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轢かれて死んで来世は楽しむぞ!と思ったらただの狐だった。 ep.15

再び、あの巨大な壁――リバティ・バリアの正門が見えてきた。

検問所には、以前私をぽいっとしたあの門番さんが、相変わらず鋭い目で入国者を見張っている。


(ふふん、驚かないでよ? あの時のおきつねさんが、こんな美少女になって戻ってきたんだから!)


私はわざとらしくフードを深く被り、ミステリアスな流れの旅人を演出して列に並んだ。

心臓が少しだけ速く打つ。でも、これは恐怖じゃない。これからの人間社会への期待だ。


いよいよ私の番が来た。


「次! ……あんた、見ない顔だな。フードを取れ」


門番の声が響く。私はゆっくりと、ドラマチックにフードを脱いだ。

白銀の髪が陽光を反射して輝き、その間から白くふかふかの耳がぴょこんと顔を出す。


「…………っ!?」


門番さんの目が、これでもかというほど見開かれた。

隣にいた若い門番も、手に持っていた槍を落としそうになっている。


「えっと……こんにちは。入国をお願いしたいんですけど、よろしいでしょうか?」


私は首を少しだけかしげ、特訓した通りの「あざとすぎない、けれど品のある微笑み」を投げかけた。

門番さんは、顔を少し赤めて咳払いを一つ。


「あ、ああ……。失礼した。あまりに珍しい……いや、綺麗な毛並みだったもんでな。通行証か、身分を証明できるものはあるか?」


(通行証! ……あ、そういえばそんなの持ってないや)


一瞬焦ったけれど、ここは想定内だ。

私は懐から、森で見つけた「魔力を帯びた綺麗な小石」を取り出し、お守りのように見せた。


「すみません、北の果てから流れてきたばかりで、この街の証明書は持っていなくて。でも、悪い目的はありません。ただ、美味しいものを食べて、この街の歴史を知りたいだけなんです」


嘘は言っていない。ノースフォレストは間違いなく北の果てだ。

門番さんは私の手元の石と、私の顔を交互に見て、最後には諦めたように肩をすくめた。


「北の……。まあいい、臨時通行証の発行手数料として、大銅貨二枚……だが、まあ、美人な客だ。ギルドに登録するまでの分はサービスしてやる」


(えっ、サービス!? やっぱり美少女化、大成功じゃん!)


「ありがとうございます! おじさん、とっても優しいんですね」


「お、おじさんって言うな……。ほら、行け! お前もボケっとしてないで動け、全く……」


門番さんは照れ隠しに私を追い立て、私に見とれているであろう若い門番に活を入れてたけれど、その顔はどこか緩んでいた。私は軽く会釈をして、ついに、ついに正規の入国を果たした。


重厚な門を抜けると、そこには石畳の道と、立ち並ぶレンガ造りの建物。

そして、さっきよりもずっと濃い、焼きたてのパンとスパイスの香りが私を歓迎してくれた。


「……ついに、来た。ここが私の、第ニの人生のスタート地点!」


私はふわりと揺れる尻尾を隠すことなく、活気あふれる街の雑踏へと踏み出した。

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