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第15話 神凪優におけるその属性について

ここで勘違いしないで頂きたい。

確かに、不覚にも本心から女としての行動をとってしまった事は事実だ。

それは男らしく非を認めようじゃないか。

しかしながらそれを真実として捉えるのはどうだろう。

事実が必ずしも真実である、という保障はどこにもない。

ましてや老若男女誰であったとしても、突然何者かによって体を触られれば多少なりとも“驚きのリアクションをとる”というものは存在して然るべき動作である。

その動物的とまで言える自己における危機回避行動に対して、『顔を真っ赤にして可愛い〜』や『初々しくていいっ!』などと言った、かなり偏った知識においての観点による評価…いわゆる偏見というもので俺といういち個人のすべてを理解したつもりでいられるのは早計というものだ。

こうして無理やり小難しい言葉を並べて、インテリぶっている事にも訳がある。

つまり何を言いたいのか。

その答えは極めて単純かつ明白である。


「可愛いって言うなーーー!!」

「無理無理。だってその怒った顔もまた可愛いから」


まったく災難だった学校の帰り道。

ハンバーガーショップの店内。各自各々が頼んだ注文の品物を頬張りながら押し問答を繰り返していた。

俺と小野寺薫。そしてその向かいに悟技翼、菜乃綾奈(なのあやな)がテーブルにつき、総勢4名は、悟技の『優は1人にすると浚われちゃいそうだから家まで送ろう』という訳のわからない提案により放課後の少しの時間、行動を共にしていた。

俺の叫びを頭を撫でながら軽く流して、悟技翼は未だに俺を開放しないでいる。

悟技翼は身長が女子にしては高い方で170cm以上はあるようで、160cm前後しかない俺の身長では、容易く頭を撫で回されてしまう。

しかしどう考えても可愛さで言うのなら、菜乃綾奈の方がこの中では群を抜いているように思える。

ボブカットが似合う童顔。そして、その幼顔には似合い過ぎるほどの背の低さ、及びに体型は愛らしい小動物を連想させる。

「翼。その表現は神凪さんにとって適切ではありません」

黒縁眼鏡をくいっと押し上げ、悟技の言葉に意義を申し立てる。

(お、委員長も分かってるな)

うんうんと俺が頷いているのを横目に、薫は無表情に淡々とその頭の中で整理された理由を一気に読み上げる。


「神凪さんはいわゆる“天然”という属性に準ずる人物であり可愛いと漠然とした表現方法を使用するとその属性ゆえに理解できず混乱させる恐れがあります」


一瞬耳を疑ってしまった。

そのあまりにも俺の思考内容と違った、無表情で淡々と語るべき内容ではない言葉に、俺はあんぐりと口を開けて呆然と薫の顔を見つめる。

しかし素知らぬ顔で、再びハンバーガーを頬張る薫。

その姿に俺も下手な追求をする事は止めておき、溜め息混じりに頼んだウーロン茶のストローに口をつける。

だが翼はそうは思わなかったらしい。

「つまり?」

眉を顰め、首を傾げて薫に言葉の意味を質問する。

「つまりは―」

すると薫は二度(にたび)ハンバーガーを置き仰々しく口を開く。

馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに、俺は大きな音を立ててウーロン茶を口に含む。


「自己の胸を公衆の面前で触られた時の体温上昇においての顔の赤面具合とその後の照れ隠しの行動において可愛さを感じられる。そう明確に表現するべきかと」


「ぶーーーーーっ!!」

「きゃっ!?」

その無表情で淡々と、尚且つ公衆の面前で話すべきではない内容に、今度はその口に含んだウーロン茶を盛大に噴き出す俺。

そしてその被害は、丁度俺と向かい合っていた綾奈に直撃する。

「ご、ごめんっ…」

慌てて、もっていたハンカチを手にして綾奈へと手を差し伸べる。

「だ、大丈夫ですから…気にしないで下さい」

少し困ったような…、だがほんわかとした笑顔を浮かべながら、綾奈は自分のハンカチを取り出す。

だがそれを制し、俺は綾奈の濡れた頬にハンカチを添える。

「ごめんね」

「う、ううんっ…!ほ、ホント気にしないで下さいね…っ!?」

綾奈はなぜか頬をほのかに朱色に染め、緊張からか言葉が変に力強い。

そこで気がつく周囲の視線。全員食べるのを一時中断し、こちらの光景に呆然と見とれている。

だが、一度出してしまった手を引っ込めるわけにはいかない。無心で綾奈にかかった滴を拭き取る。

その横で、ハンバーガーを食べ終えたのか、ポテトを頬張りながら雑談を推し進める二人。


「翼。謝罪し訂正します。神凪さんは“天然”だけではなく“百合”の属性も兼ね備えているようです」

「なるほど。両刀使いと言う訳か…侮れないね」

「二人とも…いいから黙ってくれ……」



学校に通い始めて数日。

どうやら俺は、友達選びという最大の問題を間違えてしまったらしい。

これからの学校生活に一抹の不安を感じつつ。

俺は、静かに溜め息を吐いたのだった…。

友人に作中のネタを振られて一瞬何のことか考えた(挨拶)

さて。一応残すは第一部のエピローグ的な第16話を打てば、ひと段落でしょうか?

その第16話は今日中にはUP出来るかと思います。

如月的第一部は、言い表すなら『出会い』のように思っております。実際第17話からの第二部では、一部で出てきたキャラクター達が中心となった話になりますしね。本当のドタバタはまだまだこれから?

それでは次回の後書きでお会いしましょう。如月コウでした。

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