転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [1面]
□ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 1面 ]
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 2面 ]
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 最終面 ]
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ エピローグ ]
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死後の世界で神様(アニメっぽい風貌の美少女)に会ったオレは、迷わず転生を希望した。剣と魔法の世界でチートとか。ハーレム展開でキャッキャウフフとか。恋愛ゲームでモッテモテとか。よくわかんないけどTSして悪役令嬢モノだとか、そんなテンプレのどれかなんだろうなぁ、と漠然と思っていたのだ。
考えてみれば至極簡単だった、たいした知識もないのに世界の命運を握ったり、碌な身体能力もないのに女の子のおっぱいを握ったり、都合良く、物語の主人公になれるわけもなかった。
周囲を見渡す。 ……狭い空間だ。
オレが前世で見たときは32×16ドットの機体だった。
『地球の命運は君達にかかっている、健闘を祈る!!』
たった5秒だけ最後に届いた通信。
これは知らない通信だ。
プッ! という切断音を掻き消し、コックピットの後方で炉が唸る。即座に電磁式のマスドライバーが駆動した耳障りな音が機体を揺さぶった。よく知っている、これがゲーム開始前の演出だった。
これから向かう先は宇宙、お先真っ暗な第二の人生。
「思ってたんと違 ……ぅグ!!」
直後、強烈なGで、全身をシートへ押し付けられた。
その顛末を、ざっくり説明すれば、こうだ ――――
未来に産まれた、ただの転生、輪廻転生だった。
地球は宇宙人に支配されて、ディストピアになっていた。
前世の記憶を持ち越しているだけの凡人、拍子抜けした。
それでも気を取り直して、やり直し人生を奮闘したのだ。
そうしたらレジスタンスにスカウトされた。
数機だけ残された戦闘機に、鹵獲した敵の技術を転用した特別あつらえの機体。これで敵中枢へ乗り込んで駐留拠点を破壊する。そこらじゅう穴だらけの楽観的な作戦に、「よくやるよ」と失笑していたのだ。
そこに置いてあった一台のシミュレーター。
博士は「解析された敵の攻撃パターンが反映されている」と鼻高々に自慢した、その画面にはビックリ仰天だった。
子供の頃に熱中したシューティングゲームそのままの敵キャラの形状、まったく同じ攻撃パターン。真横から見ていた画面が、自分視点になっただけ。
左右からも敵が来る。
左右にも避けられる。
条件は、五分と五分。
……というか、一方的にこちらが有利だった。
模擬戦で、エースパイロットになっちゃって。
正直、内心では「マズイ」と思っていたんだ。
あっ! ……血液が?!
・
・
・
・
―――― 少し、気を失っていたらしい。
強制的な加速からは開放されて、今は文字通りの浮遊。
頭は朦朧としている。
無遠慮に防空識別圏へ踏み込んだら、堕とされて当然。
一番最初の一機目だったから相手が反応できなかった。
運良くすり抜けたようだ。
現時点で、すでに僚機は粗方レーダーから消えている。
真っ直ぐ昇って、大気圏から頭を出した。
いい的になってしまった、と言うことか。
「いいマトになった?」
ハッとしてレバーを引きつつペダルを踏みこみ、上昇する。
上方から敵の偵察ドローンが8機、編隊を組み迫っている。
トリガーを引いて8発撃ち、当たったと確信し下方を見る。
次が来ている、同様に縦一列の8機編隊。
「なんでこうなった!」
操縦桿を握り締め、猛烈に後悔している。
これが片手剣なら、どんなに良かったか。
次は最初の編隊と同じ高度だ、上を見る。
ん?
「おっと! アレか?」
敵の残骸に、ひときわ目立つ装置。中央部が明滅している!
機体をぶつけるぐらいの気持ちで接近、道すがら敵から奪い取った兵器を素早くリンクし同調させて己の糧とする、燃料の補給にもなる。単機で活動しつつ事実上無限に敵地を侵攻し続けられる、それがこの戦闘機の最大の特徴だ。
それにしても ――――
「宇宙では音がしないって言ったの、誰だろうな」
ここが『奴等』の領域、ということも関係しているのか。
空気で満たされたコックピットは、想像以上に騒々しい。
敵を倒せばデブリと共に希薄でも星間物質が押し寄せる。
機体を直接揺さぶり、音となって響く。
と。
『 キ ャ ―― ッ !! 』
絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
転生モノなら活躍の場面が開始する合図だ。
ただし、スピーカーから聞こえてきている。
あれは? ……紅一点の女性パイロットか。
顔は覚えていない、なにしろフルフェイスのヘルメットに実用一点張りのパイロットスーツが普段着だったから。
巨大ロボに襲われている、モンスターとかじゃない、服装が乱れたりしてソソるシーンが映ったりない液晶を溜息混じりに見詰めている。
さて、どうしたものか。
壁に追い詰められて、墜落する一歩手前だ。
敵 キ ャ ラ の パ タ ー ン 的 に 。
「ったく。 思ってたんと違うぞ!」
チラリとレーダーを見る、おいおい、残ってるのはコイツだけ?
