邪教聖女~婚約破棄を期待したスパダリが散る話
貴族学園のパーティー会場、ここ中央には、殿下の後ろにかくまわれているピンク色の髪が目立つ女子生徒と、黒髪の釣り目の令嬢が対峙していた。
「エリザベス!断罪をする!男爵令嬢サリーをイジメたな!」
「そーです。あたし、謝ってくれたら、それで良いんです!」
ガヤガヤガヤ~~~~
・・・フフフフ、私はゲイリー、32歳、神官にして、この学園のカウンセラーだ。
王太子ヘンドリックとは叔父、甥の関係にあたる。
公爵令嬢エリザベスは、王宮に来た時、初めて、恋に落ちた。以来、教会に入り。独身を貫いている。
これは、チャンスだ。さあ、婚約破棄をしろ。そしたら、私が優しく慰めてやる。
勿論、イジメは、私が仕組んだのだ。
私のファンを使ってな。
サリーは、聖女であるが、前世持ちだ。前世持ちでピンクブロンド、乱を起こすから、聖女なのに、王族の婚約者にはなれない。ククク、教会にもほとんど来ない。というか見たことない。トカゲの尻尾切りには丁度いい。
「はい、イジメは、事実です。グスン、グスン、私、サリー様の、筆箱を、窓から投げ捨てました・・・殿下と近すぎたから、つい」
「キャー、もう、これで、水に流したのだからね。終わりだからね!」
「そうか、エリザベス、すまない。しかし、一応、サリーは聖女だ。扱いには、注意するように、陛下から言われているのだ」
「まあ、そうでしたの?」
「ああ、いろいろ『アレ』だから、扱いに注意だ。だから、君に関わらせたくなかった。いずれ、王妃教育で学ぶ」
「分かりましたわ」
「いいか、皆の者、サリーは、聖女だ。しかも、いろいろ『アレ』な聖女だ。だから、察して、男爵令嬢だからと、軽んじて、邪な心で、接しないように!」
ザワザワザワ~~~
「「「はい」」」
「察しろか、貴族社会なら、近づくなということか」
「私、知っている。階段に突き飛ばした子、おかしくなっているって」
【ちょっと、待てい!意味不明だ!】
「ゲイリー様・・・どうされたのですか?」
「そー、そー、ゲイリー、こんな時こそ、あんた、仕事するのだからね!カウンセラーなんだからね」
「じゃかしい。敬称をつけろ」
「フン、教会じゃ、聖女の方が偉いんだからね!」
「そうじゃないだろう。噴水に落とされたり。階段から落とされたりしなかったか?」
「ええ、サリー、分からなーい!それって、ゲイリーの仕業なの?聖女に危害を加える奴は、基本死刑だからね!実行犯は・・・今ごろ、死んでいるかもしれないんだからねっ!」
「ほざけ!」
・・・そう言えば、最近、ファンが、カウンセラー室に来ない。
いや、まさか。そう言えば・・・・、サリーは神殿では見たことがない。聖女なのに、
「ええい。神獣召喚、フェンリル!よ。出でよ!エリザベスをさらい。我と逃避行をするのだ!」
「伯父上、乱心されたか?」
「キャア、殿下!」
ボム!
【ガルルルルルーーー!】
「「「キャアアアーーーーー」」」
「逃げろーーーーーー!」
「エリザベスは渡さない!」
「殿下!」
・・・フ、見せつけて、くれるね。じゃあ、私も、少し、力を見せるか?
「ちょいと、楽士の方、琵琶を借りるよ」
「え、はい」
ボロン~ボロン~~ボロン~~
【ギィイ!】
「善因善果、悪因悪果、因果応報!」
「エリザベスよ。耳を塞げ」
「殿下」
「あれは、邪教だ。サリーは、前世、邪教徒だったのだ!」
「サリー様が?」
ボロン、ボロン~~
「そうさ。私は、邪教持ち!邪教聖女さ。だから、神殿にはいけない宿命さ!」
「なら、邪教を打ち破って見せよう!フェンリル、まずは、その聖女をやれ!」
【ガオー!】
ボロン!ボロン!ボロン!
「ビートは、一分間に57回、ああ!始めよう!邪教聖女の歌!」
ボロン!ボロン!ボロン!
【術式!東京大戦果研究会!祝、欧州でカルト扱い!てか、カルト!グレート勤行会!幹部との約束!】
南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経! 南無妙法蓮華経!
ピカッ!
当たりは、光に包まれた。
【キャイン!】
ボム!
「フェンリルが消えた!け、結界だ!」
「な、何故だ!この不気味な経文は!結界をしみてくる!」
☆☆☆
『佐里ちゃん~、啓蒙月間よ。大戦果報告新聞を取りたいお友達を紹介して』
『え~、もう、家で5部ほど、取っているよ~』
『マイ機関誌よ!家族一人、一部当たり前なのだから!』
『これって、ノルマだよ』
『キーーーーー!ノルマじゃありません。幹部である私との約束です!』
『ヒィ、分かりました。じゃあ、一部』
『佐里ちゃん~、頑張って、更に頑張るのが、真心、御信心よ!』
『じゃあ、二部・・・』
『そう、三ヶ月だけでいいからね。これって、強制じゃないわよ!』
・・・何だ。映像が頭に、浮かぶ。
サリーが、目の前にいる・・・
「これって、強制じゃないのだからね。エリザベス様に、告白するのだからね!」
「こ、告白、でも、年の差、気持悪くないか?エリザベスの方から、好き!好き!にならんと、世間が許してくれないぞ」
「フフフフフ、天重軽受、重きを転じて軽く受ける。告白しなければ、もっと、心が、大変なことになるのだからねっ。告白して、気持悪いと言われるだけだからねっ!そうしないと、ストーカーになっちゃうからね」
「そ、そうか」
「これは、マインドコントロールじゃなくて、サリーとの約束だからねっ」
「ああ、分かったぞ。応援してくれるか?」
「見守るのだからね!」
「エリザベスよ。5歳の時に、王宮で見かけたときから、恋に落ちた。結婚をしてくれ!!」
【ヒィ、断りますわ!殿下!】
「伯父上!エリザは私の婚約者です。渡しません。5歳って、ロリコンですか?」
「ア~ハハハハハ、振られた!それも、ヨシ!」
「ドンマイだからね!」
「ア~ハハハハハハ~~~~」
「キャハハハハなのだからね!」
☆神殿
「さあ、懺悔!言ってみよう。一日一回、ノルマじゃないぞ!」
「ゲイリー!神殿クビだ!」
ゲイリーは、神殿をクビになり。市井にくだり。それなりに、やっているそうだ。
もし、聖女なのに、男爵令嬢の者がいたら、邪教持ちなのかもしれない。
最後までお読み頂き有難うございました。