003話 遅刻はどこの世界でも悪い
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部屋から出ると、初めてここが2階だったことに気付く。
どこがリビングなのかと探しながら歩いては見たものの、2階にリビングは無さそうだ。
階段を降りて下の階へ行くと、話し声が廊下へ漏れ出ていた。
その声が聞こえる扉の先がきっとリビングなのだろう。
もしも違う部屋だった場合のことも考えて、細心の注意を払いながら扉をそーっと開ける。
様子を見ながら、ここだってタイミングで……
「なにやってんの? お姉ちゃん?」
「うわぁーー!!!」
目の前にいきなり妹ちゃんの姿があって、尻餅をつきながら驚く。
ホラーは得意な方の俺でも、突然人が現れたら怖い。
バクバクとうるさい心臓の鼓動が落ち着くまでにしばらく時間が掛かった。
「えーっと、かくれんぼ?」
「お母さーん! お姉ちゃんが1人でかくれんぼしてる!」
「もーお、冬音、春陽! 何してるの! 遊んでないでさっさと食べる! お母さんこの後仕事なんだから、早く食べてくれないと皿洗えなくて困るんだけど」
最もらしい理由で怒っているのが俺の母親なのか。
妹ちゃんである冬音と呼ばれた少女と同じく、どこか俺の容姿に似ている。
それにしても若いなぁー。
俺が15歳ということはおおよそ30代くらいなはずなのに、20代前半って言われても全然納得出来るくらい見た目が若い。
「綺麗だなー、お母さん」
まだ男の感覚が染み付いていて、思わず感想が漏れる。
「何よ、いきなりー! 嬉しいこと言って! でも、本当に時間ないから急いでよー」
「は、はーい」
冗談っぽく喜んで見せる母。
変なことを言った自覚はあるので疑われてしまっていないか焦る。
これ以上、失言をしない為にも黙って席に着いた。
目の前には温かいご飯。
いつもはペットボトルの水をケトルで沸かして、カップ麺を食べていたのでこの温かさが懐かしい。
白米に味噌汁、ウィンナーと目玉焼き。
絵に描いたようなメニューは涎が出るほど美味しそうに見える。
「いただきます」
いつぶりだろうか。まともにいただきますと言ったのは。
まともな人間に戻ったように思える。
美味い、美味いと何度も思いながら、作ってもらった朝食を頬張った。
腹が満たされ、椅子にもたれてゆっくりしていると、お母さんや冬音が忙しなく動き始めた。
女の人の朝はやる事が多くて大変そうだなと他人事のように見ているとお母さんが声を掛けてくる。
「ちょっと春陽、何ぼーっとしてるの。入学2日目から遅刻とか恥ずかしいからやめてよね」
「洗面台もらいー!」
「え、待って待って! 使う! お、私も使うから!」
自分が学生であることも思い出し、洗面台争奪戦に向かう。
ただでさえ、慣れない身支度なのに狭い鏡でなんてやってられるか。
水回りでないと不便も多そうだし、絶対に良いポジションを死守してやる。
───
「はぁっ……はぁ……、あぶねぇー。遅刻ギリギリだ」
体力を消耗しながらも遅刻だけはしないように全力疾走。
知らない道のせいもあって地図を見ながらでも、想定よりも時間が掛かった。
こんなことになるくらいならもう少し早めに起きるんだったと、今更ながらに後悔が押し寄せる。
制服に着替えるとなると葛藤があったので仕方ない。
下着姿になって袖を通す感覚に恥ずかしさを覚える。
男子の制服とは全く違う肌触りも新鮮で、悪いことをしている気分になった。
いざ着てみたら、あまりの可愛さにうっとり。
女の子が服を選ぶのを好きな理由が良く分かる。
それ以上は新たな扉を開きかねないと家を飛び出した次第だ。
携帯の画面は8時15分を示している。
ホームルームが始まるのは20分。
