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研修期間の終わりと社会人になっていく実感

 空気が昨日の雨のせいか?もわっとしている。

もっと、スッキリした日々が続けばいいのに。

私は一服の時間に、自宅のアプローチでストレッチをしている。角部屋には、柵があり、アプローチとして使えるようになっている。アプローチから見える外には、ツツジが綺麗に咲き始めていた。

眠る前には、簡単なヨガとストレッチを続けている。

肩甲骨が肝心らしい。昨日の情報番組で知った。

ストレッチが終わったら、録画しておいた朝ドラを観よう。窪田正孝くんは、ずっと前から好きだ。

柳楽優弥くんも好き。私のストライクゾーンは、説明し難い。


           ・


 私はクォーターのクォーターだ。説明が難しい。

簡単に言えば、母方のひい祖父が外国人だった。

母方に似た私は小さな頃、髪の毛が細く茶色かった。

姉は父方に似ている。しっかりとした黒髪だ。

外で一緒に遊んでいるとお年寄りの知らない人から

「かわいそうね」と言われたことを覚えている。

何がかわいそうなのか?わからなかった。

お年寄りの人から見れば、茶色の髪の毛の私は

「かわいそう」な部類らしい。

小学3年生で初めて会った、ひい祖父は、骨格や鼻の高さが違った。初めて、外国人だ!と感じた。

母方の祖母の目の色はグリーンがかったグレーというのか。かなり色白だったし。

母もかなり明るい透きとおるような茶色の瞳に、はっきりとした顔立ちだ。そして、色白。

私はそれを受け継いで、瞳がかなり明るい茶色で色白だった。残念ながら、鼻は高くない。

それでも、髪の毛は切っていくうちに、黒髪になり、美容院でお願いし、カラーリングで光に当たったときにわかるくらいの茶色にしてもらっていた。

姉は変わらず、父方にどんどん似ていた。


 週末、やっと研修期間の休み。

髪の毛の色や瞳の色を思い出したのは、研修期間の身だしなみで

「髪の毛のカラーリングは、少し明るいくらいまでにしてください。化粧品コーナーはライトが沢山あります。光に当たって、明るさは増しますので、2トーンアップまでに。

そして、カラーコンタクトは禁止。しっかり守ってくだいね」

そう説明があり、資料に書き込んでいたからだ。


スキンケア製品の全ての資料とメイク製品の資料。

とにかく頭に入れることが多過ぎる。

「スキンケアは惜しみなく、サンプルをお試しいただいてから、購入に繋がるように。スキンケアのサンプルで必ずお試しいただき、肌悩みの改善効果を実感していただければ、現品購入に繋がります。お客様のお悩みや欲しいものは、いきなり現品購入ではなく、まず、充分にサンプルで納得いくまで使用していただきましょう。サンプルは、本当に沢山お渡ししてくださいね。スキンケアのサンプル欠品がないよう、きちんとここも大切さですから確認を忘れないでくださいね」


制服の着方にも説明があった。

「余計な物は付けずに、そのまま着こなしてくださいね。袖を折るのは1回だけです。ちょうど7分袖になるように作られていますから、お客様の顔に触れたり、タッチアップする時には、袖を折り、7分袖のほうがお客様にご迷惑をかけずに済みます。夏用は6月下旬からですが、生地は少し薄くなり、半袖です。すでに袖を折ったデザインですから、夏用はそのままで。どちらもインナーは透けませんから、インナーは好きなカラーで大丈夫です」

「夏用も冬用と同じサイズを送りますから、太らないでくださいね」

部屋中がみんなの笑い声や「えー困る」と言う声が響いた。

「一応、夏用は6月あたまに送りますから、サイズ変更の人は本社に電話連絡してくださいね」

私は、SサイズとMサイズの中間ぐらいだった。

「草野さん、どっちにしておく?胸があるから…Mサイズにしておきましょうが。Mサイズでも胸は少ししかゆとりがないし。ウエストが少しシェイプされているから、スタイルの良さもアピールできるわよ」

先生は笑いながら、一緒にサイズ選びに付き合ってくださった。

「ありがとうございます。では、Mサイズでお願いします」

「そうね。メンズのスキンケアやフレグランスもあるから、男性のお客様も期待できそう」

「先生、やめてくださいよー」

「ごめんなさい、冗談よ。でも、奥様や彼女のサプライズプレゼントに口紅やアイシャドウを購入しに来る、男性のお客様も実際にいらっしゃるからね」

「わかりました。まだまだ先ですが…私なりにきちんと学んだ接客を活かしたいと思います」


 毎晩、少しでも、接客用語やお辞儀の練習は続いていた。全ては売り場に立つ前に、きちんと身体で覚えていたいからだった。

 

