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第22話 推しとは。

あの後、俺はイキシアさんの切り抜き動画や過去のアーカイブを見ていた。


ゲーム配信や、雑談配信、コラボなどできる限りたくさんの配信を見た。

もちろん、全てをゆっくり見る時間は無いので飛ばし飛ばしにだが、結構参考になったと思う。


カレンが言っていたようになかなかキャラの

濃ゆいリスナーや、面白いコメントを残していくリスナーもいた。

そして、なんとなくだがこのままいけば自分も面白いコメントをすることができそうな気がしてきた。


「………何変な顔してんの…?」


「ぅん??」


いきなり声をかけられた方を見ると、そこには

形容詞し難い表情で俺を見るさゆりがいた。


「……え?大丈夫?鏡見る?すごいよ。笑える。」


「いやいや!見ねえよ!


……ちょ、辞めてっ!なんで持ってんのっ?!鏡をこっちに向けないでっ!」


何故かさゆりは手鏡を持っていて、俺の方へ向けてくる。

やたらとニヤニヤしながら対抗する手を掻い潜って、手鏡が俺を襲う。


しばらくそんな攻防を続け、さゆりは満足したように


「ふふ。そんなに抵抗しなくても変な顔は

佑が携帯を見てた時だけだよ。

口角をこーんな風に上げてねっ!」


言いながら、絶対誇張してるだろと思うほどのアホ面を晒した。


「はいはい。俺はどうせ変な顔ですよ。

んで?どうしたんだ?」


俺はイキシアさんの配信画面を閉じて、携帯をポケットに入れた。


「えー?そんなに卑屈にならなくていいのにー。


ご飯だよ。ご飯。さっきから呼んでるのに来ないんだから。さゆり困っちゃう!」


「え?珍し。さゆりがごはんを作るなんて…。

今日は赤飯だな。」


「いやもうご飯作ったから!」


冗談はさておき、さゆりがご飯を作るのはかなり珍しい。

ここまで見てきたら分かると思うが、基本的に

さゆりは人任せというか、俺に甘えてるところがある。


何をするにも佑佑〜って俺を呼んでいる印象だ。

そんなさゆりがどうして……。


「……ねぇ。今度はちょっと失礼なこと考えてる気がする…。


もう!早く来てよ!せっかく作ったのに冷めちゃう!」


いつまでも驚いている俺に痺れを切らしたのか、さゆりは俺の背を押してリビングに向かった。


やがてリビングに到着すると、俺は食卓の上を見て、驚かされた。


「ふふーん!どう?すごいでしょ。」


「…あぁ。本当に。すごい。」


そこには様々な美味しそうな料理が並んでいたのだ。

それも俺が見たことがない物ばかり。


「……どうしたんだよ。 

お前、こんなことするタイプじゃないだろ?

…はっ!まさかさゆりの偽物っ?!」


「………ぅえーーー。

…佑酷いよぉー。私はこれでも頑張ったのにー。」


あまりにも棒。こんな可哀想に思わないのも初めて。


「……友達が教えてくれたの。

私でも作れるような簡単な料理を。


そしたらちょっと試したくなってさ。

若干作りすぎちゃった感もありますけども……。」


食べ切れるかな……。と料理の方を見ながら呟くさゆり。


いや、それで本当にできちゃうなんて、

さゆり。あんた結構センスあるよ。多分。

知らんけど。


しかし、本当に美味しそうだ。

これならいくら食べてもお腹がいっぱいに

ならないだろうな。だってさゆりが作ってくれたんだもの。残すわけがない。


「…食べる?」


「うん。」


早速席につき、いただきますをする。


まずはこの、初見です。の料理を食べてみる。


 ……おいひい。


なんというか、1番近いとすればシチューみたいな甘さを感じる。中にはパプリカや玉ねぎ、オリーブなどが入っているが、それぞれの味がお互いを邪魔することなく上手い具合にまとまっている。


「………ど、どうでしょうか…。」


さゆりが一口も手をつけずに俺の様子を窺っている。

俺はさゆりがこんなにも美味しい料理を作ってくれたことと、心配そうにこちらを見るさゆりに愛おしさを感じ、微笑ましい気持ちになった。


「うん。めっちゃ美味い。毎日食べれる。

天才。三つ星シェフ。大好き。」


いつのまにか、Vtuberにするコメントのような感想を口にしていた。


「…あはっ。

ありがとう。……良かった。」


さゆりはホッとしたような表情をした後、自分で作った料理を食べ始めた。


うん。本当に美味しいよ。


しばらくはお互い無言で食べ進め、味を楽しんでいた。すると、その沈黙を破るように


「あ、てかさ。さっきちらっと見たんだけど、佑ってイキシアちゃん見てるの?」


「え…。」


「ほら、私がずーっと呼びかけてたのに、

ずーっとイキシアちゃんの動画見てたじゃん。」


えぇ…。どうしてちょっと嫌味みたいに言うのん?


「お、おう。一応、見てるよ。

てか、さゆりも知ってるんだな。イキシアさん。」


「ん。まぁね。結構有名な人だし。


…で?好きなの?推してるの?」


推してる……か。改めてそう言われれば、

どうなんだろう。


別に声はキレイだから聞いてて心地良いな。

とは思う。

しかし、次のイキシアさんの配信は

いつかな…。どんなことをSNSで呟いているのかな…。


とかはあまり気にならない。これが気になるからといって推してる。ってことにはならないのかもしれないけど、いまいち判断が難しい。


「……?

あれ?すぐに推してるよって言うかと思ったのに。案外そうでもない感じ?」


あまりに俺が喋らないので、さゆりから話を続けた。


「ふーん。あんなに動画見てたりしたのに、

推してないんだ。へー。」


そう言うさゆりは、何故か嬉しそうな顔をしていた。












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