神装真姫 晶たん②
「ねぇ晶ちゃん、文化祭の変装カフェ凄く楽しみだね!」
「えっ、うん・・・そう・・・だね・・・。」
「晶ちゃんはメイクもするの?」
「うん、まぁする予定。」
「えっ自分でできるの?」
「まぁ・・・ちょっとはできる・・・かな・・・。」
「えっほんと⁉すごいね!晶ちゃん!」
「ねぇ琴弧ちゃん、さっきからその・・・晶ちゃんって何?」
「えっ?・・・何って・・・晶くんの役作りだけど。」
「なんの?」
「女装の。」
「いらないよそんなの。余計なお世話だから。」
「そんなこと言わないで。お望ちゃんなんて特に気合入ってるんだから。お菓子くれるくらいだもん。晶ちゃんの衣装『だけ』は用意してくれるんでしょ。」
「おかしいでしょ、僕の衣装『だけ』特別に用意するって。」
「お望ちゃんの手作りかな?」
「そこまではわからないけど・・・どっちみち委員長は変だよ。普通じゃない。その証拠に潜香の奥にいや~な香りが潜んでる。」
「いや~な香り?」
「うん、何かこう、死者さえも操ってしまえそうな・・・」
「あはは!そんなわけないじゃん!」
「本当なんだって!自分の欲望に忠実に動いてる。周りの人間を意識することはない。」
「でもそのイメージだと灰色ではないような・・・」
「そこなんだよ。普段は大人しくしてるから周りには気付かれないんだ。だけど何か企んでる。話し方だってさ、僕と話す時だけ変でしょ。なんかこう・・・ねっとり舐め回すような話し方するじゃん。・・・はっ・・・まさか自分の欲望の捌け口として僕を・・・。」
「ねぇ晶ちゃん、どんな衣装になるかな⁉」
「全然聞いてないし・・・。」
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長方形のダイニングテーブルの長辺に向かい合って2脚ずつ椅子が並んでいる。悠香の隣に唯奈、その向かい側に晶が座るいつもの夕食の風景だ。
「そう言えば晶、そろそろ文化祭よね。クラスの出し物は決まった?」
「なんかね、今年の文化祭は中止だって。」
「息するように噓言わないの。見に行くから教えなさい。」
「あたしも行く~。」
「はぁ・・・。」
晶はため息をつき、不満を漏らすように口を開く。
「僕のクラスでは『変装カフェ』をやります。」
「何に変装するの?」
変装という言葉を聞いた途端、目をキラキラさせた唯奈が身を乗り出した。
「僕は・・・女装させられます・・・。」
「あらピッタリじゃない。」
「女装ってか土日のお兄ちゃんじゃん。いつも通りあたしが着せてあげたいんだけど。」
「毎週末そんな格好をしてないよ!家と学校じゃ全然感覚が違うの。それに服を用意する必要はないよ。」
「は?なんで?」
「クラス委員長が、ご丁寧に僕の衣装『だけ』は特別に用意してくれるんだってさ。」
「マジ⁉わかってんじゃん。じゃあやっぱあたしも服用意する。で、どっちが似合ってるか勝負ね。」
「勝手に話し進めないで。」
「それなら持ってく服にアイロンかけておくわよ。きっと似合うんじゃない?晶は顔『だけ』は整ってるし。」
「なんでお母さんも乗り気なの・・・。」
「お母さんナイス。衣装は決めておくから、当日まで秘密ね。」
「全然聞いてないし・・・。」