まだ校門を越えただけだけど、教室まで走れば遅刻は免れるだろう。
走ったせいで身体は火照り、息は途切れ途切れ。
制服も皺でヨレてしまっている。
入学して間もないのだから、クラスメイトのみんなにあわてんぼうだと思われたくはない。
軽く手を皺を伸ばしてから、シューズに履き替えた自分のクラスである1年A組を目指す。
(ここが俺のクラスか。入っていたグループトークが1年A組だったから間違いないんだろうけど、流石に緊張するなぁー)
教室まで辿り着くのはそう時間が掛からなかった。
だけど、中に入るのが躊躇われる。
雅乃って確か女子校だったはず。
元々男子だった俺が入るのは如何なものだろうか。
心臓に手を当てて、深く息を吐き出して覚悟を決めて扉を開ける。
同時にふわっと香るほんのり甘い匂い。
当たり前だけど、教室内には同じ制服を着た女子生徒達が至る所にいた。
どうしたら良いのだろう。
もっと話し声でうるさいと思っていたが、意外と静かだ。
2人組がちらほらと会話しているくらいで、後は静かに本を読んだり、携帯を触ったりと様々。
廊下から流れ込む少し冷たい空気が、嫌にでも逃げ場を塞ぐ。
扉を開けたままにする訳にもいかず、とりあえず女子の花園へ足を踏み入れた。
「あ、あのー。どうかしたんですか?」
戸惑って立ち尽くしている俺に、話し掛けてきたのは御下げのよく似合う眼鏡を掛けた委員長タイプの女の子だった。
自分から話し掛けるのとか得意では無さそうに見えるのに、勇気を持って話掛けてくれたのだと思うと申し訳ない。
きっと優しくて真面目な子なんだろうな。
「なんでもないよ! ちょっと緊張してただけ。ほら、まだ入学して2日目じゃん? 友達できるかなーって」
両手を小さく振りながら必死に問題ないとアピール。
我ながら上手い言い訳だ。人生、この舌1本で逃げてきただけある。
「そうでしたか。体調が悪いのかと思って。……変に声を掛けてしまってごめんなさい」
彼女は顔を俯かせながら恥ずかしそうに謝った。
何も悪いことはしていないのだから謝る必要なんて無いのに。
多分、根っからの彼女の性格なのかも。
このまま沈黙が続いても気まずいし、これも何かの縁だ。
学校生活を円滑に進めるためにはここで友達を作っておくのも悪くない。
なんて上から目線で考えては見たものの何て言って友達になれば良いのか皆目見当もつかない。
お友達になりませんか?
いや、告白じゃあるまいし、そんな格式張って言うことではないだろ。
もっと軽い会話で自然と友達だよねみたいな空気感にするのが真のコミュ強だと、恋愛シミュレーションゲームで言っていた。
困ったな。こちらから振れる話題なんて天気の話題くらいだ。
「あっ、声掛けてもらったついでで悪いんだけど、今日の時間割りとか分かる? えーっと、何ちゃんだっけ?」
「私、藤村 杏です。今日の時間割りなら黒板の横に張り出されてますよ」
何でそんなことを聞くのかと不思議そうに頭を傾げる藤村ちゃん。
「あ、あぁ、そうだった、そうだった。ありがとうね藤村さん。おー、じゃなくて私は朝花 春陽。気軽に春陽って呼んで良いからね」
自己採点では120点をあげたいくらいの返答。
呼び方を提示することで今後も仲良くしたいですよーと暗に伝えている高等テクニック。
「分かりました、春陽……さん。私も杏で大丈夫ですよ」
流石に呼び捨てはハードルが高かったらしい。
でも、この感じからして嫌がられてはいなさそうだ。
とりあえず、これ以上深く踏み込み過ぎると距離を置かれてしまいかねない。
また後で話そうねと社交辞令のような言葉を言ってから、交友関係を今後の課題に据えながら黒板横の掲示板へ退散した。
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