。ソ連軍のハイエンドと呼ばれる機体に似ていることに。もしあれがハイエンドならば共産圏、つまり”北”のつく国や”華”とつく国もしくは元ソビエト連邦の国が攻めてきたことになるがそれも否定する。


 一人で勝手な憶測を立てているとまたその機体はすぅっと消えまたANAの報道ヘリに姿を戻した。

 「気のせいか・・・。」

挿絵(By みてみん)

 藤崎はそのまま自転車をこぎ出す、するとこの地域では珍しくなったブロック塀が彼の両側を挟む、すると次は板だけで構成された古い塀とは言えない粗末な物が挟むようになり、次第にその壁自体もなくなった。そしてついにはアスファルトと無塗装の道路の境界線まで見えるようになる。


 そして立ち止まる、ここを通り抜けると何かよからぬことが起きるのではと、だが通らないと時間が無駄になる。折角の近道が無駄になってしまう。彼はUターンして帰路につくことを選ばなかった、彼はその道を選び自転車を進めた。そして彼はアスファルトから後輪が離れたのと同時にヘリの爆音がぴたりと止んだことに気付けなかった。

 

 数十分後、自転車を止めスマートフォンをいじりながら現在地を確認するがGPSと回線が反応せず困惑を極めた。


 木陰の中のおかげで太陽が直接スマートフォンに当たらず画面が見えにくくなるという問題は解決している、しかしだから何だという状況下では全く意味を成していなかった。


 「とりあえず適当に自転車を走らせておけば人がいるでしょ。」


 ハンドルを握りそれを考えた藤崎はシャーと自転車独特の音とガタンガタンと振動によって生じた金属と金網の荷物の音が生じる。

 すると下には桜が広がるように咲いており一瞬でも綺麗だな似合わないことが横切った。そして自転車を滑らせている時にあることに気付いた。今自身は山を下っておりその桜は随分と下の方にあることだった。


 しかし本当にどこなのか藤崎は埼玉と東京の県境に住んでおり少なくともそのような山は身に覚えがなく加えてアスファルトの塗装もしていない道路なんてそうそうない。

 良く見ればビルもなければ住宅地もない。自分はとんでもないド田舎に行ってしまったのではないのか。そうとなればGPSはともかく回線がつながらないことにも納得がいく。

 

 彼の使用しているスマートフォンは元は国営の会社だった為にインフラの能力は高く携帯会社の中ではトップを誇っている、だがそんな会社でさえ圏外になってしまうほどの辺境へ着いてしまったのだ。


 最悪だと言いたげだったが坂を下っている途中で大きな塔のようなものを見つける、それはコンクリートでできており無線塔と書かれていた。


 「・・・無線塔?」

 

 良く見るとここから真正面にたっている山にもそれと同じ無線塔らしき塔が建っていた。


 「何か不思議な光景だな。」

 その光景は藤崎からしてみれば異様でそして奇妙だった、まるで自分は別の世界についてしまったのではないかという錯覚でさえ覚えていた。

挿絵(By みてみん)

 「無線塔ってあれかな軍用の・・・違うか流石に。」


 するとまた空から飛行物体が目に入る、しかし良く見れば鳥のように羽ばたいているが鳥にしては違和感がありかつフォルムそのものが全く違うものだった。

 もう一度スコープを取り出し覗くと彼は自分の目を疑う、なんせそこに見えた物は着物を天使だったからだ。

 「変な山に電波塔、最後には天使ときた。」


 何となしにスマホを取り出し写真撮影をするとクスクスと女性の笑い声が広がるのと同時に緩やかな風が木々を揺らした。

 ぞっとした彼は誰ですかと言って周りを見渡すが誰もいない。草陰木の上、しかし見つからず気味が悪くなった彼は逃げ出そうと自転車のペダルに足をつけ前を向くとそこには狐のお面をかぶった巫女が立ちはだかっていた。

 「ぬしよ、どこへ行く気じゃ?」

 

