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第25話 想像力の高さにおける弊害とそこでの少女の在り方

 どうも二人一緒にバイトの申し込みをした事が、里香さんには恋人同士として認知されたらしく、事あるごとに二人っきりにさせようとしてくる。

 それは違うと始めのうちは根気良く説明していたが、さすがに綾奈とメイドを結びつけたお方である。まったくもって聞き入れてはくれない。

 むしろその態度がツボだったらしく、『優ちゃんはツンデレなのね』とのたまう始末である。

 これはもう諦めるしかないなと、説明を断念した。

 それともうひとつ。


「優さん?今から休憩ですか?」

「綾奈…」


 里香さんが、そういった悪質な洗脳にも似た空想癖を信じるのが綾奈であるという事。

 たとえば―

「うん。翔に差し入れもっていかないと駄目だけど…」

「え!?そ、そうなんだ…。ご、ごゆっくり…!」

 あれほど学校では気にしなかった翔との関係を、ここ最近になって気にし始めた発言が目立つ綾奈。翔に会いに行くという発言だけで、里香さんと同等の想像を働かせる。

『翔が帰宅した時に、優から“ご飯”“お風呂”“優”の三つの選択肢が提示され、その中から翔は常に“優”を選び、美味しく優はいただかれている』

 ちなみに里香さん的には、俺達はすでにこんな関係らしい。

 そういう類の与太話を、綾奈は真に受けているようで、俺の口から翔の名前が出れば茹でたこのように顔を真っ赤に染めあげる。

 その姿を見て、この母と娘は本当に想像力豊かだと思わず感心してしまった。

 しかもその誤解は未だに解けておらず――

「綾奈も休憩?だったら一緒に休もうよ」

「え!?わ、わたしも!?」

 だから。なぜ誘うと頬を染める。

「……が、頑張ります」

 …何を頑張ると言うのだ、綾奈よ。

「とりあえず翔にジュースでも持っていってやるか…」

 俺は半ば諦めた溜め息を吐き、隣を歩く綾奈に聞こえぬように呟くのだった。



 そんな日々を過ごしている内に6月も半ばを過ぎ、そろそろ7月にある期末考査という恐怖の足音が聞こえてくる頃。

 バイト期間の半分が過ぎ、本来一ヶ月働いてから手渡される給料を、里香さんのご厚意により先に手にする事が出来た数日後の夜の出来事だ。

 それを元手に購入したばかりの携帯電話が、深夜に突然鳴り響いた。

 液晶画面に映し出された名前は菜乃綾奈。

「もしもし綾奈?どうしたの?こんな夜遅くに」

 携帯電話を購入したと知らせたのはつい先程だったので、少し驚きながらも電話に出る。

「優ちゃん、助けて…」

「その声…。里香さんですか?助けてって…どうかしたんですか!?」

 いきなり耳に飛び込んできた助けを求める電話に動揺して、思わず声を荒げてしまった。

 相手が里香さんなだけに、凄まじく嫌な予感がするのは、きっと気のせいではないだろう。

 そして告げられる言葉。


「明日のシフト組むの間違えちゃった…」


 それはある意味、明日通常通りバイト先へ向う人間には死の宣告に等しかった。

「ちなみにどう間違えたんですか?」

「うんとね。明日出勤するの、綾奈と優ちゃんだけになってるわ」

 一番最悪なパターンである。平日でもフロアは四人いないと辛い賑わいをみせていると言うのにも関わらず、だ。

 加えて明日は―

「……里香さん。明日何曜日か分かってます?」

「日曜日ね」

 もう絶句するしかない状況である事は間違いないらしい。

 電話口からは、綾奈が必死に他のアルバイト達に連絡を取っている声が聞こえてくる。だが、どうも感触はあまり宜しくないようだ。その声は、どんどん小さくなっている。

「………てへ?」

「てへ?じゃないですよ」

 可愛く笑って誤魔化そうとする里香さんに、鋭いツッコミを入れる。

 どうも里香さんも綾奈と同様、一見しっかりしてそうで、どこか肝心な所が欠落している天然さんのようである。性格どころかその性質まで酷似している似た者親子というのも珍しいものだ。

「仕方ないですね…。里香さん、綾奈と電話を替わってください」

 もうこうなってしまっては仕方ない。最後の手段を講じるしかないようだ。

「もしもし…。アルバイトの皆さんは駄目でした」

 里香さんと電話を替わった綾奈は開口一番に、先程の電話の結果を俺に教えてくれた。

「そっか…」

 なんとなく予想していた事とはいえ、やはり落ち込んでしまう。出来る事なら最終手段を講じたくはなかったのだが…。

「こうなれば……するしかないね」

「ですね…」

 綾奈も何の事かを理解しているらしい。俺の言葉に重々しく頷く。

 俺と綾奈の脳裏に浮かぶ、昨日もわざわざ来店した、暇を持て余してそうな二名の姿。

「では私が誘導を」

 綾奈が言う。

「了解。私は更衣室で待機。捕縛後、強制的に着替えさせます。…フロアで会いましょう」

 俺が答える。

 そして―


「グット・ラック」


 合わさる二人の声。そして切れる電話。

 こうして夜が更けていった…。

題名はいつだって統一感がありません(挨拶)

もう少し捻った方がいいのかも知れないのですが…。考え出したら、一日中考えても更新出来なさそうなので許して下さいorzさすがに5話分を同じ題名と言うのは避けたい所ですしね…(吐血)

今回は、意外に?アクシデントがささやかだと思います。誰を巻き込む気なのかは…皆さんすでにわかってらっしゃるんじゃないでしょうか?

お手紙、コメント、感想大歓迎です!文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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