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第54話 神凪翔の杞憂

「なるほど。確かに奇妙な縁ですね」

 遅れていた始業式のため、体育館へと移動し終えた後。優が出会ったという今朝の出来事を聞き終えて、私―神凪翔は頷いた。

「情報から推測すると、彼女もまた“七瀬さん”ということになるんでしょうが…」

 転校生が二人。

 その内の一人は、今朝出会った少女である事は間違いない。それだけなら別に珍しいものだと言って終わる話のような気もするが、転校生は二人なのだ。

 ましてや、もう一人いるという七瀬と言う苗字には聞き覚えがあるので困惑してしまう。

『それではまた』

 別れ際、彼女が何気なく言い放った言葉の真意が、そこにあったような気がした。

 勿論それは推測であって、七瀬汐がこの場所に転校して来たとは限らない。限らない、が…何とも言えないような予感だけはあった。

 優はあの瞬間、何も違和感を抱いていなかったようだが――


『翔様』


 その言葉がやけに印象に残った。

 最初に呼び止めた時も。最後の挨拶の然り。なぜか不自然に繰り返されたように思えた、本来ならばとるに足らないような己の呼び名。だが、七瀬汐のそれは、何かを確認するかのように思えてならなかった。

 そして訪れた紹介の瞬間。全員がその容姿に目を奪われている。彼女の一挙一動に全員が溜息を漏らす。

 それは私も同様で、あの時、共に海へと行った全員が驚きのあまり壇上にいる少女を見上げ、呆然と立ち尽くしていた。

「――七瀬汐(ななせしお)と申します。皆様、宜しくお願い致します」

 いつか見た人懐っこい笑顔で微笑む。首を傾けたため、少し黒の中に紫が入ったような髪色のツインテールが揺れる。

 最後の挨拶を終え、汐が丁重にお辞儀をすると同時に湧き上がる拍手。拍手喝采とはまさにこの事だろう。特に男子連中は大歓迎のようだ。

 それは私にとってはどこかで見た事がある光景。

 壇上に立つ七瀬汐の姿に、誰かがかぶる。しかしそれが誰かが思い出せないでいる。

 どうやら彼女の姿に、優達も汐の『それではまた』という、また会う事になる事を予感させるような別れの言葉の意味を理解したらしく、笑顔で歓迎していた。

 もっとも、彼女がどこかのIT企業社長の令嬢などとはあの時は知らなかったので、驚いた事には変わりが無いようだが……。

 何より驚いているのは――

「あたしは七瀬衣緒(ななせいお)です」

 汐の後に、マイクの前に立ち自己紹介を始めたもう一人の少女の存在だ。

「汐ちゃんとは大の仲良しで、無理を言って一緒にこの高校に転入させてもらいました」

 壇上にいる少女の、汐と同じツインテールだが美しいブロンドの髪が、幼げな表情と同じように揺れてる。

 それまで汐の陰に隠れていて気がつかなかったが、二人はよく似ている。それともお互いの姿を真似ているのか。遠目からでは、その姿は髪の色でしか分別出来ないだろう。

 しかし、性格はその口調や仕草から察するにはっきりと違いがあるようで、衣緒と名乗る少女はその身長の低さも手伝って幼さを感じさせる。

「お姉ちゃんもいるので不安は少ないですが、皆さん宜しくお願いします」

「………?」

 微笑み頭を下げる少女に、違和感を抱いて首を捻る。

 確かに壇上に立つ少女は、伺い聞いた特徴からして優が今朝方見た少女に相違ない。しかし、絶対的に口調や仕草、果ては嫌悪していたらしい少女っぽさを前面に押し出している姿は、別人では無いかと疑ってしまうほどだ。

 だが、初見に近い少女の心情など理解できるはずも無い。

 ただただ形式的な紹介を行いながらも人懐っこい笑顔を振り撒く様を、私は見上げるしかなかった。

 

 そしてここで私も見逃してしまったのだ。

 彼女の言葉が意味する事を。

 






色々考えていたら遅くなりましたorz

今回は翔の視点でのお話です。まだまだ謎は明かされません。だって、考え付いてないですかr…(ザー)

二人の少女の正体は?その目的は?

そして、最後の“言葉の意味”とは?

気になる次回をお楽しみに!

……ただ期待し過ぎると後悔するかも?(苦笑)

お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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