 扇を扇ぎながら九本の尻尾を動かしながらなでるとすうっと彼の後ろに回った。

 「人界じんかいの者が来るとはまた珍しいが、自輪車じりんしゃで来たのか?」

 「じりんっえ?」

 「あ~銀輪ぎんりんで来たのか?」

 よく分からない単語がいくつも出たが状況からして自転車のことを指していると思った彼は少し間をおいて自転車のことですかと訊ねた。


 「ほう、そっちでは自転車と呼ぶのか。何処からきた?」

 一瞬頭が残念な人かと思ったが良く考えればバイクのことをカブと呼んだりする地方もあるぐらいなのでもしかしたらこの地方だと自転車のことをさっきの自輪車や銀輪という呼び方をしたのだろうと思い頭の中で自己完結した。


 「東京の方から来ました、埼玉の方に家があるので帰ろうとしたんですが迷ってここまで。」

 「東京・・・埼玉、ちと尋ねるが東京はアレかえ?昔江戸とか呼ばれていた都かえ?」

 「ええ、まぁ皇居とかは元江戸城ですし何でですか?」

 すると面の巫女は手招きしてついて来いとジェスチャーで表現した。どっちにしろ下る予定だったが藤崎は巫女の服を着て挙句には変な狐の面を被った不審者と行動を共にしたくなかった。

 「主は機械とか好きか?」

 「機械・・・好きと言えばまぁパソコンとかですね。」

 「ぱそこんねぇ、ところでテレビは好きか?」

 「テレビ?好きですが何でですか?」

 「まぁ百聞は一見にというじゃろ、とりあえずテレビ見たら分かる。」

 

 すると何かの町内会の施設か道場のような施設が目に入った、今時珍しく横開きのドアは全て木造で出来ておりガラスが全く使用されていなかった。

 

 中に入ると畳が敷き詰められている中真ん中に大きなハイビジョンブラウン管テレビが設置されていた。

 「あの、自分は家に帰り」

 「まずは見よ。話しはそれからじゃ。」

 悪い人物ではない、そう判断し言われるがままテレビを見たが放送される内容を目と耳に流すにつれ一体何の冗談なのかと思えるようになった。そして最後にはKHKでお送りしましたと締め括り異世界のおさらいを放送し始めた。


 「あの、これは一体何の冗談ですか?」

 首を巫女の方へ振り向けるとすでにその巫女は跡形もなく消え、広い和室の広間に呆然と残されていた。するとドタドタと複数の足音がなり急にふすまが開いたかと思えばそこから和服を着た人物がどばぁと入って寂しかった広間は急に騒がしくなり始めた。


 「お~本当に異世界人!?」「人界と対して変わらん恰好じゃの。」「うわ~男の子だ。」「背広だぁ。」

 彼は目をひん剥き驚いた顔で彼女たちを見渡した、まず翼を生やした者、一目しかない者、頭に皿を載せている者、そして獣の耳と尻尾をつけている者と俗に呼ばれる萌え系のライトノベルのキャラクターが勢ぞろいしているとしか思えない状態がそこにあった。


 特に男性陣が仕事に行っているのか女性しか囲まれている状況になっているので、むしろラノベと思えない方がおかしいのかもしれない。いや、実際問題それより注視するべき箇所がいくつかるのだが何故そっちの方面だけ考えているのか、やはり男性だからなのだろうか。


 「これこれ、静かにせぬか。とりあえず説明するぞ。もうお主は異世界に迷い込んだのじゃ、この際詳しい説明は省くがとりあえず妖怪とかが実際におる世界じゃ。まぁ主の世界にもいたかもしれんがの。」

