ある意味フリーダムな姉
雨は夕方にはやんで、綺麗な夕焼けと光を空から放っていた。私と夫の一服タイムの場所は、チラチラと雨が降ってくる程度で、灰皿も無事。ラッキーだったな。外階段を管理人さんが掃除をしてくれていた。マンション後ろ側にある自販機で、迷いながら「天然水」を買った。120円。隣の自販機を見たら、100円のビタミンウォーターらしき物があった。そっちにすれば良かったなぁ、と少し後悔し、アセロラ色のマイナーなビタミンウォーターも買って、自宅に戻った。
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姉との関係は、特に悪くもなく、特に良いわけではもなかったが。どちらかと言えば、悪いほうだった。学生の私と社会人の姉とは、生活リズムが違い、あまり話すこともなかったし。
ただ、昔から、本当に小さな頃から、私と姉は間違えられた。単に私のほうが身長が高かったからかもしれないし、可愛い顔の姉と比べて、いつも年齢より年上に見られる私の顔立ちのせいかもしれない。年子って、そんなもの?私はきっちり「妹」という立場になりたくて仕方なかった。本当はなりたくてたまらなかった。しっかり者、と言われることが哀しくて、鬱陶しくて「しっかり者はやめたい!」と願っていた。
子供の頃から今までのことで、はっきりと覚えていることが3つある。
1つは、私が小学1年生の初夏だ。母と姉と私で百貨店に出かけた。父が一緒でなかった理由は忘れた。(ま、それは良いとして)
母が私と姉に、リボンの付いた新しい麦わら帽子を買ってくれようとしていた。私は赤色に白色のドットのリボンが付いた麦わら帽子を選び、姉は青色に白色のドットのリボンが付いたの麦わら帽子を選んだ。ちょっとかぶらせてもらい、母が「うん、2人とも良いわね。サイズもちょうど良さそう」と確認してくれた。昔から、私は赤色で、姉は青色だった。なんなら、キャラクターも喧嘩しないように決めており、姉はキティーちゃんで、私はスヌーピーだった。赤色もスヌーピーも私は好きだから、異論はなかった。
母がお会計をしようと店員さんに声をかけると
「2人ともお似合いですね。可愛いです。お姉さんは小学5年生くらい?」私に向かって「お姉さん」な上に「小学1年生が小学5年生」って……
「違います。私が妹で、私は小学1年生です」
私は店員さんの目をはっきり見つめて話した。隣で姉はゲラゲラと笑っていた。
「年子なんですよ。なので、よく間違えられるんです」
母が取り繕うように、店員さんに話していた。母は、もうこの頃から、私が内心、傷付いていることを把握していた。
「申し訳ありません。お嬢ちゃん、ごめんなさいね」
店員さんも笑っていた。私は傷付いていたけれど、そんな風には見えないように、真っ直ぐ前を見ていた。
母がお会計をしながら
「このままかぶらせて帰宅しても大丈夫ですか?」
そう確認しながら、値札だけを外してもらい、私は首にゴムを引っかけて、赤色に白色のドットのリボンの麦わら帽子を引っ張ったり離したりしながら、そこを離れた。
「あんた、小学5年生だって。老けてるからだよ」
またもや、姉はゲラゲラ笑いながら、エスカレーターに乗った。
「うるさいなぁ…姉に見られないほうが恥ずかしくないの?」
私は姉に反論した。
「ほら、エスカレーターで喧嘩しないの。危ないでしょう。2人とも、新しい帽子なんだから、大切に使ってよ」
私も姉も、新しい帽子を買ってもらったから、喧嘩をやめた。危ないことはしたくない。エスカレーターで喧嘩なんてバカらしい。ぼんやり私はそう感じながら、傷付いたことを忘れようとしていた。
2つ目はそう、姉が小学4年生の冬のとき。