第16話 夏の終わり
夏休みが終わり 9月になったというのにまだ夏の猛暑が教室にまで太陽の光が散々と放っていた
二学がはじまってもまるで授業に集中できないまま俺は青天の美空をただみつめていた
南ちゃんのまさかの豹変ぶりに心が傷つきながらも俺は野球協会に彼女が八百長をしていることを伝えた
その結果 南ちゃんは決勝戦に出場できず決まっていた全国選抜盲学校野球大会も出場停止となった
南ちゃんは高校3年生最後の大会の北信越選抜に選ばれないというのは彼女にとって大きな処分となり 今後も野球大会は出場出来なくなってしまった
南ちゃんの代役として新潟の山田先輩が全国に選ばれ不本意だが山田先輩は3年連続で全国大会出場となったのであった
新潟盲学校とはいうと新潟は被害者にも関わらずなにも待遇や再試合やり直しもなかったという
南ちゃんの行動は異質だったが協会は新潟にも少し落ち度はあっただろうということらしい
新潟盲学校は決勝戦にも出場することもできず結局夏は終わったのだった
(南ちゃん 大丈夫だろうか)
確かに南ちゃんはしてはいけないことをやった しかし、彼女はかわいい 男とはそういう単純な生き物でやはりかわいいには誰も勝てないのだ
「あーぁ」
担任の加藤先生が今は専門の教科である世界史の授業を行っている
メソポタミア文明?ヒッタイト? 意味がわからない なぜ 今更になって昔の世界の歴史を勉強しなければならないのだ そんな余裕があったら 恋愛の勉強でも教えてもらいたいものである
「はい、次、亮君」
「え?あ!はい」
完全に授業を聞き逃していた 生徒は俺を含め4人のみ 当てられる可能性が大きい
わからないので正直に答えるしかない
「わ、わかりません」
「ちゃっと!亮君!夏休みが終わってから全然よ!期末テストもあるんだからちゃんと勉強しなさいよ!」
「す、すみません」
(南ちゃんが気になって勉強に集中出来ない)
授業も終わり放課後 俺は毎日練習をやっていた野球大会もなくなり 特にやることもなくいま虚無の心で廊下を歩いていると俺は前に人がいるのが全く気づけなかった
(ドタン」
「あ!悪い!ごめん!」
彼女には悪いことをしたここは盲学校 全盲の生徒もたくさんいる よく注視しなければと気を落とす
「ねぇ、なんでそんなに冴えない顔してんの?」
(え?)
前に歩いていたのは2先生の天音先輩だった
(冴えない顔?彼女は全盲だ つまり目が見えないのに俺の顔なんてわかるのか?」
冴えない顔にイラッとした俺は先輩を見下すような態度で彼女をみてしまった
「ねぇ、?今、私が目がみえないのになんで君が冴えない顔してるってわかるかって顔してるね」
「え?な、なんでわかんの?」
天音「はぁ~当たり前でしょ?そんな不機嫌な声出してたら誰だってわかるよ 表情はわからないけど息遣いとか笑い声とかでなんとなくわかるの!だから亮君!笑顔になってね!❤」
「亮君!亮君!野球大会は残念だったけど 君はまだ落ち込んでる暇なんかないよね!」
「え?なんですか?」
「サウンドテーブルテニスがあるんだから!」
放課後 サウンドテーブルテニスの部活動がはじまるとのことだったので天音先輩と体育館に向かうことになった
天音「サウンドテーブルテニス楽しみだねーー!」
純粋無垢なその笑顔は本当に心の底からサウンドテーブルテニスがしたくてたまらないんだって感じだ
彼女は多分 純粋で純粋を負けずにその小さな日常さえ立ち向かいその夢をつかんできたのだろう
天音「亮君 手を繋ごっか?」
「え?手を繋ぐんですか?」
天音「うん!これは誘導だから!」
南ちゃんも手を繋ごうと言ってきたことはあった
しかしそれは「純粋」とは真逆で南ちゃんの作戦で色仕掛けであった でも天音先輩はそんなことはない まるで子供のように無邪気さだった
「誘導って天音先輩は学校内では白状を使わなくても大丈夫なんですよね?」
天音「うん!全然大丈夫!」
「じゃ、なんで?」
天音「え?亮君の手を繋ぎたい からかな?❤」
俺は目の前にいる天使の先輩に恋をしてしまったのかもしれない




