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轢かれて死んで来世は楽しむぞ!と思ったらただの狐だった。 ep.11

森を抜け、なだらかな丘を越えた先。私の目に、ついにそれは飛び込んできた。


『あ……街だ! 人が住んでる場所だ!』


そこには、秩序立って並ぶ美しい田畑と、荷馬車が絶え間なく行き交う立派な街道が見えた。

遠目に見ても、ノースフォレストのあの寂れた死の気配とは無縁の、活気あふれる商業都市だ。


(農業も商業もかなり進んでる。これなら美味しいものもたくさんありそうだし、私の正体についても何かしら情報が掴めるかも……って、ええっ!?)


喜び勇んで駆け寄ろうとした私の足が、ピタリと止まった。

街の周囲を囲む、あまりにも不釣り合いなほど**「巨大で分厚い外壁」**。


『……いやいや、待って。壁、デカすぎない!?』


その高さ、推定数十メートル。

のどかな田園風景の中に、それこそ「人類を守る最後の一線」と言わんばかりの威圧感でそびえ立っている。


(このパターン……どこかで見たことあるぞ。壁の向こうから超大型の何かが覗き込んできたり、壁の正体が実はガチガチに固まった巨人だったり……しないよね!?)


前世のマンガ知識が脳内で警鐘を鳴らす。

これほどまでの防壁が必要だということは、この「イージーモード」に見える土地にも、それ相応の「ヤバい脅威」が存在するということだ。


『……ヘルプ、あの壁。あれ何? 中に誰か埋まってたりしない?』


【リバティ・バリア(自由の防壁)】

数百年前の魔王大戦時に建造された魔導障壁の土台。

現在は主に、周辺に生息する飛行型魔獣の侵入防止と、都市の権威を示す象徴として機能している。

※中に巨人は埋まっていない。純粋な石材と魔導回路の塊である。


『……よかった、埋まってないんだね!』


中に何もいないという鑑定結果に、私は心底ホッと胸をなでおろした。

どうやら、あの壁は「過去の遺物」に近いもののようだ。とはいえ、あの巨大な壁を維持できるだけの技術と魔力が、この街にはあるということ。


『さて……どうやって入ろう。私は今、どこからどう見ても一匹の白いキツネ。正面から「こんにちは!」って入ったら、門番に捕まって毛皮にされちゃうよね……?』



『……よし。まずは、あの壁の「隙間」か、警備が薄い場所を探そう。隠密行動なら、この十数日の修行で得意分野になってるしね!』


私は姿勢を低くし、田畑のあぜ道に沿って、巨大な壁の麓へと忍び寄った。


壁の近くまで忍び寄り、物陰から「人族」の観察を始めて数時間。

私の瞳は、期待と興奮でキラキラと輝いていた。


『……尊い。尊すぎる……!!』


そこを行き交う人々の中に、いたのだ。ピコピコと動く三角の耳、そして服の隙間から覗くふさふさの尻尾を持つ者たちが!


(エルフやドワーフみたいな「THE・ファンタジー」な種族は見当たらないけど、ケモミミが存在する……。これはオタクとして最高のご褒美だよ!)


ただ、観察を続けるうちに、ある奇妙な共通点に気がついた。


『……あれ? あの人たちの耳、どっかで見たことあるな』


ケモミミといっても多種多様なはずなのに、この街で見かけるのは、厚い毛に覆われた耳や、がっしりとした太い尻尾を持つ者ばかり。そう、まるで極寒の地に住む野生動物のような特徴を備えているのだ。


『もしかして……。この世界の亜人って、野生動物が世代を重ねて進化して、最終的に人の形になった……とか?』


期待に胸を膨らませて自分の尻尾を見つめる。


『よし、潜入のモチベーションが爆上がりしたよ! この街で情報を集めて、ついでに美味しいものを食べるんだ!』


観察の結果、壁の近くに荷馬車専用の搬入口があるのを見つけた。

門番たちはケモミミの兵士。彼らの鋭い鼻に嗅ぎつかれないよう、私は「風」の魔法を使って自分の匂いを消す気流を纏った。


『……作戦名、「ふさふさ密入国」。いっくよー!』


私は積み荷の陰に滑り込み、巨大な壁の向こう側――夢の「ケモミミパラダイス」へと足を踏み入れた。

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