表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/88

第29話 押す事よりも引く事を選んだ少女

「へ〜。やっぱり学校でも優さんは人気者なんですね」


 準備された飲み物とお菓子をつまみながら、わいわいと雑談を楽しむ女四人……と、微妙に外で放置された男性陣が、同じ男として心配な俺が一人。

(ちゃっかり藍璃も紛れ込んでやがるな…)

 宣言通り、飲み物とお菓子をこの部屋へと運んできてくれた藍璃。

 丁度話していた話題に、その瞳を輝かせて喰いついてきた。

「人気者過ぎて困っちゃってさ〜」

 そんな藍璃に対して、さもその当人でもあるかのように、笑いながら話す翼。

「求愛を断るには骨が折れました」

 その黒縁眼鏡を押し上げ、似合わぬ台詞を吐く薫。

「優さんって優しいから…その…女の子にも人気があって…」

 なぜか頬を染めながら、語尾が尻すぼみになっていく綾奈。

 そして話題の中心人物であるはずの俺が会話に参加出来ずに、ぽつねんとお菓子をぽりぽり。

なんですか。この居心地の悪さは。


(翔の奴大丈夫かな)


 さすがにあれから随分と時間が経っているので、すでにもうどこかに移動しているだろう。

 しかし、こうならないための予防策であったはずの人物を思い、『役に立たないサポート役だ』と心の中で愚痴を溢す。

(携帯電話さえあれば、連絡の取り様もあるんだけどな…)

 携帯電話は今時の高校生らしく持ってはいたものの、それはすでに神凪翔の所有物であって、神凪優の物ではない。

(あるとすれば一階にある家庭用電話機で電話をかけるぐらいだけど…)

 するとふと、その電話機が鳴っている事に気がつく。

 しかし、喋る事に熱中し過ぎているせいか、誰もその音に気付かないようだ。確か両親も何処かに出掛けており、不在のはずである。

 ならば藍璃に知らせようと、手を差し出そうとして躊躇する。

 自分宅への電話だが、女の体になってからというもの、余計な混乱を避けるためにまったくと言っていいほど出た事が無い。

 しかし、これは男性陣の様子を伺いに一階へ赴く、丁度いい口実になるかも知れない。

「綾奈。電話が鳴ってるようだから、私少し席を外すね?」

「あ、はい。分かりました」

 話を続けているメンバーの中で、一番フォロー上手な綾奈に一声かける。

 未だに俺に対してだけ敬語な彼女だが、万が一、部屋に俺の姿がいない事が発覚したとしても当たり障りの無いフォローを行ってくれるだろう。

 そして俺は、他の三人に気付かれないように部屋を出る。

「ふう…」

 汗を拭う仕草をしつつ、溜め込んでいた息を吐く。

 少々抜け出すまでに時間が掛かってしまったが、その間も電話は延々と鳴り続けている。

「はいはい、今出ますよ〜」

 階段を下り、そんな気の抜けた生返事を、聞こえるはずのない電話の主に返す。

「もしもし、神凪ですが」

「…………」

 そして受話器をとってみるものの返答が無い。

「もしもし?どなた様ですか?」

「………優ちゃん」

 何処かで聞いた事がある声だ。携帯電話からの着信のようだが、やけにクリアに聞こえる。

だが涙声のせいか、誰なのかが分からない。

「もしもし?どなた様ですか?」

 もう一度問いかけてみる。すると相手は一言。

「玄関………」

 と、だけ答えた。

「玄関?」

 首を捻りながらも、電話の主に促されるがまま、玄関へと視線を移す。

 そして―


「ぎゃーーーーーー!!」


 思わず大声で叫んでしまう。

「なんだなんだ!?」

 悲鳴を聞きつけて、大慌てで下りて来る女性陣。

 俺の視線の先にあるものを見て、全員がその場で石化する。

 そこにいたのは、チェーンロックのため辛うじてしか開かない玄関の扉の隙間に、可能な限り体を押入れつつ、携帯電話片手に涙目で俺を見つめる吉良の姿があった。

 どうやらなんとか侵入を試みようとして、途中まで体を押し入れたのはいいが、自力で抜け出せないらしい。体の半身を無理やり捻じ込みつつも、身動きが取れない状態で電話をしている吉良の姿は、正直下手なホラー映画よりも怖い。

「ひ、悲鳴はいいから誰か助けて」

「………」

 いち早く石化から解けた藍璃は、無言で下履きへと履き替えると、その玄関扉のノブへと手を伸ばす。

 そして―


「うん。確かに『押して駄目なら引いてみろ』って言うことわざがあるように、玄関側から扉を閉じるように引いて確認してみる事はいい事なんだけど、この場合は後者を試す前に前者を選択するべき状況だと俺は思うんだ。なぜなら、引いたら余計に挟まって地獄の激痛が…ってイタタタタッ!?」


 よほど切羽詰っているのか、饒舌に藍璃の行動について間違いを指摘しながら、吉良は涙目でその制止を訴えたが―


「潰れろ」


 語尾に音符マークがつくぐらいに満面の笑みを浮かべて、再び力の限り扉を引っ張る藍璃。

 受話器越しからも聞こえる声も重なり、響き渡った吉良の断末魔は、辺り一帯に家を震わせた。





痛いから良い子は真似しないように(挨拶)

藍璃は元々作者的にはこんな子だったのですが、『こんなの藍璃じゃない!』と思われた方はいらっしゃるでしょうか?

居たらゴメンナサイ。でも私は後悔していない。きっとこれが藍璃なんだ(マテ)

(※この『我が家へようこそ編』は藍璃の魅力に迫るお話です)

お手紙、コメント、感想大歓迎です!文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

●ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。(月1回)

●ネット小説ランキング>現代FTコミカル部門>「ぷらすマイナス*S。」に投票です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://nnr.netnovel.org/rank08/ranklink.cgi?id=secrets
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