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第8話 髪をかきあげずに耳元に口を近づける事により生まれる死角と誤解?

“後悔先に立たず”

その言葉を、今日ほど深く噛み締めた事はないだろう。

「優ちゃん、また明日〜」

「うん。バイバイ。またね」

放課後の2−4組の教室。

先程から数名に女生徒が、俺に一言二言、言葉を投げ掛けてきてくれる。

どうやら、失敗に思えたファーストコンタクトはやはりというべきか…悪い方向へと転んだようだ。

それ以外の生徒との間には、未だに根深く溝が残っているように思える。男子生徒に至っては、どういう訳かまったくと言っていいほど近寄ろうとしない。

やはり俺の最初の行動により、“闖入者”というイメージが先行してしまっている以上、警戒心というものが働いているのだろう。

しかしそれにもめげずに声を掛けてくれた女生徒がいるのだ。

そのおかげで幾分かは気持ちが楽になるというもの。

「翔」

気を取り直して隣の席の、なぜかボロボロになっている翔に声を掛ける。

いくらサポート役として俺の身代わりを引き受けているとは言え、この姿を見ると少し同情めいた感情を抱かずにはいられない。

「……大丈夫か?」

身近に誰もいない事を確認し、翔の耳元に顔を近づけ囁く。

「君のその軽率な行動のおかげで、再び私は理不尽な暴力に晒されるという事を理解して頂きたいものです…」

お、今の発言は一人称こそ違うが、かなり俺の言動に酷似しているな。

こいつもこいつなりに、周りに自分が神凪翔であると思い込ませるために努力している、という事だろう。立派なものだ。

右手でその努力を労うかのように、その背中をバンバンと叩く。

「元気でた?」

顔を上げ、机に平伏した翔を見下ろし微笑む。

すると残っていた生徒と、なぜか別のクラスからその様子を覗き見してた生徒がざわつく。

このざわつきも最初の頃は気になっていたが…。

やはり家族内での不当な扱いが適応能力を高めていたのだろう。

さすがに一日中同じ状況下に置かれていたら、自然と気にならなくなっていた。

「とにかく帰りましょう」

「悪いがそれは出来ません」

「……は?」

突然、顔を上げて答えた翔の言葉の意味が理解できなくて呆然とする。

しかし奴は、そんな俺を尻目に言葉を続ける。

「先程にも申したとおり、貴女が取った行動により、残念ながら私は可及的速やかに自己の生命に対する防衛を試みなければいけないので」

突然、びっくりな口調で喋り出す翔。

その真剣さに思わず俺は後ずさってしまう。

「あの体勢は極めて危険な誤解を招くんですよ」

神妙な面持ちで、左右の安全を確認しつつ逃走ルートを導き出しているであろう翔。

あの体勢…?とは、先程の耳元で囁いた時の事を示しているのだろうか。

「……まったくもって不可解なんだけど」

「心配には及びませんよ。ここ数日で、こういった心の機微を貴女に察せと言うのは、かつて猿人が道具を使い、火を起こす事を覚えたぐらいに、奇跡に等しい事であると理解しています」

「あれ?さり気なく暴言?暴言吐いてる?」

「つまり、一緒に帰る事は不可能だと申し上げているのです」

どうも家族の影響を色濃く受けてしまっているらしい。

しかしながら、一緒に帰れないのはこちらとしては都合が悪い。

慣れぬ女の体。それに幾ら声を掛けてもらえるようになったとはいえ、未だに多くの生徒が警戒心を抱いているように思える。

周りに視線をやれば、合えば後ずさる生徒諸君。どうやら自分には目に見えぬ鉄柵があり、そこから興味本位で静観される珍獣扱いになっているようだ。

「そう言われても、まだお前の話が終わったわけじゃないだろ?『はいそうですか』と、簡単に引き下がる訳にはいかない」

そう。家族へと言い訳は確かに助かった。だが、目の前にいる神凪翔自身の正体については、まだ説明不足である事は明白である。

「ですが、私から話せる事は極わずかであって、聞いたからと言って根本的な問題解決とはいきませんが…」

「サポート役ですと言われたからと言って、正体不明・身元不明の人物に、自分の代役を安心して頼んでいられるとでも?」

「…確かに。分かりました。可能な限りお話致しましょう」

俺の言葉に腕を組み、数秒考えるような仕草をとった後、翔は快く快諾してくれた。

その返答に満足気に頷く俺。

「それじゃ帰ろっか」

「ですから。それは不可能です」

…こいつは人の話を真面目に聞いていたのだろうか。

そろそろ苛立ちを爆発させてしまおうかと、体をぷるぷると震えさせていると―


「翔。俺達とさらなる親睦を深めるために、別室で雑談会を開こうじゃないか」


今まで傍観者であったはずの男子生徒が翔の肩を掴んだのだ。


実は無自覚な優ほど性質の悪い女性はいない罠(挨拶)

もし少しでも面白いと感じて下さったなら評価とコメントを記入して下さると、とても励みになります。

評価なんざ出来るか〜と仰る方も、コメントだけでも大歓迎なので、思ったこと・感じた事を書いて下されば今後の執筆の糧としたく思っておりますのでご協力お願いします。

さて今回。

“男として行動してしまう優”と“何も知らず女性として見ている周り”という双方の温度差…とでも言うべきでしょうか?そういうものが少しでも感じてもらえたなら嬉しい限りです。

“なぜ翔は優へとなってしまったのか?”

果たして私が本当にその理由を考えつく事ができるのかっ!?

それではまた後書きで。

如月コウでした〜。

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