 最後に狐の面をかぶったさっき巫女が現れた。その巫女はこの集団の頭のような立ち位置なのか皆静まり彼女に目を向けた。

 「すみません、状況が理解できるけどできません。」

 「言っていることが矛盾しておるぞ、わかっている範囲で良いからとりあえず申してみよ。」

 「え~っとニュースで見る限り自分の世界から色んな人がここに飛ばされてしまった。あと自分はラノベでいう主人公的な立ち位置でハーレムっぽいことになっている。」

 「後半にいたっては何を申しているのか分からんがまぁそれで大方合っておる。一応警察には電話しておいた故、お主が路頭に迷うことはない。」

 「何から何まですみません。」


 だがそこで複数の意義の声が立ち上がる。反対だとか面白そうだからなど様々だが、こちらの事情を考えずに好奇心から来る反応が殆どだった。


 「境のところに空家あるではないか、そこに住ましたらいいじゃん!」

 どこで覚えてきたのか少し古風の日本語に砕けた日本語が飛び交う。

 「いやもうここに住まわしてはどうじゃ?」

 「人間同士神社に住まわしては?」

 勝手に議論が進む中仮面の巫女は電話番号らしきものを書いた紙を渡した。


 「これは?」

 藤崎が自然に問うと彼女が説明を開始した。まず警察が迎えに来たあとのことを説明する。この後収容所へ連れて行きそこで集団生活をしながら主にこの世界での生活の仕方を教える為の教育があると説明された。だがその集団生活が嫌なのならば電話をかけてくるようにかけてきたのならここで住まわしてやるという内容だった。


 「あ・・・有り難うございますでも。」

 「大丈夫じゃ、まぁ我がいうのもアレじゃが人外だけではなく一応人間もおる。展開が早くて混乱することはあるじゃろうが一応緊急時じゃ。あと電話するにしても一週間たった後が望ましいの、今頃役所は地獄のような事務に追われておるじゃから。」

 「OKです。」

 「桶です?」

 軽く英語を混ぜたせいで少し意思の疎通に弊害が出たがとりあえず了承したことは伝わりメモをポケットにしまった。するとバサバサと羽ばたく音が聞こえた。

 「すみませ~ん番屋じゃなく警察です。」

 促されるように立つと抗議のや引き止めの声が一気に挙がるが軽く流し、藤崎は玄関まで行くとそこには先ほど見かけた天使のように背中に翼を生やしており恰好からしてどこの奉行所から派遣されたといいたい恰好をしていた。


 コンと硬い音を出す陣笠を見るところ藁や竹で作った類ではないとどうでもいい分析をすると外には尻尾も含めれば10m以上もありそうな巨大なカラスが待っていた。

 「・・・すみません。なんか鬼○郎もびっくりなカラスというか・・・怪獣がいるんですけど。」

 「八咫烏やはたがらすじゃ、一応神の使い鳥でもあるぞ?」

 「不幸を呼ぶイメージがあるんですけど・・・というか後ろに座席らしきものが背負っているような気がするんですが・・・」

 「そうだ、あそこに座るんだ。」

 隣に立っていた天使もどきが合図をすると巨大カラスは背を屈み乗れるように羽を藤崎の目の前までおろした。藤崎は羽から伝って上るとカラスの大きさに改めて驚く。


 「しっかり固定しろよ。」

 座席の部分はジェットコースターのような固定器とシートベルトがおいておりそれを見ただけで心拍数が上がる。飛行機に乗ったことはあるがこのような生物の背中に乗ったことはないに加えて機械でないことに対する不安があった。

 「大丈夫なんですか?」

 「大丈夫だ、何で人間はカラクリばかり信用するかね。カラクリよりもこういう物の方が信用できるというのに。」

 彼は強引に藤崎を座らせしっかりと固定をした、加えて彼らもぞろぞろと乗り込み彼の周りを囲った。

 「あの自転車・・・」

 「銀輪ぎんりんは後で送る安心しろ。」

 下では先ほどの巫女が勝手に自転車を乗り回しそして手を振って送り迎えをしていた。

 「うぉぉい!勝手に人の物を使うなぁ!ってうおっ!?」

 

