五話 天使の正体……
今回のお話は一部を書き始めた時から早く書きたかった展開です!
ここからが急展開の始まりですので是非とも読み進めていただきたい!
「祐也さん、ちょっといいですか?」
「渚さん?どうしたの?」
「あの、これ昨日焼いてみたんですけどこの前のお礼に良かったら……」
「あーー……ユイさん本当にやっちゃったかーー」
「ユイさん?」
ゲームの中の天使ことユイさん、俺は日々の疲れをハマっているケータイゲームのユイというプレイヤーに癒してもらっていた。
同じ職場の渚さん、俺は彼女に思いを寄せていて進まない関係にやきもきしながらも幸せな日々をおくっていた。
そして今回のこれ……
昨日ユイさんから職場の年上の人へのアプローチの仕方を聞かれて「クッキーでも渡したらいいじゃない?」と答えた俺、そして今日、俺に渚さんが渡してきたこのクッキー……いやいや、偶然な、はずはないだろう。しかしまさか渚さんがゲーム世界での天使、ユイさんだったなんて…俺はどうしたら?
「おーい、祐也さーん、もしもーし」
「あ、ごめんね ちょっとまだ頭が回ってないみたいだ……」
「もしかして迷惑でしたか?」
「いや、ものすごく嬉しいよ! お礼なんていいって言ったのに気を使わせてごめんね」
「なら良かったです! 知り合いに年上の人へのお礼を聞いたらクッキーとかどうかと言われましてw」
「あー……そうなんだ! その知り合いセンスあるね! 本当!」
間違いなくユイさんだ…でもまだ早まるには情報が少なすぎる、ここまできて偶然なんて確率は限りなくゼロに近いがゼロではない以上は確証に変わるまで探りを入れてみるしかない。
その後、始まった営業はいつにも増して暇だったわけだが俺の頭の中は常に満員状態だった。
「渚さんこの前は慌てて帰ったけど彼氏との約束でもあった?」
「か、彼氏! 私、彼氏なんて居ませんよ…… ちょっとやらないといけない事があって」
彼氏は居ないと……頭の中で新たな渚さんの情報を仕入れてメモをすると同時に渚さん=ユイさんという推測にまた一歩近づく事となった。
今日は本当に暇で渚さんは予定よりも早く帰ることになった。
「では店長、祐也さん! お先に失礼します」
「渚、悪いなー お疲れ様ー」
「お疲れ様……でした」
とりあえず今日の所はこの辺でとりあえず頭を休ませようすでに、パンク寸前だった俺は渚さんが帰るという状態に初めて安堵した。この事を店長に相談しようとも思ったのだが自分でもバカバカしいうえに状況の整理できてない今、相談すらまともに出来る気がしなかった。
仕事が終わり帰り道でも一人頭を抱えながら考え続けた。
「ああもう! 一人で考えても答えなんて出るかよ!」
家に帰り着きベットの上で横になっていると桜からの電話がきた……
「桜か?なんだ……」
「兄さん? なんだかテンション低くない?w」
俺の心境に気づくあたり、さすがは妹なのだが完全に面白がっているようで少しイラッときた。
「用がないなら切るぞ」
「もうごめんってば〜」
「じゃあな!……いやちょっと待った」
「兄さん?」
一人で考えていても出るはずのない答えにどうしたものかと思っていたがちょうどいいこの際、誰でも良かったし桜ならそこそこゲームの知識もあるだろう、ダメ元で相談してみるか。
「実はお前に相談があってな……バカバカしい話なんだが聞いてくれ」
「別にいいけど、兄さん何があったの?」
俺は笑われる覚悟のうえでユイさんは渚さんではないかそしてユイさんが同じ職場の年上に好意を持っていること俺が渚さんに好意を持っている事を説明した。
「やば……そうなったか……」
「桜ー聞いてるか?」
「あ、うん! 兄さんの悩みは分かったよ!」
「もういっそ本人に確認とるのがいいのかな?」
「それはダメ!!! そもそも違ったら兄さんはただの気持ち悪い人だよ!」
桜に笑われる事はなかったのだがやはり確認をとるのは、まだやめたほうがいいなと思った。それにしても気持ち悪いか……
「兄さん! 相談の途中で悪いんだけど私、急用を思い出したからこれで切るね! 後、間違っても本人に確認しない事! わかった?」
「ああ、分かったよ」
相談内容を聞いただけで慌てて電話を切る桜……結局、俺はどうしたらいいんだろ。