そりゃそうか、思っていたより遥かにバンバン撃ってくるんだ。
最近流行りの『ハードモードに転生』かよ。
ザコ共が、盛大に実体弾をバラ撒いてくる。
いくらなんでも設定が厳しすぎる気がする。
奪取した『反射レーザー』でも、試しに使ってみるか……。
コンソールに繋がれた画面を左手でタップして兵装を切り替える。
少々移動して位置を合わせていくと、ピピピッ!という電子音と共に、半透明のターゲットスコープが敵を続々と捕らえていく。
「ここだッ!」
トリガーを絞り込むと、強烈なレーザー光が迸った。
炉の出力が一時的に弱まり、機体が失速気味になる。
自動的に正常値へ立て直していく。
発射されたのは、不自然なほど遅い光線兵器だった。
通路を次々と反射しながら、奥へ奥へと進んでいく。
その軌跡を、ぼんやり眺めている。
「っええ?!」
射線上の敵は、かすっただけで火を噴いた。
僚機へ迫る巨大ロボットを、溶断していく。
「俺TUEEE。 な、わけないだろ」
想像していたより強烈すぎる破壊力。
慌てて画面で確認。
残量たった46%? ……一発撃って何%使った?!
ゼロになったら墜落する、確認しておくべきだった。
ゲームと全く同じ仕様ではない、ということらしい。
これはマズイことになった。
『 貴方は! 』
「そこに浮いてる燃料、オレにくれ!」
『 も、もちろん 』
「悪い、助かるッ!」
『 こちらこそ? 』
女を助けて、セコすぎるだろぉ?
それにしても誰得なんだ、ここは宇宙空間で、お色気シーンは死に直結。お互い戦闘機に乗りっぱなし。この先この娘と色恋沙汰の展開なんて期待できない。これ本当に転生モノなのかよ~!
どっちにしても、この兵器は燃費がヤベェな?!
「これ以上フォローできないからな」
『 も、もちろん 』
「だって2Pプレイしたことねぇし」
『 2Pプレイ? 』
「こっちのハナシだ」
シューティングゲームの世界なんだから。
基本、孤独な闘いだ。
『 あ、あれは! 』
「あぁ。1面ボスの御出座しだ」
特殊金属の気密性を備えたゲートが、こちらを誘うように自動的に開いていく。この先に入れば後戻りはできない。ここから先はシミュレーションデータでも空白になっていて、そのデータを送信した勇者は誰一人戻らなかったらしいが、彼らの驚きは想像を絶していただろう。
目の前に現れたのは、巨大な異形の生物。
戦闘用に遺伝子改造された生命体だった。
『 こんな……! 』
そこから先は声にもならないか。
じゃ「オレは?」と聞かれたら。
ちょっぴり感動してる?
それにしても、スペース自体は広大なんだけど。
戦闘機で飛び回るには狭すぎる閉鎖された空間。
ほとんど無重力、しかし完全に静止できるわけではない。
「空間座標を設定し相対位置で操縦できるよう切り替えろ」
『 あ、今すぐ! 』
「じゃそこで5秒だけ凌いでくれ」
『 5秒って?! 』
「……行ってくるぞ」
弱点は知っている、青くて丸い『コア』と呼ばれる部分。
しかし、オレの目にはイカニモなんだけど気付く人間は少数派だろうし、偶然、勘の良いパイロットがいたとしても、トライ&エラーの不可能な世界だ。
あの隙間に機体を滑り込ませたら、安地。
素早く安全地帯に陣取って撃ち込むだけ。
こんな発想ができる人間は、存在しない。
博士は必要性を疑問視していたが強引に作らせた、コイツの出番。
操縦桿を慎重に押し倒して位置取りし、レバースイッチのカバーを左手の親指で押し上げながら、一気にペダルを踏み込み機体を急速に前進させるッ!!
