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プロローグ
今日もぼんやりとした輪郭の少女と時間を共に過ごすことで、日常と非日常のくっきりとした境目を認識する。
見覚えのある一鉢の香草をプレゼントする少女は、さながら少女が僕に好意を告白している光景だ。真っ直ぐに伸びた茎に凛とした花を見る時、日常で緊張した僕の心がほぐれていくはずが、なぜだろう、胸の奥が少しだけ痛くなるんだ。
もちろん香りはしない。いや、夢だからじゃない。この香草は普段は香りを放たない特別なもの。じゃあなぜ少女は僕にこの香草を・・・なぜ少女はこの香草を持っているんだ・・・。
「摘むってことは、奪うことじゃないんだよ。 本当はね・・・決断するってこと。」