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第12話 父の叫びと母の笑顔は家族の基本形である

「この馬鹿兄ーーーーーー!!」


響夜というゲーム内の友と別れた約二時間後の朝。

突然部屋中に響き渡る、甲高い悲鳴のような藍璃の声。

「なんだなんだっ!?」

ベッドの端で寝ていたのだろう。

その声のあまりの大きさに驚き、跳ね起きた俺は床へと滑り落ちた。

「ぎゃーーーー!?」

そして、驚きのあまり早鐘の如く鳴り響く鼓動が落ち着かぬ間に、続いて真横で聞こえる男の叫び声。

慌てて視線をそちらへと動かす。

そこにいたのは、起き上がる暇など与えずにマウントポジションをとると、眠っていた翔を永眠させるが如く勢いで心ゆくまで殴り続けている藍璃の姿。

かつては男であった俺が見ても、畏怖を抱かずにはいられないような、一撃一撃に全体重を乗せたいいパンチである。

「優さん…レフリーストップを…要求します…」

そのまさに一撃必殺の拳を何度も受けながらも、何とか声を絞り出す翔。

「藍璃落ち着けっ!普段ならまだしもこいつは本当に死んでしまうっ!!」

事態は一刻を争う状況であると察知した俺は、口調を変える事すら忘れて藍璃を抑えにかかる。しかし如何せんながら力不足である。

人間というものは、何かを殴る等の行為を行う時、無意識にその力を自分の肉体が傷つけないようにセーブするものらしいが…。

どうやら今の藍璃はそれを取っ払った所にいるらしい。正直俺1人の力では手がつけられない。

「翔っ!お前も少しは手伝えっ!」

完璧に止められないにしても、多少は攻撃を抑える事は出来る。

翔はその隙を見計らって起き上がり、馬乗りになっていた藍璃の両手を掴み、一気にベッドへと押し倒す。

……勿論と言うかなんと言うか。藍璃の後ろで両手を掴んでいた俺と一緒に。


「「一体何事っ!?」」


そしてそこに颯爽と現れる父と母。

その眼前に広がるのは、着衣の乱れた自分の息子に押し倒された、これまた同じく着衣の乱れた娘とパジャマ姿の女性。

「………」

「………」

凍りつく場の空気。

今更言うような事でもないが、この状況は非常に拙い。

「ば……」

「ば……?」

「馬鹿野郎ーーー!!」

父は涙を浮かべながら叫び、翔の襟を掴みガクガクと揺さぶる。

それはそうだろう。知らない者が見ればどう考えても犯罪行為のそれである。

当然、父親として毅然とした態度で望まなければいけない。

そして道を踏み誤った息子を諭し、再び正しき道へと導くため声を荒げて叫ぶのだ。


「どうしてお父さんも呼んでくれないだーー!?」


…いや。人の親としてその発言はどうだろう、父よ。

未だに騒動の渦中にある翔の部屋の中。父まで乱入してしまった以上、そう簡単に事態が沈静化に進むとは考えられない。

「あなた?」

「あ、ママ聞いてくれっ!翔が―」

「黙れ」

「ごめんなさい」

予想に反して、父、すんなり沈静化。この数秒のやり取りで、一瞬にして家族内での力関係が窺い知れる。

「とにかくいつまでもふざけてないで、下りてきて御飯食べちゃいなさいね〜?」

いつも通り柔らかな笑みを浮かべる母。先程の黙れ発言が嘘のようなのほほんとした笑顔である。

それから五分も経たずに、暴れていた藍璃もすっかり平常心を取り戻したのか、乱れた着衣を直して『ごめんなさい』と俺へ一言謝罪の言葉を残してリビングへと下りていった。

「……優さん」

「……ごめんなさい」

責めるような口調の翔に、俺は素直に謝った。

現状と不鮮明ながらも昨日の寝る瞬間の記憶を手繰り寄せてみれば、俺が優としての自室に戻らずに、ついうっかり翔のベッドに潜り込んだという事が安易に理解出来たためだ。

「貴女は故意に私を殺そうと画策していませんか?」

「その可能性は否定できないが、今のところはないと答えておこう」

翔の質問に真顔で即答する。

そんな俺の答えに翔は、『どうして私がこんな目に…』と哀愁たっぷりに呟き、溜め息をついて制服に手をかける。

「さて、俺も自室に戻って制服に着替えるとするか…」

面倒臭そうに、背伸びをしながら立ち上がる。

「本来、女性というものは身支度に時間がかかるものなのだということも視野に入れて早起きして欲しいものです」

「そう言われてもな〜。女としての身嗜みは、性別の情報の一環として無理やりにでもベストな状態へと戻されるんだろ?」

「女性が聞いたら、喉から手が出るほど欲しいシステムですね…」

翔の言う通り、女である藍璃がなにやらその事で尊敬の眼差しを送っていたが…つまりはそういう事だ。

必要以上の美容…つまりは化粧を行なうと言うなら話は別だが、世の女性が欠かさず行なっているであろう髪の手入れや、肌の手入れ。

それらはすべて、性別の情報としてすでに構築されているため、手入れの必要がまったく無いのだと言う。


「まあ男である俺が、女として一生を快適に過ごせるようにしてくれる、ありがた迷惑な機能って訳か…」



改めてその事実を口にして、諦めにも似た溜め息が俺の口から零れるのだった…。


人間の限界は、もう駄目だと感じた数歩先にあります(挨拶)

もし良ければ評価とコメントを記入して下さると、とても励みになります。思ったこと・感じた事を書いて下されば今後の執筆の糧としたく思っておりますのでご協力お願いします。

勿論、作者宛てに直接メールを送って下さっても構いません。寧ろ小躍りして喜びます。

さて今回は、もうとにかくコメディを目指しました(※この作品コメディで登録されております)一応、『藍璃の朝』を読まなくても、続くような話の流れになっているように頑張りました。

……だから何?と言われればそれまでですがorz実は前回の『藍璃の朝』をいつ出すか迷っていた名残なんですけどね。

次回の13話では再びあの委員長さんの出番です。はてさてどうなる事やら。

それでは次回の後書きでお会いしましょう。如月コウでした。

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