002話 女の子の朝は早い
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その日の目覚めは身に覚えのないアラームから始まった。
職に就いていない俺には決まった起床時間など無く、アラームとは縁遠い存在だ。
にも関わらず、枕元では携帯電話が鳴り続けている。
(うるさいなぁー。まだ寝てたいのに)
内心では悪態を吐きながら、携帯を手に取り時間を確認する。
時刻は午前7時丁度。
窓から入る日差しがうざったい。
こんな朝早くに目覚めるなんて、今日は雹でも降るのではないかと自分のことながらに思う。
はっきりとしない意識の中で目を擦りながら、身体に鞭を打って起き上がる。
「うーーん、あぁ、ダルッ」
お腹をぽりぽり掻きながら、ぼーっとしていると部屋の中に違和感を感じた。
その違和感に続くように、花のような良い匂いが鼻腔をくすぐる。
嗅いだことのない匂いに困惑しながら、部屋を観察するとやけに可愛らしいぬいぐるみが多くて、部屋の色もパステルピンクを基調としていた。
「まるで女の子の部屋みたいだな。……えっ? あっ!? えっ? 女の子の部屋?」
待て待て待て!
俺、知らない間に無職から犯罪者にジョブチェンジしてしまったのか!?
いや、いくら人間として終わっていても犯罪に手を出すのはいけないだろ……。
「てか、声もなんだか高いよな!?」
低すぎて人も近寄らないあの声ではなくて、透明感と明るさを感じさせる高音が耳を潤す。
このあり得ない現象に1つの仮説を立てる。
もしかすると今、俺は女の子になっているのではないかという。
仮説が正しいかどうかを立証する為にそーっと顔を下に向けてみる。
「お、おぉー。すげぇー。これが胸か」
推定Cカップ、いや、Dはあるのか?
そんな考察をしていると自分の物であるはずなのに、底知れぬ罪悪感が湧き立つ。
そして、意外にも興奮して揉んでみたいという感情は湧いてこなかった。
男だった時には少しくらい妄想していたはずなのに、いざ本当になってみると不思議なものだ。
「何すんなり受け入れてるんだよ! 朝起きたら女の子になってたなんて、アニメの世界じゃあるまいし」
部屋にあった姿見の下へ縋るように近付く。
頼むからこれは何かの冗談であってくれ。
願うことはそればかりだった。
「……これが今の俺。……可愛い」
昨日まで33歳だったおっさんが、ダークブラウンのボブにアホ毛をちょこんと生やしている。
肌は若さを彷彿とさせる瑞々しさがあり、手足から至る所まで全くムダ毛や毛穴がない。
パッチリとした目や通った鼻筋は、完璧過ぎるほどに可愛い。
今、着ているモコモコとしたピンクのパジャマも似合っているとしか言いようがなかった。
容姿も気にはなるが、もう1つだけ見過ごせないことがある。
鏡越しに自分を見た時に見えるステータス一覧についてだ。
【プロフィール】
名前:朝花 春陽
年齢:15歳
所属:雅乃高校 サッカー部(予定)
ポジション: 未定
【パラメータ】
シュート:40(才能:B)
オフェンス:32(才能:C)
フィジカル:29(才能:E)
ディフェンス:35(才能:D)
スピード:42(才能:B)
スタミナ:34(才能:D)
インテリジェンス:48(才能:C)
【EXスキル】
無限の可能性:EXスキル複数所持可、パラメータ上限無し
【スキル】
[シュートレンジ強化 LV1]、[ダブルタッチ LV3]、[隠密 LV1]
高1の入学式前後の段階でこのステータスは悪くない。
パラメータの基礎最大値が100で、才能がFからSの7段階評価なのを考えると寧ろ高水準か。
加えて、初期段階で通常スキル3つ持ちで、EXスキルは今まで見たことのない破格の性能だ。
パラメータを際限なく伸ばせる上に、1人1つのEXスキルを複数所持出来るのだから。
「エンジェルイレブンのステータス!?」
遅れて衝撃がやってくる。
冷静になって考えてみるとこれは『エンジェルイレブン』のステータスだ。
見慣れすぎて違和感が仕事をしてなかったが間違いない。
いつもプレイしていたあの世界に転生したとでも言うのか。
もし本当だとすると、可愛い美少女と知り合いになれるチャンスってことか。
ちょっとテンション上がってきた!
夢? 現実? ゲーム?
難しいことは一旦考えないことにして、夢でも現実でも良いから楽しむことにした。
その方が精神衛生上、都合が良いだろう。
本音を言えば、面白そうだから良いかという一言に尽きるけど。
だって、昨日まで33歳無職だぜ?
朝寝て、昼起きるを繰り返すだけの生命体より、この世界の方が何倍もやる気が出る。
ただでさえ、人生やり直し系は無双がテンプレなのに、エンジェルイレブンとかいう俺の庭でとなれば、無双×無双だしな。
「ちょっとお姉ちゃーん? 早くしないと学校遅刻しちゃうよー!」
俺をお姉ちゃんと呼ぶ妹らしき人物が、ノックもせずに部屋の扉を開けた。
鏡を食い入るように眺めているところを目撃されてしまう。
妹ちゃんは目が合うとハッとした顔で何かに気付く。
「お母さーん! お姉ちゃんがナルシストになった!」
「なってないから! てか、勝手に部屋入ってくんなよ!」
「どうしたのその口調。なんか男の子みたい。それにそんなツッコミするタイプだったっけ?」
「あは、あはは! 口調は冗談だよー。ツッコミは……ほら、高校デビューってやつ? 面白い人って思われた方が友達出来そうでしょ?」
「ふーん。なんか大変そうだね、高校生って」
苦笑いでそうなんだよと返すと、妹ちゃんは朝ごはん出来てるよとだけ言い残して部屋を出ていった。
なんとか誤魔化すことには成功したけど、冷や汗が止まらない。
性別が変わることに対して、軽く考え過ぎていた。
俺が朝花春陽という存在であると認識しておかないと今後、大きな事件に発展しそうだ。
口調、立ち振る舞いや一人称。
改善するのは容易ではないし、元々男だった俺としては気恥ずかしさもある。
無双転生開始早々、心が折れそうになるがグッと我慢。
俺の本領が発揮されるのは、学校が始まってからだ。
エンジェルイレブンの知識は誰にも負けないくらいあるからな。
「にしても、転生高校ガチャは大外れだな。主人公のいる天ノ宮学院や決勝戦常連校の立海山高校、他にも数多ある高校の中で雅乃とはな。チュートリアル高校じゃねーかよ」
がっくりと肩を落として、深いため息を吐く。
折角なら環境にも恵まれていて欲しかった。
これでは興醒めも良いところ。
一応、ストーリーの設定上では最弱である天ノ宮に次ぐ強さとされているが、主人公がいる都合上、天ノ宮はヴァルキリーカップ優勝を果たす。
そうなってくると実質的な最弱は雅乃ってことになる。
確立したプレイスタイルがある訳ではなく、個性強めの選手の寄せ集めで個人プレイが多い。
基本的には3年主体の編成で、後は2年生が2人だけ。
ここに俺が付け入ることは出来るだろうか。
監督もサッカーに興味があるって感じではなかったし、年功序列でスタメンが決まってる可能性はあるよな。
「その辺は実際に行って確認するしかないか。よっし、朝ご飯食べよーっと!」
考えるのは放棄して、腹ごしらえを優先することにした。
腹が減っては戦は出来ぬとよく言ったもんだからな。
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