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独りになったのか?独りになりたいからなのか?

 目が覚めた。相変わらず短時間睡眠。窓に雨があたる音がする。雨は嫌いではない。でも頭痛がする。生温い空気よりはマシだけど。私は医者に処方してもらっているロキソニンを飲んだ。医者に処方してもらうロキソニンは、1日3回まで服用できるから有難い。夫も子供もいるし、何もしないわけにはいかないから。私の一服場所は、雨でもギリギリ大丈夫だな。そう、私の一服場所、とずっと書いてきたけれど、夫の一服場所でもある。


           ・


 はぁはぁと息があがる。改札口を走って通り抜け、歩いているうちに、だんだんと息が普通に戻っていく。泣きたかったわけではない。淡々とした「仕方ないや」という感情が込み上げる。「どっちでも」という言葉を使ったのは私だ。彼を責めることはできない。彼は鈍感じゃなくて、私に伝えるタイミングを見計らってくれていたのだ。ごめん。心の中で謝る。ただ、病気のことを理解してもらうのは難しく、私自身でさえ、まだ上手く理解できていないのだ。どう説明したら人に理解してもらえるのか、言葉が選べない。なるべくなるべく、わかりやすく言葉を並べられたら良いのに。それらができない語彙力。シンプルに伝えられたら良かったのに。できない自分が虚しい。そう、私は、虚しさを抱えているんだ。


 自宅に帰宅し、自室に入る。母が「夕ご飯はー?」と聞いていた。「食べてきたー」大きな声で嘘をつく。嘘をつくと、胸がちくりと痛む。私にも、良心というものがあるんだなぁ…とベッドにごろりと横になる。彼はどうしているだろう?彼は傷付いているだろうか?一方的に言葉をシャットアウトした自分が、またもやイヤになる。

 お風呂に入って、洗面所で髪の毛を乾かす。こんな日でも、お風呂に入るし、髪の毛も身体も洗うし、スキンケアもする。「失恋」っていうのかなぁ…こんな形でも。そんなことを考えていた。私は、別れる、別れた、となると、スパッと「さようなら別れ」しかしたことがなく、友達になるという方法の選択をしたことがなかった。経験不足ってことなのか?そんなことを考えていたら「電話だよー」と母の声が聞こえた。ちょうど髪の毛が乾いた瞬間で、ドライヤーを片付け自室の子機を取り上げた。


 「もしもし?」あ、相手が誰なのかを母に聞いていなかった。

「もしもし。おれだけど。今、時間大丈夫?」

「あ、うん。お風呂入ってた。時間は平気」

「さっきさ、悪かった。ごめんね。本当にごめんね」

「全然。いいよ、いいよ。こっちこそ、ごめんね」

「えーと…えーとさぁ……本当に恋愛として別れるの?」

「そうだね。理解するのも難しいだろうし、私もまだ上手く説明できないんだよ。ただ、共通の友達はいるし、大学でも電車でも会うだろうから…」

「誰か好きな人、いるの?」

「恋愛としての好きな人はいないよ。病気でいろいろ私も考えたり、大学のこととかもあるし。単に私のわがまま。もしかしたら、1度独りになりたいのかもね」

「ごめん。まだ病気のこと詳しく調べてないんだ。ただ、独りになって、大丈夫なの?本当に大丈夫?」

「んー……独りって言っても、友達はいるからねぇ」

「ちょっと提案して良い?きちんと調べるから。約束するから。それに薬のことにも何も言わないって約束する。だから、他の友達より、おれに頼ってくれない?大学とか電車で、ちょっと不安定になった時とか。あー、いやいや、他のことでも、なんだけど…どう?」

「……有難いけど、対等じゃなくなるじゃん。付き合っていた時と変わらなくなるじゃん」

「そう言われたらそうなんだけどさ。もっと早くに話しておけば良かったっていう、おれの罪悪感が…」

「そんなこと気にしなくて良いから。ほんとに。私からも上手く話せる自信がなかったしさ」

「うーー……じゃあさ、なんかあったり、不安定だったり、楽しいこととか嬉しいこと話したくなったり…こうやって電話したりとか。そういうのは、変わらないでくれない?」

「そうだねー……まぁ、女友達的な位置で良い?」

「そうそう、それ!そんな感じの関係。でも…おれ鈍感だからなぁ」

「そうだよね」

思わず、同時に笑ってしまった。彼はいつも「今、大丈夫?」とか「時間、平気?」とか言ってくれていた。その優しさに改めて触れた気がする。


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