そう。 ココだ。
冷めた思考で、僅かに親指に力を入れると、「カチッ!」乾いた音。
逆噴射後に絶対固定の姿勢制御へ移行、融合炉の音が静かになった。
トリガーを数回引くと、ガラスが砕けるのに似た音が響く。
はい、一丁あがり♪
『 うそ。 ……的確に相手の弱点を? 』
「ああ。知ってたら、なんてことないから」
『 たった5秒で、す、凄いっ! 』
「この先、あんまり期待すんなよ?」
『 これなら敵の拠点も! 』
巨大な敵を瞬殺したんだ。
まぁ『このままいけば』と、その気持ちはわかる。
そりゃ、オレだって、まんざら悪い気分じゃない。
1面クリアして、女の子に褒められる、新鮮ッ!!
でも、これは無理ゲーだ。
戦闘経験もなく宇宙に繰り出した、おのぼりさん。
片やパターンを知ってるだけ、片や初見の2P側。
周囲で爆発、敵基地は電源を喪失し暗転していく。
目の前にポッカリ空いた穴から外へ出ると再び宇宙空間、そしてドローン8機の編成で6、適当に撃ってくるのは威力偵察、『基地制圧に成功した地球側の兵力を調べにきた』デコイ役。
こちらの攻撃を観察している者が、別にいるだろう。
アイテムを置いていくために出てきたわけじゃない。
たぶんだけど。
懐事情は厳しい、兵站と割り切って墜とすしかない。
続いてギリギリ爆風を逃れてきた僚機に声をかける。
「えーと、名前は?」
『 右側の城と書いて、右城です 』
2Pは、右側の席が通例だ。
格闘ゲームなら向井さんか?
殴る蹴るよりマシな出会いと思って諦めよう。
「右城、良い名だ。 ……そこのアイテム取れ」
『 え? これ後ろしか攻撃できないんですけど~! 』
「タイミングはコッチから指示する」
『 はいっ! 了解で~すっ!! 』
声が弾んでるな?
やめてくれよ……
「頼むから期待しないでくれ」
『 だって、現に一人でほとんどの 』
「こっからノーミス? ありねぇから」
『 の ~ み す ? 』
「これは、こっちのハナシ」
『 え? ……どっち? 』
「地面スレスレに下降しろ、後方4機来る」
『 は、はいっ!! 』
「左右どっちか、知らないけどな……」
『 本当に来た? やりましたっ! 』
「だろうな」
マズイ、天然系ヒロインか?
前方に集中できて、助かってるけど。
どこまでフォローできるか自信無い。
なによりの問題は ――――
「そりゃ、前半面は倒してりゃゴリ押しで進めるかもしれねぇけど。一発でも被弾したら撃墜されて死亡するんだよ、ライフ制なんかの救済措置が導入される以前のシビアな世界なんだから」
『 ら い ふ せ い …… 以前の世界? 』
「それこそゲームオーバーだろ」
『 でも、このままいけば~ 』
「最終面が激ムズでラスボス見たことねぇんだよ!!」
『 最終面…… ラ ス ボ ス って、なに? 』
「あ、いや……こっちのハナシ」
オレが転生してきた先は、至って普通に、未来の地球。
残機はゼロ、1UPアイテムは出ない、これも当然だ。
ん?
2面に巨大ロボなんて出たか?
妙に遠くて、やたら速い、ここからじゃ間に合わない。
お互い攻撃できない意味不明なルート、やり過ごそう。
巨大ロボ? ……右城狙いかッ!!
逡巡するより先に武装を切り替えて、トリガーを引く。
反射する地形の無い場所で撃った3方向に枝分かれする『反射レーザー』のうち1本が敵の進路を塞いだ。巨大ロボがレーザー光に突っ込んで、両断されていく。かろうじて成功、しかし、こんな調子でいつまで続けられる?
「何枚小銭を突っ込んだと思ってんだ、好き勝手に動き回るんじゃねぇよ」
『は、はいぃいぃ?!』
「や、こっちのハナシ」
急いで近くに来た、後ろをついて来いとは……なんだ?
望遠、拡大? なるほど、この画面を。
あれは、訓練で乗った試作型?
博士が造ったニコイチ戦闘機、プリシュティナ、とか呼ばれていた。
ゲームにはなかった要素、2P側の機体は赤く塗った色違いだった。
前世で覚えたパターンにジワジワとズレが生じている。
ゲームとも、シミュレーターとも実戦は微妙に違った。
2Pプレイの弊害とは思えない。先程の無人偵察機の情報を反映したんだろう、敵の攻撃は苛烈を極めていくが……これすらも必然だ。いつでも人生は一度きり、いつだって一発勝負だった。
□ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 1面 ]
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