真実・2
「彼女が亡くなる前は、別の親族が幽閉されていたと噂されている。最初に主導したのは現当主の父、つまり君の祖父だが……彼もいつの間にか屋敷から姿を消していて、行方知れずになっている」
不穏な口ぶりに三葉は青ざめる。
「ここ数年、剛蔵が正式に羽立野家を継いでから同居していた親族が行方不明になっている。十七年前君の父君もあの土蔵で亡くなった」
「っ!」
剛蔵は「神排」の手を借り、三葉両親の行方を追っていた。そして父と接触した剛蔵は「家が勘当を解いた」と嘘を吐いて呼び出したのである。
「剛蔵としては三葉さんと母君も呼び戻したかったのだろうけど、念のためまず父君が実家へ赴き……そのまま行方知れずとなった」
数年間の監禁の後、父は命を落とした。
母は父が戻らないのを怪しみ、生まれたばかりの三葉を連れて逃亡生活を送る。そして三葉が五歳の頃に母は流行病にかかって、当時働いていた機織り工場の勧めで入院し病死した。
その後、預けられていた寺に羽立野家の使いが来て、三葉を連れ戻したのだ。
「誰にも頼れず女手一つで君を羽立野家から守ったんだ。その苦労は計り知れない」
病死と言っても、これでは羽立野家に殺されたも同然だ。
「そこまで知っていて、どうして父を助けてくれなかったんですか!」
大神家は全ての神を奉る家の代表格だ。彼ならば父を救い出すことくらい簡単だっただろうと、三葉は詰め寄る。
だが弘城は顔色一つ変えず、あくまで冷静に三葉を諭す。
「――証拠がなかった。当主が戻ったらしいと噂は耳にしたけれど、本人から直接陳情がなければ無闇に他家の問題に介入はできないんだよ」
ここまで調べることができたもの、今の羽立野家の混乱に乗じたからだと弘城が続ける。
「でも……どうしてそんな酷い事……。叔父が親族の認めた相手と結婚すれば、継ぐ事になったのでしょう?」
神を奉る家は、血統を重んじる。
跡取りに相応しかったのは長子である父だ。だとしても妻にと望んだ母は身寄りがなく、羽立野家が当主の妻として反対するのは無理もない。
「君の父君が余りに頑なだったから、お節介な親族が母君とどうにかして一緒にしてやれる方法はないかと調べたらしい。その過程で君の母君が特殊な力を持っていると判明した」
「特殊な力?」
「稀にいるんだ。……神を奉る家系や神職でもなく、あやかしとも縁のない普通の人間が、何かを切っ掛けに神に愛される」
ちらと弘城が三葉の傍らに座る白狐に視線を向けた。
「羽立野家に残された神棚の管理をしていたからというだけで、狐が憑くのはあり得ないんだ。三葉さん、君が母君の血を強く継いでいる証だ」
「そんな……私は……力なんて、ない。です」




