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第14話 現状の死刑宣告と今後の拒絶を一言で表すと?

結局、惜しまれつつも委員長に促されるまま教室へと足を踏み入れた、まさにその時だった。


「優ちゃん〜〜〜」


気持ちの悪い猫なで声で、吉良耕介がこちらへと飛び掛ってきたのだ。

正体不明の悪寒に、思わず後ずさりながら身構える。

だが、吉良が俺に辿り着く事はなかった。

なぜなら―

「あぶな〜い」

「ぶべらっ!?」

注意を促すつもりがまったく無い声を出しながらも、地面よりも僅かに浮いた場所にいる吉良の顔面を容赦なく打ち抜いた、女生徒の上段回し蹴りは鮮烈だった。

女生徒はその動作のせいで靡いた、背中の後ろ程の長さもある左のサイドポニーをかきあげ姿勢を正す。

そして綺麗に弧を描いて黒板へと叩きつけられ、そのまま下へとずり落ちた吉良に冷ややかな視線を送った。

「優さん大丈夫ですか?」

それまでサイドポニーの女生徒の横に立ち、オロオロしていたボブカットが似合う小柄な女生徒がこちらに駆け寄り声をかけてきた。

「わ、私は大丈夫だけど…。吉良君の方があまり大丈夫じゃないんじゃ…」

「大丈夫大丈夫。女の子にいきなり抱きつこうとする奴が悪い。ね?綾奈(あやな)

「そ、それはそうだけど〜……」

「………あはははは」

未だ微動だにしない吉良を尻目に、そう言って快活に笑うサイドポニーの女生徒と、綾奈と呼ばれた、俺より身長が一回りほど小さな女生徒を交互に見ながら、俺は馴染み始めてしまった女口調と苦笑いで答える。

そうしてる間に『危なかったね〜』『大丈夫?』と駆け寄られ、知らない間に再び俺の周りに女子の輪が出来ていた。

「初動作から終わりに至るまで無駄のない敵の急所をピンポイントでついた見事な上段回し蹴りでした。翼」

「ありがと、薫。まぁこれでも、女子空手部のエースだからね」

それを遠巻きから見つめつつ、翼と呼ばれた少女が委員長の言葉に微笑む。

「人様の顔面をシュートするとは何様のつもりだっ!?悟技翼(さとりぎつばさ)!」

そこで突然吉良が復活し、それと同時に悟技翼という名の少女に詰め寄り抗議し始めた。

「……あん?」

しかし、どうやら吉良の発した言葉の中にどうやら触れてはいけない琴線があったらしく、瞬時に少女の目が据わる。

そして周りの生徒達は、無言で一定の距離を空け始めた。ある者は机を隅に除け始め、またある者はさり気なく机に飾られるであろう花瓶と花を準備し始める。

「ちょ、ちょっと待てっ!?委員長も黙ってないで、今まさにいわれも無い暴力を行おうとしている親友に何か言ってやってくれっ!!」

「死して屍拾う者なし」

「…ってすでに避難してすっげえ遠くにいながら、今平然と俺への死刑宣告と、暗にその後の対応に関しても俺に関わる気が無い事を述べましたよねぇ!?」

つい先程まで俺の横に居たはずの委員長。すでに『我関せず』と言わんばかりに一言言い放ち、飄々とした表情で教室の隅にある自分の机で読書中である。

(ん?俺の隣から退避した?それってつまり―)

「死に晒せーーー!!」

「ボールは友だびぶべらっ!?」

思考を遮るかのように意味不明な言葉を残して、再び回転しつつ突っ込んでくる吉良。

その先にあるものは―

(どう考えても俺だよなぁ…)

気がついたところで、今はすでに後の祭りと言うやつだ。どかっ!と激しい衝突音を教室中に響かせ、見事俺は飛んできた吉良の下敷きと相成った。

「いつつ……」

したたか打ち付けた腰を擦りながら、俺は涙目になりながらぶつかる瞬間に閉じた瞼を開け放ち、周りを見渡す。

するとそこは奇妙な光景が広がっていた。

まず、目と鼻の先にいる吉良は、どういう訳か驚愕に目を見開いたまま固まってしまっている。

そして取り囲むのようにしてこちらの様子を伺っている女子達は、非難するような視線の者もいれば、激しい憤怒の表情で肩をぷるぷると震わせている者と、その態度と様々である。

一方。その他大勢の男子の態度はさらに理解不能で、『やられた』だの『羨まし過ぎる』と言いながら、涙まで流す始末だ。

訳が分からず、首を傾げていると。


「柔らかい…」


呆然と吉良が呟いた言葉が耳に入った。

その言葉と共に感じた、胸部への違和感を確かめるように視線を落とす。

手を床につこうとでもしてのだろう。視線の先には、差し出された吉良の右手が俺の胸をばっちり握っており―


「〜〜〜〜〜〜〜っ!?」


そこで完全に思考する事よりも先に、言葉にならない悲鳴をあげながら体が動いた。

たぶん俺が思うに、恥も外聞も無く本能的に女としてのリアクションをとったのは、はじめての事だったはずだ。

吉良の腕を素早くとりながら体を反転させて、上下の関係をすり替える。

そして起き上がる暇など与えずにマウントポジションをとると、そのまま永眠させるが如く勢いで心ゆくまで殴り続けていた。

その一部始終を見ていた神凪翔を、今朝に自分の身に振りかかった災難と寸分変わらない状況をどこか遠くに見つつ。


『やはり兄妹ですね…』


と、溜め息混じりに呟くのだった。



ラブコメディのラブの部分がまったくありません(挨拶)

もし良ければ評価とコメントを記入して下さると、とても励みになります。思ったこと・感じた事を書いて下されば今後の執筆の糧としたく思っておりますのでご協力お願いします。

勿論、作者宛てに直接メールを送って下さっても構いません。寧ろ小躍りして喜びます。

さて今回にやっとこさ登場した二人の女の子。果たしてその正体はっ!?…いぁクラスメイトですけどね(ぁぁ)

実は次回の15話とエピローグで、私的には第一部は完結します。随分と長い前フリでした。ごめんなさいorz

それでは次回の後書きでお会いしましょう。如月コウでした。

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