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過去の罪





「あなた、言われないと分からなかったの?本当にどうしようもない。さっきのも見ていたわよ。最低人間にしてはよく頑張った方だけど、やっぱりリスクが高すぎるわ。バカとしか言いようがないわね」


 人をあざ笑うかのようにクスクスと後から付けたして、これでもかというほど楓への怒りを露わにしている。言った当の本人は、そう言ってせいせいしているが、言われている当の本人はというと、この悪態は全て聞こえていなかった。

 怯えるように身体を震わせ、恐れをその顔に浮かべてじっと下を向いている。厳しい先生に怒られて、謝っている小さい子のように、必死で謝る言葉を探しているようだ。何も声を発することができていない。


「返す言葉も無いの?悪いことをした人は普通、なんて言えばいいのかしら?」


 傷口をえぐるようにして、楓に冷河と呼ばれた彼女は執拗に追い打ちをかける。叶には氷室が、なぜこんなにも秀也に喰ってかかるのかさっぱり分からなかった。ただ、当事者二人を半歩下がったところから傍観することしかできない。

 何があったか訊いてみようとしたとき、まだ訊いてもいないのに彼女の方から話し始めた。


「ついでだからお仲間二人にも教えてあげるわ、彼のしたことを」


 秀也の身体がより一層強くびくっと震えて、俯いていた顔を起き上がらせる。それでも、顔に浮かんでいるのは怒りなどではなく、驚きや焦り、ためらいの感情だった。それでも楓は冷河を止めることができず、そのまま喋らせることとなる。


「その時の学校では、罰ゲームつきで何かゲームをするのが流行っていたの。それで、運悪くこの最低野郎が引き当ててしまった罰が、告白。好きな人がそのときいなかったこの人は相当戸惑ったらしいわよ。それでこの楓秀也という大バカ者はどうしたと思う?好きでもない人に嘘の告白。しかもよりによってこの私に。びっくりしたわよ、今まで女子に対して興味なんて一切示さなかった彼がいきなりそんなことを口走るなんて。確かに一瞬おかしいと思ったわよ。でもね、人に好意を伝えられる機会なんて滅多にないじゃない。一瞬でその疑念は掻き消えたわよ。でもすぐに笑い声が聞こえて良かったわ。隣の教室からバカ笑いする声が聞こえてきたわ。『あのへたれ、怪しまれないために一番みんなから綺麗だと言われてる奴に嘘の告白しやがった』って。私の胸の中に一番最初に浮かんだのはイラつきよ。ああ、こいつはそんなことをしていたのかって。その日はそれを聞かなかったことにして家に帰ったわ。次の日散々言いふらしてやろうと思って。でもね、すっかり忘れていたの。あなたはその日転校するんだって。次の日からあなたは学校に来なかった」


 憎悪と、そこから生まれる憎しみを湛えて秀也を睨み続ける。楓はというと、唇を噛んで、下を向き続けている。なんだかこれでは、いじめを受けているようだ。何度も何かを言おうとしてやはり顔を伏せる後輩の行動を見て、竹永は不信に思った。


「だから、げえむのスタート地点で戸惑うあなたを見て、ここで会ったが百年目、とでも言ってやりたかったわ。さあ、楓秀也。過去を清算しなさい、ここで私に謝りなさい」


 理不尽だ。竹永はそう思った。今の話を聞く限り、一番悪いのはけしかけた連中だろう。ここで楓に謝らせるのは自己満足にすぎないはずだ。誰でもいいから自分に対する非礼をここで謝罪させたいという、身勝手さがその身から滲み出ている。


「どうしたの?うそつき」

「違う!」


 そこで、ようやく今まで黙っていた秀也が口を開いた。その一言を発するだけに、どれほどの勇気を振り絞ったのか、顔から冷や汗が噴き出している。


「違う・・・俺はそんなこと、したくてした訳じゃ・・・」

「何?言いたいことがあるならはっきり言いなさい」


 口元でぐにゃぐにゃとこもるような言い方をしたせいで、声のほとんどは向こうに聞こえていなかった。隣にいる二人には、はっきりと聞こえたが。


「あなたたちに忠告よ。そいつから離れなさい。そんなの足手まといにしかならないわよ」


 それに対し、楠城と竹永は、すぐに回答をつげたのだった。









                                   続きます。

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