 突っ込みを入れたと同時に怪鳥は羽ばたき急速に地上が遠のき始める。バッサバッサと音を鳴らすたびに飛行機やヘリコプターでは味わえないGの負担が体に圧し掛かる。

 すると滑空の態勢に入りそのまま安定した態勢に入るとその負担もなくなった。

 

 「さ、寒い!!」

 「あ、上着を着せるの忘れてた。」

 「人間はひ弱だなぁ。確か10km先に集会所があったろ、そこに行けば毛皮ぐらいあるだろ。」

 「いやいや!!あんたら羽あるんだから一旦降りて誰かが飛んで取ったらいいじゃん!!」

 周りの鳥人間はヘラヘラしながら藤崎を見て笑っていた、何枚も重ね着でもしていたのか、よくは分らないが彼らは平気な顔をしながら藤崎と空の旅を楽しんだ。


 「ふ~む、後で新しい携帯渡すから回収するぞ。」

 「スマフォが・・・・」

 

 藤崎は警察官とガリル小銃に木製のストックを追加したような銃持った兵士を見ていた。そしてその兵士と警官は藤崎を見ていた。警官は和服と警官の制服を混ぜた様な不思議な服で兵士は奇しくも自衛隊と同じ戦闘服だった。奥の方ではオリーブドラブで染められた旧日本軍の制服と類似した制服を着た将校が警察官と何かの打ち合わせを行っている。


 「それでは我々はこれで帰ります引き続き神妖域で発見されたら引き渡します。」

 「ご苦労様です。」

  

 警官と兵士は敬礼ではなく頭を下げ天使もどきの集団と怪鳥に別れの挨拶を交わした。

 「あ、そうだ毛皮返してくれ。」

 

 警官と兵士に案内された場所は空港でさっき見かけたハインドもどきのヘリコプターがそこにあった。


 「中身の弾薬全部外す必要あるんですか?」

 「当たり前だ、燃料費だって無料タダじゃないんだぞ。」

 

 ぶつぶつ言いながら中から兵士が弾薬庫らしき物騒な箱と三連装のガトリングガンを外してトラックに入れ込んでいた。

 

 藤崎は何mm口径か、独自規格で全く未知数の物になっているのかそもそも何でこんなヘリを採用したのか、色々未知数なところはあったが彼は促されるがままそのヘリに乗る。

 先ほどと違いちゃんとした機内で椅子に座り機体の上昇を待つと、目の前に四つのジェットエンジンらしき物をつけたSFに出てきそうな白い航空機が着陸した。


 そのSFに出てきそうな航空機を喰いつくように眺めていると無情にも兵士はキャビンのドアを乱暴に閉めた。


 「うわ~なんかゴツゴツして怖いヘリだね~。」

 「何でも君の所で転移したらしいよ。」

 パイロットと情報省からの配慮で乗せられた羽族の郵便配達員がその未知の航空機から滅多にお目にかかることのない軍用ヘリを眺めていた。

 

 「お巡りさんごめんね、変に仕事を増やして。」

 「いや、情報省の命令でもあるし仕方ないよ。逆に輸送機と正面衝突してぶつかったら危ないし。まぁ禁止令は出されたけど言うほど戦闘機が飛び回る事態にはなっていないし大丈夫だよ。第一上は考えすぎなんですよ。」


 藤崎は気付けなかったがその航空機の機体には元世界と同じく警察のマークがついており厳つい軍用と違って流動的でスマートだった、もしそれらの機体を擬人化するとなれば優男の警察官と肉食系の軍人になるだろう。


 「ここからは残念だけどここから飛んで帰ってね。」

 「大丈夫、元々皇都から飛んで帰る予定だったし。」

 彼女はそう言ってばっさばっさと鷲の翼を空に広げて山の奥へと消えて行ってしまった。


 パイロットは空席を見ながら帰るために連絡を取るとすぐに航空局から連絡が来る、そしてその解答はディスプレイに表示された。

 「ん?次発着できるのって二時間後かよ・・・」

 そこには待機命令と次の発着時間を示した表があった。

なんかParisより後発のこっちの方が進んでいる・・・

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