「そうだ! 何も渚さんがユイさんならリアルで探りを入れなくてもゲームですればいいじゃないか!」
我ながら名案だ、おそらくユイさんは俺の事を知らないだろうしゲームの中の方が安全でもある。
さっそくケータイでゲームを起動したが、ユイさんはログインしておらず無駄足となった。ゲームをするような余裕もなく俺はそのままログアウトしてうだうだ考えながら眠りについた。
それから数日の間、渚さんに探りを入れるもののこれといった情報は引き出せずにいた、そしてユイさんはギルドグループへしばらくインできませんとだけ書き残し。ログインしなくなった。
最近は恒例とすらなりつつあるユイさん=渚さんの推測をしながらゲームアプリを開いた、何度考えても答えなど出ないのだが俺にとっては電脳世界の天使がリアルでも俺の天使だったという事になるかも知れず、渚さんが俺に好意を抱いてる事にもなるので考えずにはいられなかった。
「あ……ヘヴィさんお久しぶりです〜」
「あ! ユイさん、リアルの方で何かあったんですか?」
久しぶりにユイさんに会えた事に喜びつつもさりげなく探りを入れる事にした。
「まぁ〜 ちょっとごたついてましてw」
「そうだったんですねー」
流石に何があったんですか?とまで聞けず、とりあえずはユイさんと二人で新エリアへレベリングをしに行く事にした今日は俺達以外に誰も居ないようでチャンスはまだまだありそうだ。
「最近は素材集めばかりだったのでレベリングなんて久しぶりですねー」
「そうですねw いつもお手伝いありがとうございます」
そんなたわいのない会話を挟みながら新エリアへと向かった。
以前ドラゴンを倒し、解放した新エリアは鉱山跡地をモチーフにした設計のようで迷路のように広がる多数の道を両脇に並べられてあるライトを頼りに奥へ奥へと進んだ。
「ユイさん、この前の年上の人とはその後どうですか?」
「……それはですね…」
細い道ばかりだった洞窟で少しひらけた場所に出たその時だった、俺達が通ってきた道が音をたてて落ちてきた岩に塞がれた。
「なんだ! これ!」
「ヘヴィさん! 何か来ます!」
「ウォーーーオーー!!!」
奥の方から巨大なモンスターが地面の根本を両手に持ち、こちらに歩いてきた。どうやらさっきの岩はこいつが投げてきたようだ。
「ヘヴィさん、このモンスター低確率でこのエリアに出現するレアモンスターです……私も人から聞いた話なのですが……」
「くそっ! このタイミングでかよ!」
二本の根本を両手に持ち、オークをさらに凶悪にしたような見た目のモンスターだが体長がオークのそれとは比べ物にならなかった。五、六人でパーティーを組んでいたなら遭遇に喜んだのだろうが今は二人でユイさんは完全にサポート系だ、分が悪すぎる……
「とにかくユイさんはサポートお願いします!」
「わ、わかりました!」
俺も二人で倒せるとは思ってないのだがやられてしまうと死亡ペナルティーとして経験値の三十パーセントをもっていかれる、こうなった以上ただでやられるのは気に入らない。
「かかってこいよ! 腕の一本くらいは持っていってやるからな!」
それからの戦闘はとても激しいものになった、敵の攻撃を盾で弾きながら根本を持っている腕を斬りつける。
「くそ、流石にきついか……」
「ヘヴィさん! 弱体化かけます!」
ユイさんが弱体化の歌を歌い出すと敵の動きが鈍くなりその場に膝をついた。
「今だ!」
チャンスを待っていた俺は敵の背中から生えてくる二本の腕に気付くのが遅れた。
「兄さん危ない!!」
俺はユイさんのかけた言葉と同時に新たに生えてきた、二本の腕に潰されて体力が底をついた。
息つく暇もなく俺はゲームを閉じ、慌てて電話をかけた……
「ユイさん……いや、桜……お前だったのか!」
「ヘヴィさん……ううん、兄さん……やられちゃったねw」
最後まで読んでいだだきありがとうございます!
前回のお話の後書きに書いた内容が伝わっていれば嬉しいですw
これが真実です!!
ゲームの中とリアルでの会話で彼女の伸ばし棒だけが、ーではなく、〜だったり他にもこれもそうかな?って点もありますので時間があれば最初から流し見してほしいと思います(^^)
毎度のことながら感想お待ちしておりますので是非!
構ってほしい今日この頃ですw