中学校のとき
俺が中学生 まだ目の病気もそんなに進行していないときの話だ
「部長 練習お願いします!)
「お!やるか!」
俺には憧れの先輩 部長がいた その部長は俺みたいな卓球が弱いやつにも優しく接してくれる まるで太陽のような存在だった
ある日の練習 俺はいつものように部員とラリーをしていると急にピンポン玉が何個にもみえる現象に頭を悩ませていた
「すごい!どんな変化球ですか?」
「は?回転かけてないし普通のボールだぞ?)
おかしかったのは俺の目のほうだったのだ
生まれつきの緑内障で慣れていたが唐突に訪れるこの乱視は反射神経が求められる卓球では致命的なものだったのだ
乱視によってラリーさえまともにできなくなった俺に対して練習相手などつくもはずもない
次第に俺は孤立していったのであった
そんなときでも手を差し伸べてくれたのは部員だった
「なんだ、どうしたんだ?」っと優しい声をかける部長の優しさに涙がこぼれる
(もう、部長には迷惑をかけたくない)
「俺 卓球部やめようと思ってます」
「どうして!あんなに熱心に卓球してたのに」
「部長には迷惑をかけられない 今の僕じゃラリーもろくに打てないし 試合おろか練習にだってついていけない!」
「何いってんだよ!なんでお前いつも自分でゴールを設定するんだよ!」
「違うんです!もう俺の目は」
「先天性緑内障?」
「はい、生まれつき目が見えにくくて 最近乱視もひどくなってきてピンポン玉がナックルボールみたいに揺れるんです」
「そうなのか」
軽蔑されただろうか こんな奴をいつまでも卓球部として置いてくれるはずもない むしろ部長も俺がいなくなって清々するだろうか
「見え方ってどんな感じなんだ」
「え?えっと左目はみえます でも右目はかすれてる感じでもう飛んでくるピンポン玉はほは打てるかどうかって感じです」
「わかった 左側のバッグハンドで勝てる戦術を考えようか」
「え?俺卓球部に居て いいんですか?」
「すっげー面白そうじゃんか!視覚障害者が健常者を倒すなんて 」
「そんなの無理ですって!健常者に試合で勝つなんて!」
「必ず亮みたいな境遇を持った選手が必ず現れる 過去を見渡しても希望がないのならお前がその希望となって誰かを照らせるってことだろ?」
「はい!」
俺はその発言に思わず感涙してしまった
中学2年生の先輩との最後の大会
緑内障の進行は俺に想像するよりもはやくとどまることを知らない
矯正ができないその視力は両目とも0.08ともはや卓球をできるほどの目ではなかった
「亮!頑張れよ!」
俺はこの大会もって卓球部を引退すると決めていた 部長は全中 全国中学校卓球大会があるのに俺のために1年間も指導してくれた
そんな部長のためにもここで1勝したい!たったそれだけだった
相手は中学1年で中学校からだからまだはじめて3ヶ月ぐらいの新人だ
(はじめて3ヶ月の1年生に負けてたまるか!)
俺の最初で最後の中学校の卓球大会がはじまろうとしていた




