第16話:そして少女は日々を送る
『人を好きになれ』
そう言われて、次の日に『好きになってきました』と言える人間なんて、そうは居ないだろう。
ましてやその言葉の前に、本気で、という言葉が付けば尚の事だ。
女として男に惚れてしまうとこのまま女で。
男として女に惚れると、男に戻れる。
勿論、そのすべてに空想論においての“かも知れない”がつくのだが。
そうなると答えは簡単だ。
俺が女になった理由の時もそうだったが、その理論の成否はともかくとして、日々の日常を過ごしていくしか手段は無い。
普段通りに朝起きて。
学校に行って。
帰ったら晩御飯を食べて、お風呂に入って。
一段落ついたら翔の部屋で、夜遅くまでオンラインゲームをプレイする。
その流れに多少の変化はあるかも知れないが、それは誰しも起こりうる出来事ばかりだ。
俺の最大の変化は性別であって、それを除けば普段通り。いつもと変わらない日常である。
最近では、その変化にも慣れ始めたようで、多少の戸惑いとぎこちなさはあるものの、特別対応に困る事が発生する、ということは少ない。
“女でも口調さえ気をつけていれば、男の俺でも大丈夫”
そう開き直ってしまっているせいもあるかも知れない。
今更せっかく美少女になったのだから、その容姿を武器にして男を漁ろうなんて到底思えないし、思わない。
それに最初に奇行が多過ぎたせいか、変に学校内でも有名になってしまっているのが現状だ。
自分の噂を他人に聞いた所で話してはもらえないので、その内容までは知らないが…。
どうせ“美少女だが”という前置きはあるにはあるが、続く言葉は『性別を意識してない痴女』だとか『天然馬鹿女』と言ったものだろう。
恋愛云々よりも先に、その噂がこれ以上酷くならないように、まずは日々その印象を改善していくしかない。
そしてまた今日も。
窓辺から差し込む、朝日で目が覚める。
誘われるかのような日差しに、眠たい目を擦りながら立ち上がり、窓を開け放つ。
そして一日の始まりを知らせる、小鳥達のさえずりがその耳に聞こえてくる。
「ん〜……」
欠伸して。背伸びして。そして今日もいい天気だと呟く。
「翔、おはよう」
「おはようございます」
水面所まで行って、歯磨きをしている所で翔と鉢合わせ。
「最近はどうですか?」
「んー…ぼちぼち…」
朝から無駄に爽やかな翔の幾つかの質問に答えて、眠気が覚めるのを待つ。
その後、家族みんなで食事。俺が女になってからというもの、なぜか普段は姿形も見せなかったはずの両親が、居座りついてしまっているのが少々疑問だ。
「あ、そうそう。優ちゃん、この前買った下着の事なんだけど…」
「…おばさん。おじさんと翔がいる前で、そういう話題を振るのはやめて下さい」
いつも通りの母親のセクハラ発言とも取れる攻撃をかわしつつ。
「お父さんは嬉し――」
「黙れ」
「……ごめんなさい」
父親の馬鹿発言を遮り、黙らせて。
「あ、優さん。私があげたリップクリーム塗ってくれてるんですね」
「あはは。ほら、せっかくもらったんだし、ね」
「優さんは何もしないでも十分美人ですけど…。少しぐらい、そういう事も気にしないと駄目ですよ」
藍璃の女らしい会話を、波風立てない様に適度に要望に応えながら。
「いってきまーす」
挨拶を交わして、同じ高校へ通う翔と共に玄関を出る。
こうして俺――神凪優の一日が始まりを告げるのだ。
「リップクリームって…。俺ってどんどん普通に女になってきてるような気がする…」
「いつもながらよくも飽きずに毎日毎日、朝からの己の一連の言動を省みて、玄関を出てすぐの道の真ん中で項垂れるなんて…忙しい人ですね。貴女も」
…………始まるのだ。
二日間ほど考えたけど何も思い浮かびません(挨拶)
やはり私には脊髄反射で書くしかないようです(汗)無駄に日を空けてすいません…!!(ぁぁ)
それと今回から『ネット小説ランキング』という所にも参加させて頂いています。もし宜しければ皆様の清き一票をっ…!!
部門がラブコメディかFTコミカルかで迷いましたが…。今現在でラブの要素が無いので後者を選びましたorz
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