第72話 混乱+色恋沙汰
とにかく、出来るだけ翔とは距離を置こう。
子供のような、こんなつまらない意地など張らず、普段通りに振舞えば、たぶん……というか、確実に変わらぬ日常を享受するはずなのだろうが。
優は、なぜか一度出してしまった矛先の収め方が分からなくなってしまっていた。
それでも、学校では嫌が応にも顔を合わすことになるのは、クラスが同じである時点で至極当然なことであって。
朝。始業前の教室。
「おはようございます」
「…………」
一足先に家を出ていた翔が、たとえ優が不機嫌そうな顔をしていたとしても、教室へと足を踏み入れれば挨拶を交わす事は、これまた至極当然なことなのだ。
「遅刻されるのかと思いましたよ」
聞き慣れた声が、級友達の談笑で賑わっていたはずの教室に透った瞬間、なぜか妙に緊張した空気に支配される。
「……おはよ」
翔のあまりにも普段通りの対応に、なぜか胸の中のモヤモヤ感が悪化するのを感じた優は、素っ気無い態度で挨拶を交わすと、スタスタと歩いて自分の席へ腰を下ろした。
優からしてみれば、出来る事なら気づかないフリでもして、何事も無かったかのように自分の席へと向かいたいところだったのだが……。
静まり返った教室で無視すれば、優の言動を、なぜか固唾を飲んで見守る級友達がいる前では余計な心労が増えるだけだ。
「痴話喧嘩……」
「痴話喧嘩だ……」
それでも、やはりあの対応には問題があったのだろう。
静まり返っていた教室は一転して、即座に『神凪翔と七瀬優が痴話喧嘩したのか』という話題で持ちきりになっている。
人の噂も七十五日とは言うが、噂の渦中である自分が、更なる噂の温床となっているのだから、優自身、始末に負えない。
(それでも、なんかあの態度はムカつく)
尤も。だからといって、すぐさま翔への態度を改められるほど、人間できてなどいないわけだが。
そうなれば、級友達の噂のネタになることは、ある程度許容しなければいけない事項の一つではあるのだと、無理やり自分を納得させるしかないのだろう。
「好きに言っててくれ」
溜め息混じりに呟き、優は机に突っ伏した。
「優、何があったかは知らないけど、いい加減仲直りしなよー……」
そんな様子を見かねたのだろうか。翼が呆れたように声をかける。
「ヤダ」
「ヤダって……。優って、なんか一度拗ねると駄々をこねる子供みたいになるね」
嫌味の無い口調で快活に笑う翼を、優は突っ伏した状態のまま見上げて、再び溜め息をついた。
「でも、噂はすでに二人は喧嘩して別れたってところまで肥大してるから、そろそろ面倒なことになると思うよ」
「面倒も何も、始めから付き合ってもないし……」
尾ひれがついた噂話などには興味があるわけでもなく、ただただ色恋沙汰に関しての噂話の釈明が如何に面倒なのかを痛感する日々である。
「でも、実際問題、周りはそう思っていたわけだしねぇ……」
「わ、私もてっきり『結婚を前提としたお付き合い』とか、『すでに入籍済みで、後は卒業を待つのみ』の関係なんだとばかり……」
「綾奈……それ以上言うなら私は本気で泣くかも」
実際はそれ以外にもありそうだが、これ以上言及して聞く勇気は、今の優は持ち合わせてなど無かった。
「ですが、貴女の置かれている現状についての説明は受けて然るべきかと」
だが、どうやら三人とも元々そのつもりで話しかけてきたのだろう。
ちょうど、机に突っ伏した優と視線を合わせるようにしゃがみこんでいる薫と、視線がぶつかる。
「うん。ちゃんと顔を上げて話を聞くから。顔半分を覗かせないで」
若干、怖かったのは秘密である。
「時間も無いから、単刀直入に説明するよ」
翼は、優が起き上がったことを確認して満足気に頷くと、手に持っていた鞄の中から、一枚の便箋を取り出した。
「それは……」
そこに書かれた宛名には見覚えがあった。
なぜなら―
「―……七瀬優様へ?」
翼が誇らしげに目の前に突きつけた便箋は、なぜか優自身への充てられたものだったからだ。
めちゃくちゃお待たせしました(吐血)
書く気が無くなってるわけじゃないのでご安心下さいませorz
まぁそう思われても仕方がないぐらい更新できませんできたが(目逸らし)
(色々な意味で)ちょっと復活したので、今のうちに何度か更新したいと思っております。
どうぞお付き合い下さいませ。
あと、ちょっとした疑問があります。
携帯で見てみたのですが、79話分あると結構最新話を見るの苦労します?
私個人は古い携帯ですし、そもそも見慣れていないのでそこまで辿り着くまでに時間がかかるだけかも知れませんが……。
もし、時間がかかるようなら、区切りをつけて『ぷら☆マイ2』とかで新たに続きを移そうかと考えてます。
ご意見あればコメントで言って下さると助かります。
それでは。
如月コウでした!