パニック障害と薬
私の一服タイムのお気に入りは、カゴメの『グリーンスムージー』だ。昼夜逆転している、というのか?不眠症というのか?夜の23時頃に寝ても、1時半には目が覚めてしまう。現在、寝る前には、全部で10種類の薬を服用しているが、安定剤ばかりで、胃薬、睡眠薬も2種類服用していても起きてしまう。一時期は、目が覚めるとお酒を探して飲んでいたが(薬を服用している人はやっちゃダメ)、もともとが下戸なうえに、気持ち悪くなるので、すぐやめた。「もっとちゃんと眠れる薬を処方してくれー」と医者に伝えたいが言えない。どうして言えないのだろうか?
・
パニック障害と診断された私は、安定剤と呼ばれる薬をためらいもなく、帰宅してからプレーンヨーグルトを食べて、服用した。今回は落ち着いて、普段のヴォルビックで。部屋でゴロゴロしながらオザケンを聴いていたら、さっきまでの「心臓バクバク、遮断機ハンマーで壊したい」という状況が落ち着いた。ヤバイ。ヤバすぎる。安定剤という名の薬は、こんなにも効果があるのか!と感動すらした。もう、これがあれば大丈夫だ、と過剰にポジティブモード。アクティブモード。その日は、嬉しくて、よく眠れた。
翌日、卒論を自宅でやるか、大学でやるか迷いつつ、ゼミの先生に聞きたいことがあり、大学に行く準備をした。もちろん、薬を服用して。当時、付き合っていた彼に電話をし、彼も大学で勉強すると言うので、大学構内で待ち合わせの約束をした。
確かに電車に乗れた。遮断機の音も平気だった。少し眠いようなかんじはあった。それでも、今までよりマシだ。そう思っていたのに、長くは続かなかった。
翌週の通院は、落ち着いて5分前に到着。しかし、前の人か?前の前の人か?予約時間を過ぎても名前を呼ばれない。予約時間より早く到着しているのに「なんで呼ばれないんだよ!」と大声で怒鳴りたくなるくらいにイライラした。相変わらず、受付の女性は、はきはきとした大きな声だ。あれくらいの話し方で、今日は医者と話そうと決めた。
予約時間より15分遅れで名前を呼ばれた。ノックをし「失礼します。こんにちは。先週はありがとうございました」と、またもや頭をさげながら挨拶し、部屋に入る。「遅くなり、すみません。少しばたつきまして」そんなことは、正直、どうでも良い。いや、やっぱり良くない。「今日はもうあなたで終わりなので、ゆっくり話しましょう。調子はどうですか?」そういえば、待合室には、付き添いらしい人しかいなかった。予約時間ばかり気にしていたので、患者が自分だけとは気付けなかった。
「最初は、先週、処方していただいた安定剤を服用することで大丈夫だったのですが、最近、また心臓がバクバクするようになりました。食事もあまり食べられません」
「そうですか。うーん、そうだなぁ。もう1種類、薬を増やしてみますか?」
「あの…安定剤には依存性がありますか?作用の強い薬には、少し抵抗があります」
「今、処方している安定剤は、1日に6回まで服用できるほどの薬なんですね。ですから、離脱症状はほとんどありません。もう1種類、考えている薬は、安定剤ではなく、抗うつ剤になります」
「え?私、うつなんですか?」
「いえ、今は違います。抗うつ剤でも、パニック障害に効果が認められた薬です」
「はぁ、なるほど。ちなみに、私はうつでもあるのでしょうか?」
「いいえ。お話ししているかぎりですが、うつとは診断できません。しかし、パニック障害の方がうつ病になりやすい傾向はあります」
「……」
「真面目な人ほど、パニック障害やうつ病になりやすいんです。ご存知でしたか?」
「知りませんでした」
「今できることは、パニック障害を薬と上手く付き合いながら、少しずつ気楽に生活していくことが大切です」
「はい、自分なりにやってみます」
「そうですね。気持ちがラクになることを心がけていきましょう。あと、食事ですが。食べられなくて辛いですかね?」
「辛くはないですけど、体力が落ちてしまい…」
「先程、処方を考えているとお話しした、抗うつ剤には、食欲の回復も少し見込みがあると思うのですが、どうでしょうか?」
「あ、それであれば、その抗うつ剤と先週処方していただいた安定剤2種類をお願いします」
「はい、わかりました。では、安定剤2種類と抗うつ剤1種類を処方しますね。他に何かありますか?」
「……大丈夫です」
「次回は…どうしようかなぁ…2週間後にしてみましょうか。どうしても酷い時には、電話で予約を入れて下さい」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
「では、2週間後に。2週間後は、ご家族のこととか友人関係や大学生活をお話しできれば、と思っています」
「はい。次回もよろしくお願いします」
私の癖なのだろうか?きちんと頭を下げて退室した。
受付の女性のように、はきはきと大きな声では話せなかった。処方箋をもらいながら、心の中で、大丈夫大丈夫。良くなる良くなる。おまじないのように唱えた。