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第24話 綾奈とメイドとご奉仕と

こうして俺は『どうなっても知りませんよ』と念を押す綾奈をなんとか説得。

お店の店長で、綾奈の母親でもある菜乃里香(なのりか)さんに二つ返事で承諾を貰い、喫茶店『Re:Symphony(リ:シンフォニ)』というお店で先週から働かせてもらっている…のだが―

「すいませーん。注文いいですか」

「……どうして、毎日毎日部活帰りにここに立ち寄る必要があるのでしょうか?お客様」

顔を引き攣らせながら、毎日わざわざお客として来店する翼と薫を睨みつける。

「あれ?お客様って言って良かったっけ?」

「ぐっ……!」

白々しくも、俺の発言の揚げ足を取ってくる翼に、さらに顔を引き攣らせながらも表面上の笑顔は絶やさない俺。

「分かりました。やればいいんでしょうが…」

「そうそう。ちゃんとバイトとしての職務を全うしないと」

してやったりと言わんばかりに意地悪そうな笑みを浮かべる翼に対して、俺は両手でスカートの端を上品に摘み上げ、目を伏せてお辞儀する。

そしてテーブルへと注文を聞きにいった際の台詞を口にした。


「何でもお申し付けくださいませ。ご主人様」


………バイトを始めて一週間。すでに俺のアイデンティティを、すべて犠牲にしているような思いで働いている。



喫茶店の前に、『メイド』と言う単語が付く事をまったく知らされていなかった俺は、バイト初日に笑顔で手渡されたメイド服に声にならない叫び声を上げた。

すべて説明されたものだとばかり思っていた綾奈はともかくとして、翼と薫の両名は確実にわざと俺への通知をしなかった。その理由は、初日から連日訪れるその立ち振る舞いから、容易に想像できるのだが…。

「予想通りです」

「薫。陥れた本人を前にしてそういう事言わない」

優雅にレモンティーを啜りながら言う薫にツッコミを入れる。

だが元々メイド喫茶なんていう考えは、里香さんの頭の中には無かったらしい。

旦那を早くに亡くして、女手ひとつで綾奈をここまで育て上げてきたのだが、ふと娘に何も残してやれていない事に気がついた。

せめて、当時は趣味程度のつもりで始めた喫茶店を時が来れば綾奈に譲ろうと、純粋に綾奈が似合いそうな衣装と方針を打ち出したら、立派なメイド喫茶になったと言っていた。

一人の人間としてはその素晴らしい経緯には敬意を表したいし、その意見には男として大いに賛同したい。だがやはり、女性でありながらそこに行き着いてしまった思考回路は間違いであると、ここで指摘しておこう。

それに運が良いのか悪いのか。実際、綾奈のメイド服姿は恐ろしいほどに似合ってしまっているのが現状だ。

その結果、近隣ではこの店は『可愛い女の子が奉仕してくれる喫茶店』として名を馳せてしまったらしく、それを目当てに来たお客相手はかなり骨が折れる。

「優ちゃーん。今日の仕事上がりは何時?一緒にデートしようよ」

「風俗店じゃないんで、店員への過剰な口説きやお触りは止めて下さいね?ご主人様」

「…はい」

いつも通り手に持っていたお皿を振り上げて、お客を威嚇する。

今までも、給料の良さからアルバイトも大勢来たらしいが、それもこんなお客相手に嫌気が差してすぐ辞めてしまって困っていたそうだ。

今では、残った数人の古株と娘である綾奈とで、なんとかやりくりしているらしい。

どうも綾奈の普段から丁寧な口調や物腰は、小さい頃からの接客で培われたものであり、今では完全な素で接しているのに、ちゃんとしたメイドとして機能している事に妙に納得がいった。

「いらっしゃいませ、ご主人様」

「いらっしゃいませ、ご主人様」

店の中に入ってきたお客を出迎える挨拶が店内に響き、俺も慌ててそれに続く。

その『いらっしゃいませ』という部分には、まだやはり本来は普通の喫茶店であった名残を感じさせる。

「優ちゃん、そろそろ休憩してらっしゃい」

そんな折、そう言って優しく俺の肩を叩いてくれたのは里香さんだった。

「頑張ってくれるのは嬉しいけど、あまり無理しないようにね?」

「あはは、大丈夫ですよ。それじゃ休憩入ります」

里香さんの気遣いに感謝しつつ、店内の奥にある更衣室へと足を向ける。

「あ、ちょっと待って」

すると、何かを思い出したように俺を呼び止める里香さん。

「ついでに倉庫整理してくれてる神凪君に、ジュースを持っていってあげて欲しいの」

どうやら翔への差し入れを頼みたいらしい。

倉庫は更衣室のすぐ近くにあることだし、別段断る理由もなかったので俺は一言『わかりました』とだけ答えて頷く。

そんな俺に対して、満足気に里香さんは頷くと―


「………個人的にご奉仕してきても大目に見るからゆっくりしてらっしゃい」


去り際にとんでもない台詞を呟かれた気がしたが、俺は無視して翔がいる倉庫へと歩を進めた。

前話で脱字がありました、ごめんなさい(挨拶)

ご連絡頂いてまことにありがとうございました。感謝です!お手数かけて本当に申し訳ない…orz

今回は…予想通り?でしょうか?それとあまり動きがないように感じるかも知れませんね。ホントに夏休みまでの間を埋めるだけのお話にならないように頑張ります(苦笑)

お手紙、コメント、感想大歓迎です!文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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