表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/36

第3話 天音の過去と亮の決意

STTというのは「サウンドテーブルテニス」の略で視覚障害者が行う卓球の競技です


球の中に金属の球が4つ入っていて、その音を頼りにプレーします。 静寂の中でプレーする姿から会場には緊張感が漂います

高等部唯一の2年生である東条天音から発せられた凶変の言葉に4人は圧倒されていた

身長も俺よりも小さくまだ中学生と見間違えるほどのあどけなさをもつ天音先輩だか今は誰の言葉をうけつけないぐらい周囲を抑制していった

 



※ ※ ※




私は生まれつき目が見えない

私が新潟盲学校に入学したのは幼稚部のとき

親が共働きで親が面倒を見きれなかったからだという

幼稚部の頃から同級生という子はいなかった

一人っ子だったから1人がさみしいってこともなかったがやっぱりさみしかった

小学部に入っても同級の子はおらず 高学年からは一つ下の生意気な男子が休み時間にからかってくるので私はいつも1人でよく遊びをして楽しんでいた 

そんな中 小学部の担任の先生が暇つぶしのために教えてくれたのがSTT(サウンドテーブルテニスだった

いつも1人で遊んでいた私にとってはじめての対面で遊ぶ遊び それがサウンドテーブルというスポーツだった


サーブァーからの掛け声 そして 「はい」という掛け合い

それだけで「ひとりじゃない!」

そんな気持ちになった気がした

最初はピンポン玉がどこにあるか全然わからなかったけど

毎日やっていくうちにだんだんと打てるようになってきて1年もしたら速い球もとれるようになってきた

スマッシュするラケットの感触 パチン! という音がたまらなく好きで何度もやった

少しすると大会に出るようになってきた

いつも先生とだったから同学年の生徒と話せて試合できるだけで嬉しい!って思った

初出場でいきなり優勝しちゃったのは自分でもびっくりしちゃったけど、

この大会の優勝で拍車がかかり さらに大会で出場するようになって優勝するようになった

でもうちの盲学校の卓球部は私しかしなかったため団体戦はいつも不出場だったのだ


私は次第に団体に出場したい!


そんな気持ちでいっぱいになっていった

そういった気持ちを抑えつつ新しい入部者来ないまま

そのような状況が高等部1年生の冬まで続いた



ある日 1人体育館でサーブ練習をしていると1人の生徒が話しかけてくれた 


 「おーい!1人で何やってるんだ」


聞いたことない生徒からの質問に困惑しつつもその声の主は靴の音を鳴らしながら私のいる場所へとたどり着く

「1人で卓球してるの?」

天音「あのー どちら様ですか?


「ハハハ!名前を名乗らなきゃだよな」


「私の名前は夕月 遥 高等部の2年生さ」


天音「2年生?ってことは先輩ですか!?すみません!」


中学部の頃は卓球の勧誘をしていたが高等部は幼い頃に大きな線からいじめを受けていたせいか怖く勧誘できずにいたのだ


遥「一緒に卓球やろうか?私は高校生から盲学校に来てるんだけど 中学校の頃は普通のネットを超えてやる卓球を部活でしていたからそこそこ強いと思うぞ!」


その言葉をきいて心の底から嬉しくて私は感涙した



遥「へぇ~なんで泣くかな」



「 一緒にやろう・・・」



その言葉に私は救われたんだ



天音「うん!一緒にやりたいです!」




※ ※ ※




天音「私たち卓球部は3年生の遥先輩と私の2人しかいないの!だからお願い!卓球部に入って!」



裕也「2人いれば卓球できんだろ俺はグランドソフト部がいいんだよ それに天音! 先輩 個人戦に出ればいいだろ!」


裕也の言葉にさらに感情が高まる


天音「団体戦に出場じゃないとダメなの!」


荒げた声に想像以上に教室がその声に残響する


それがまずいと思ったのか黒板に振り返りしみじみと声を発した


天音「チームだから1人でだと学校名がつかないの、団体戦じゃないと」



天音「グランドソフトボール部はチームで戦ってる

卓球部はその舞台にも立たせてくれないの?」




♪キーンコーンカーンコーン♪





その問いかけを虚しく下校のチャイムがなった

入学式は午前中までで午後の授業はなかった



天音先輩は悲しそうな顔をしながら残念そうに教室をあとにするのだった



天音があとにした教室はなんともいえない静寂につつまれていた

それを打ち消すように

俺はある決心をした




「俺!STTしたい!」



俺の一言に3人は視線が俺1点に集まった




俺は天音の熱弁に感動しSTTに入部することを決めたのであった







下校時間になり生徒たちはそれぞれの帰路につく


一方 俺はというと寄宿舎での生活だ

学校から家までの道が遠い生徒は土日祝日を抜いた一週間 寄宿舎での生活をすることになる


その寄宿舎へ行く通り道 裕也と出会った


裕也も寄宿舎生で中学の頃から入舎しているみたいだ


亮「さっきの話どう思う?伊藤さん」

裕也「タメ口でいいよ あと裕也でイイから」


「まさか天音がそこまで必死だったとはな 小学部から一緒にいるけど びっくりしたな」


裕也「俺も入りたいけど実際のところいうと卓球と野球の掛け持ちってめちゃくちゃ難しいんだよな 練習もあるし めちゃくちゃハードなんだよ」



裕也「亮《りょう》はどうするんだ?ホントにサウンドテーブルテニスやりたいのか?」……


亮「俺はSTTがやりたい」


裕也「そうか、頑張れよ!


寄宿舎に付くと親が自分の部屋になる番号のお部屋で勉強机や椅子などをいれる作業をしていてくれた

 

お母さん「とりあえずこれでOkね!私はかえるわよ

亮これなら3年間頑張りなさい」


亮「あ…頑張るよ」


部屋は一人部屋だった

部屋番号を確認すると裕也は隣室みたいだ

 

これから期待と不安の入り混じった高校生活がはじまった










次回は鈴木絢音目線で書いていきます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