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第61話 変化するものしないもの

 それは確かに、激動的な運命の転換期だったと言っても相違ないだろう。

 出逢った事がたとえ偶然であったとしても、運命にとってすれば必然となるであろう出来事。

 だが悲しいかな。少なからずそれを理解するには、あまりにも情報が少な過ぎたことは紛れもない事実。

 だからこそ、人は互いの運命に不器用なからも関わりあって。支え合って生きていくモノなのだろう。

 だからと言って―


「優……結婚式には呼んでね」

「……翼。人の話聞いてる?」


―こんな運命全力で願い下げなのだが。

 七瀬汐の魔手により広められた翔は優―つまりは俺の婚約者発言は、瞬く間に校内を駆け巡り、様々な憶測と、とんでもなく誇張された噂話が併走する結果となった。

「お、お似合いだと思います」

 いつもながら凄いフォローをありがとう。綾奈。

「なるほど。いわゆるマリッジブルーという状態に陥っているわけですね」

 わざと言っているんじゃないだろうかと疑いたくなるような、更に混乱を招くフォローありがとう。薫。

「深夜にこそこそお兄ちゃんの部屋に忍び込んでいたぐらいラブラブですから」

そして沸き上がる悲喜交々な歓声。

 そこに本来いるはずがない、神凪翔の妹である藍璃が、その有り難迷惑なフォローにトドメをさす。

 本来ならば年上ばかりのこのクラスには戸惑いもあるはずだ。

だが、藍璃はすでにこのクラスでの地位を、この数日間で着実に定着させつつある。まったくもって元妹の腹黒さには頭が下がる。

「……頭痛い」

 机に突っ伏して、げんなりとした表情を浮かべる。

 こうして、良くも悪くも好奇な視線の渦中にいることは、多少なりとも慣れてきてはいる。

 だが、それが色恋沙汰となれば話は別だ。

 それは、己が男に戻るための手段として挙げられている、由々しき問題。

 ましてや、その対象が男女どちらだとしても、異質になるのだから質が悪い。

 そうなると、周りが考えている以上に、俺が誰かに恋愛感情を抱くということは至難の業なのだ。

「なるほど。君は君なりに苦労してたようだね」

「その苦労の一端を担ったお前が言うな」

「どちらかと言えば、大部分を担ってますけど……」

 我関せずといった物言いで、労いの言葉をかけてくる七瀬姉妹。

「その『ご苦労さまです』みたいな言い方はなに……?」

 その態度と言葉に、なんとか面を上げた体も、堪らず再び机に突っ伏してしまう。


 あのてんやわんやの大騒動から一夜明けて。

 二人から聞いた話から推測するに、俺の状況がすぐさま打開される訳ではなさそうだ。

 分かったことがあるとすれば、二人は“S”をアンインストールして出来た存在だという事。

 そして、その関係が“S”をインストールした俺達と関係を交わらせることで、何か変化が生まれるかも知れないという、希望的観測に基づく予想。

 それらは結局のところ、現状に至った原因については、何一つ掴めていない状態であることを示していた。

 しかし、その一方で変化したものがあったことは確かだ。

 俺を囲む親しい友人の輪の中に、七瀬姉妹と藍璃の存在がまさにそうだろう。

 だが―

(衣緒が、どこか距離を置いているんだよなぁ……)

 思わず溜息をついてしまう。

 元々、純正のお嬢様の付き人であるはずの衣緒だ。嫌な言い方だが、一般的な学校に通ったことすらない事は、あの広大な館に一日でも住めば理解出来る。

 それでも幸か不幸か。社交辞令は心得ているらしく、皆に合わせて表情を変化させているところに、若干の杞憂を感じてしまうのは俺だけだろうか。

 それにしても、だ。そう考えると……

「はい?なんでしょうか?」

 視線の先。本来なら、その立場に立つはずだった生粋のお嬢様である汐が、ひとしきり笑い終えた後、飄々とした表情で首を傾げる。

「いや。汐はこういう雰囲気は苦手じゃないんだな、と思ってね」

「私は純粋に楽しんでいますから。衣緒様が、色々考え過ぎているだけかと思います」

 その口調はいつもながら、付き人としての自分の立場を忘れずにいるものだった。

 だが、“汐は”という俺の言葉に含まれた意味を理解して、返答を返してくるあたり、口には出さないものの、衣緒を気にかけているということだろう。

「そこで提案です」

「うわっ!?」

 突然、目の前に現れた薫に素っ頓狂な言葉を上げる。

「今度の日曜日。七瀬汐、衣緒両人を遊園地にでも誘うというのはどうでしょうか」

 いつもながら、心臓に悪い読心術をお持ちのようで。

「些細な事です」

「だからどうして分かるのっ!?」

 さも当然と言わんばかり、薫は眼鏡を中指でクイっと押し直す。

「ちなみに、すでに翼ちゃんは行く事を前提で、話を進めちゃっています」

「…………」

 薫もさることながら、翼もすでにその算段で動いていることを綾奈は苦笑しつつ伝える。

 そうだとすると、俺に聞く必要はあるのかどうかすら疑わしいが……。

 目の前には、俺の返事を待つ親友達。このお節介ながらも、優しさに満ちた自慢の親友達の申し出を断る必要もないだろう。


「分かった。楽しみにしてる」


 だからこそ。

 満面の笑みで、彼女達の誘いを受ける事にしよう。

 なんの因果か知り合いになったのだ。作り笑いで築かれた関係を維持することよりも、笑い合える関係である方が、良いに決まっている。

随分とお待たせしてしまいました。

その間、お手紙やコメントを頂いた皆様には、最大の感謝とお礼の言葉を。

励まされて、遅ればせながらですが、更新できた事は、私自身も嬉しく思います。

この作品の継続に危機感を抱いた方もおられたかも知れませんが、この作品は完結させるつもりですのでご安心を。

いつか、纏めて本にでもしたいですね(野望/ぁ)

時間が空き次第、指摘を頂いた誤字等も修正しますので、暫しお待ちを(汗)

お手紙、コメント、感想大歓迎です!文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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