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第10話 お風呂と電波と俺っ!?

「それは小野寺薫(おのでらかおる)さんですね」


帰宅後。

家族と共に食事を終え、促されるがまま有無も言わさず入らされたお風呂からあがった俺は、元自室、現神凪翔の部屋で寛いでいた。

「小野寺薫…?聞いた事ないな…」

俺は、翔が吉良達に連行されていった後に出会った少女について、質問した答えとして返ってきた名前に首を傾げる。

「それはそうでしょう。こう言ってはなんですが、彼女はクラスの学級委員長という立場ながら、人の前に立つ事はしないので目立たない。一年の時は違うクラスであった貴女が、彼女を知る可能性は極めて低いでしょう」

俺の呟きに対して、どこか小野寺薫を連想させるような口調で翔は答える。

「それよりまだお風呂は苦手なんですか?」

「ぐっ……」

先程の母親とのやり取りを盗み見ていたのだろう。やれやれと言った表情で、翔が肩を落とす。

確かに俺はお風呂が苦手だ。無論、入るのが嫌いだとか、面倒と言った理由ではない。

やはり最大の原因は―


「いい加減女性の体に慣れて欲しいものですね」


翔が溜め息混じりにその最大の原因を口にする。

だがそれはそう簡単に慣れられるものでもない。ましてや、それが意図せずに訪れた変化であれば尚更のことだ。

そしてもう一つ厄介なのは家族の存在。

さすがに俺も男であった以上多少なりとも興味はあるが、己の裸を見て喜ぶのは、自己の人間性が問われる気がしてならない。

だからこそお風呂に入るという行為は、可能な限り遠慮した代物となり、必死に拒絶していたのだ。

それをどう勘違いしたのか。家族は全員“極度の恥ずかしがり屋で初々しい女の子”として認知しやがった。

まったくもって、都合の悪い方向へとばかり解釈する性質の悪い家族である。

「しかしそればかりは慣れて頂かないと困ります」

「分かってるよ…」

翔の言葉に力なく頷く俺。

だが、わざわざ落ち込むためにここにいるのではない。


「さて。そろそろいいだろう。話せよ」


数秒開けてから。翔を見据えて俺は疑問を口にした。

「………」

「………」

そこにはすでに先程までの和やかな雰囲気は無く、息が詰まりそうな程の重苦しい空気が場を支配していた。

ややあって―


「ネットゲームにおいての“NPC”というものはご存知でしょう?」


何を思ったか、翔はパソコンの電源をONにし手早く起動させると、そう切り出した。

「は?あぁ…ノンプレイヤーキャラクターの略称だよな?それが何なんだ?」

その突然の問いかけに少々呆気にとられながらも答える。

「そう。そして付け加えるなら“ゲームの世界において何らかの役割を持ち、その役割に応じてプレイヤーを導く事を主にしているキャラクター”という立場にある者の名称です」

「………はぁ」

突然のゲーム解説に適当な相槌をうつ。

正体を話せと言っているのにも関わらず、この会話内容。本当に話す気があるかどうかすら怪しく思い、顔を渋めた瞬間だった。


「つまりこの世界において“私”がその立場にいる訳です」


さらりと。

驚くほど簡単に、目の前にいる神凪翔は自分の正体を口にした。

「……はぁ?お前がNPC?なんの?」

「ですがそれは通常、パソコンという膨大な情報量を持つ世界の中で、ゲームという一部分の存在でしかありません」

怪訝そうな表情を浮かべる俺の疑問は、素晴らしくスルーしてくれやがる翔。

「そしてここからが重要です。1人の人間を、一つのパソコンとして考えてみて下さい」

もう誰か助けて欲しい。

正体を聞いただけで、こんな訳の分からない電波講義を受ける事になるとは誰が予想しただろうか。少なくとも俺は予想できなかった。

「そう例えたのなら、そのパソコンは“コミュニケーションという媒介を通して他と繋がる事も可能な、かなり精密かつ高度でありながら自己修復機能をもった代物”と定義出来ます」

「あの〜……頭大丈夫か?」

あまりの電波っぷりに引き起こされた眩暈をなんとか耐えつつも、我慢しきれず口を挟む。

「ですがパソコンである以上、どうしても弱点となるものが存在します。なんだと思いますか?」

こちらの話を完璧に無視した挙句、そちらの疑問には答えろと仰るようだ。

しかしどうやらその問いに答えない限り、話を進ませないつもりないのだろう。

こちらを見据えたまま翔は動かない。

「……ウィルスか?」

とりあえず一般的に言われているパソコンの弱点を述べてみる。

その答えに満足気に頷くと、翔は『では手短に』と前置いて次なる話へと切り出した。


「結論から言いましょう。“神凪翔”という“パソコン”は、“S”という不純物…つまりはウィルスをインストールした事により、ある情報において壊滅的なダメージを受けました。その壊滅的なダメージを受けた情報こそが―…」



―性別という情報です。




その言葉を聞くと同時に、俺の意識が遠退く。

……あぁ神様。どうやら俺のささやかながらも平穏な日々は、いつの間にかこんな毒電波な与太話によって侵されていたらしい……。





はい、石を投げないで下さい!(挨拶)

もし少しでも面白いと感じて下さったなら評価とコメントを記入して下さると、とても励みになります。

思ったこと・感じた事を書いて下されば今後の執筆の糧としたく思っておりますのでご協力お願いします。

さて今回ですが…難しいですね。

皆様に受け入れられるかがとても不安です。ですので、皆さんも自分をPCとして仮定して考えてみてください。(洗脳を試みる)

色々とツッコミ所が満載なまま、次回の後書きで会いましょう。

如月コウでした(礼)

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