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第18話 心配性な少女と意味不明な上級生…と木。

そしてその日の放課後。

「それじゃ行きましょう」

俺が帰り支度をし終えた事を確認して、綾奈が微笑む。

どうやら本気で、自分が所属している家庭科部を休んでまで、部活案内を務めるつもりらしい。

あの後、俺が溢した溜め息を、どう勘違いしたのか突然妙案が思いついたと言わんばかりに笑顔で『私が案内しますよ』と言い出したのだ。

どうも、綾奈は引っ込み思案ながら、一度友達として懐くとあれこれ相手の世話を焼きたくなるらしく、その行動力は半端ない。さらに言えば、それが全て善意から来るもので、こちらとしてもそう簡単に嫌とは言えないのである。

以前、翼が『そういう意味じゃ三人の中では一番性質が悪いかも』と笑って言っていたのを耳にしたが、ありがち実体験からくる感想だったのかも知れない。

「うん。ありがと、綾奈。……さ、行こっか。神凪翔君」

だが、やはりその厚意を無駄にする訳にもいかない。俺はエンジェルスマイルで綾奈に返事を返し、一人帰ろうとしていた所を先程捕まえた翔に微笑みかける。

「いつもながらまったくもって信用できない笑顔ですね」

翔も、俺に負けず劣らずの綺麗な笑顔でその問いかけに応えてきた。どうやら無理やり巻き込まれた事が、少々気に入らないらしく、その笑顔は果てしなく黒い。

「あら嫌だ。信用できないのは、貴方の愛想笑いで十分ですから」

「ははは。愛想笑いの質の高さでは、私は貴女の足元にも及びませんがね」

関わりたくない翔と、無理やりにでも関わらせるつもりの俺。笑顔のまま、不敵に笑い合う。

その悪質な嫌味の応酬に、綾奈とまだ教室内に残っていた生徒達も少々引き気味である。

そこに―


「神凪優!折り入って頼みがある!!」


響き渡る男の声。

突然の闖入者に一同が呆然としている最中、その男子生徒は俺へと歩み寄ると手を両手で握り締める。

「あ、あのー…どなた様でしょうか…?それから頼みって…?」

そのあまりの唐突さに困惑しながらも、なんとか声を絞り出して問う。その時見えたのは、胸元にあるリボン。それは三年生を示す青だった。

「神凪優」

「はい?」

その呼びかけの意図が分らず首を傾げる俺に、男は爽やかな白い歯を輝かせて、俺の手を握り締めていた右手をそのままに、左手を首元に添えてくる。

とても嫌な予感がする。

「貴女が―」

男子生徒は添えた手を、後頭部へと滑り込ませると一気に俺を抱き寄せた。

少々近過ぎるように感じる、顔と顔。

そして囁かれる言葉。心なしか男の表情が硬い。どうもこういった事は不慣れらしい。

「貴女が…欲しい」

だが男は言い切った。言われた俺自身はとにかくその言動すべての意図が理解出来ないが、男はどこか満足げだ。

だがここは天下の往来とも呼べる学校の廊下際。

当然そんな行為をすれば―

「そうか。相川(あいかわ)。先生もお前の身柄が欲しい。生活指導室までの短い付き合いだが宜しく頼むぞ」

案の定、通り掛った体育指導者兼生活指導長である教員に、相川と呼ばれた上級生は襟を掴まれた。

「俺は別にやましい事など…!」

「犯罪者は皆最初はそう言うんだ。いいからさっさとこっちに来い」

なにやら必死に弁論していて抵抗を試みているようだが、そのまま連行されていく正体不明の上級生。

「…………なんだったんだろうね?」

「さ、さあ……?」

その上級生の姿を、呆然と見送る俺と綾奈。そして様々な憶測を囁き合う、その一部始終を目撃した生徒達。

そんな皆を尻目に、翔は一言。

「いつもながら貴女の周りには不思議な人が集まりますね」

と、笑顔で皮肉を言うのだった。



かくして、突然の闖入者に一時騒然としたりもしたが、今はすっかり気分を入れ替えて、綾奈の案内の元、校内部活めぐりが始まっていた。

美術部に吹奏楽部。そして綾奈が所属している家庭科部などといった文化部の見学が一通り終え、今は下駄箱で下履きに履き替えている所だ。

時刻的にどうやらこれでお開きになるようである。

しかし翼の部活の終了時間には、まだ少し時間が早いらしく、迎えに行くついでに所属している空手部の見学でも、と話が綾奈から提案された時の事だった。

「ごめんなさい!」

最後に立ち寄った家庭科部での俺の振る舞いになにやら問題があったらしく、綾奈が呼び戻されてしまったのだ。

「それより私のせいでごめんね…。何か失礼な事しちゃったのかな…」

最初に綾奈に紹介されてからというもの、特別する事もないので、部員が調理をする様子を見ていただけ。そのはずである。

それと意外な事、と言えば失礼かも知れないが、男子の部員も多くて驚いた。

その理由に、この隣にいる綾奈の存在が大きいという事を、部長さんに耳打ちされた時は『なるほどな』とは思ったが。

俺自身、まったく料理が駄目なので、少しばかり尊敬の眼差しで皆を見ていた。

だがやはり動機が不純なせいか、その腕はまだまだ未熟だった。男子生徒の多くは、視線をやれば、やれ指を切っただ、やれ調味料の分量を間違えただとか、失敗を繰り返していた。

その様子に少し失笑してしまったが、勿論、失礼の無いようにちゃんと後から笑顔で対応したつもりだ。

「……優さんってホント凄い天然ですよね」

首を傾げてる俺に、天然であるはずの綾奈が苦笑いを浮かべる。

生粋の天然さんに天然と呼ばれる俺。それはかなり…なんというか。イタイ存在ではないだろうかと不安になる。

「それじゃあ、私は行ってきますね。後片付けだけですから、すぐ戻ってこれると思います。あと、さっき見学の時に薫ちゃんに聞いたらもうすぐ終了するって言っていたので、もうすぐここに来ると思いますから」

「え!?薫って見学した所に居たっけ?」

綾奈の言葉に、驚きの声を上げる。

「あ、はい。ほら、演劇部に行った時に、背景の木になりきってましたけど」

確かに演劇部に足を運んだ時、ちょっとした演劇の練習中だったらしく、その一部を観させて貰いはしたが、その中で薫を見た記憶はない。

それがまさかあの、たった一本、ただ突っ立ていた木を薫が演じていたとは思いもしなかった。

俺の様子に『気づきませんでしたか?』と、今度は綾奈が俺に対して首を傾げる。

そしてその問いかけに俺は―


「薫…。恐ろしい子…」


名女優を予感させる薫の名演技を思い返して、思わず項垂れるのであった…。


眠り眼で打った文章の修正には苦労するぞ。気をつけろ!(挨拶)

さて以前もお話しましたが、今回も五話で一つの物語となります。こういった手法で一話ずつ公表する事は、読者様にとっては読み辛いく苦痛なのではないかと頭を悩ませたりもしているのですが…。

如月は一話で完結させるほどの表現力を持っていないものとして諦めてやってくださいorz本当にすいません。

ですがその分、私生活に支障をきたさぬように時間配分をしつつ、この更新スピードを維持する事でその穴を埋められたらな、と考えております。目標は大きく持って一日一度更新!……ネタが続く限り(笑)

お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いしますね。

それでは〜。如月コウでした(礼)


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