 土曜日。研修期間より、かなり遅くに目覚めた。

目覚まし時計を設定しなかったからだ。

ケータイのアラームはうるさく感じ、止めてしまった。

「おはよう。って時間でもないか」

リビングに入り、まだあくびをしながら母に言う。

「おはよう。疲れているかんじよ。でもいきいきしてるようにも見えるわ」

「うーん…覚えることが沢山ありすぎて。来週は、実践研修になるの。相手が同じ研修の人だから緊張はないけど、研修期間が終わったら、お母さん相手に実践練習したい」

「わかったわ。私が時間のある時は協力するわ」

売り場に立つ前に、期間が空くことが今度はイヤになりつつあった。

「今日は?久しぶりに敦くんと会うの?」

「ううん。あつーとは明日の予定。今日は美容院予約してるから。私、ボブにしようと思って」

「あら、ずいぶん短くするのね」

「ん。だって、髪の毛も細かく決められているし。こんなに色々決められているって中学生以来だよ」

私が通っていた高校は、校則がゆるかった。

大学なんて、まして校則なんてないし、校内の喫煙場所や講義の時間くらいなもんだ。

7年もゆるい生活を過ごしていたことを改めて実感した。

母が作っておいてくれた、遅い朝ご飯を食べる。

朝ご飯というか、ブランチだな。

ごちそうさま、と伝え、食器を洗う。

あ、まだ顔も洗ってないや。

洗面所で丁寧に洗顔とスキンケア。

自室にカフェオレを持っていく。

自室の窓を開け、カフェオレと一緒に一服する。

フーッと息を吐けば、煙草の煙が風と流れていく。

今日は、短いボブにしてもらおう。前髪も短くして、ワックスで斜めにしてもらおうっと。

大学時代、色々髪型を変えたけれど、結局最終的にはロングヘアーだった。前髪を短くするのも久しぶりだ。

美容院に行く準備をし、丁寧にメイクをした。

トイレに行き、普段のカジュアルな格好で美容院に向かう。

「いらっしゃいませ」

もう何年も通っていたので、顔と名前を覚えてもらっていた。

チェーン店ではなく、個人店で、ゆったりとした雰囲気が好きだ。開店してから、私を含め、お客さんはかなり増えていると聞いていた。

いつも担当してくれている女性美容師が私の座ったソファーに来てくれた。

「こんにちは。いつもありがとうございます。本日はいかがなさいますか?」

電話で予約した際に、カットとカラーとは伝えていた。

「こんにちは。お久しぶりです。えーっと、カットとカラーなんですが…カラーはいつもの色で。光に当たったくらいでわかるくらいのアッシュ系を。カットは、前髪を短く厚めにして、前下がりのボブにしようかな、と」

「短くされるの、かなり久々ですね。前髪は、厚めに短くということですが、スタイリングはどんな仕上がりに?サイドは前下がりですね。どれくらいの長さにしましょうか?」

「前髪はワックスで斜めにセットできれば。短くお願いします。後ろは襟足ギリギリで、サイドの髪の毛を耳にかけた時、ちょうど同じ長さになるくらいに」

「かしこまりました。カットしながら、一緒に確認し、長さは決めていきましょうか」

「はい、お願いします」

シャンプーをし、カットに入る。時々、一緒に鏡で確認しながら、前髪の短い前下がりボブにしてもらう。

「カラーが終わりましたら、最終確認しますね」

カラーは暗いカラーなので、普通のカラーリングより短く終わった。あ、切ったから、短時間なのか?

洗い流してもらい、ブローをし、仕上がり前の最終確認のカットを丁寧に細かくしてもらう。

「いかがでしょうか?まだワックスをつけていませんので実際に触ってみて下さい」

自分の髪の毛を触って確認し、少し左側を軽くしてもらう。

納得がいったので、最後の洗い流しをしてもらった。

直線でブローをお願いし、前髪は左斜めにワックスでセットしてもらう。

うん。大丈夫だ。

「雰囲気も気持ちも変わりますね」

私は話しかけた。

「前髪をストレートにおろして、サイドを両耳にかけるとショートボブにも見えますよ」

なるほど。便利だ。

お会計をし、自分の荷物を受け取ると、担当の方がドアの外まで見送ってくれた。

「またお待ちしていますね。お気をつけて。ありがとうございました」

髪型を変えると…というか、美容院に行くだけでも気持ちが上がる。


そうか。私の仕事も同じことなんだ。

購入しなくても、行くだけで楽しんでいただいたり、ウキウキする気持ちになっていただく仕事なのだ。

今日、髪の毛を切って良かった、と改めて感じる。

その夜も、眠る前に接客用語を声に出し、お辞儀の練習もした。資料を読みつつ、眠くなり、また深く眠った。明日は、お昼前に彼が家に来る予定だった。


 翌日の日曜日。

父と母はドライブに出かけた。夕方前には帰宅する、とも。姉はデートらしい。姉もドライブだそう。姉の彼が車で迎えにきていたが、顔は見られなかった。

父と母には、自宅に彼が来ることをちゃんと伝えていた。本当はセルジオロッシの仕事用のプレーンな黒のヒールを買いに行く予定だったが、就活用に使っていたセルジオロッシのプレーンな黒のヒールを持っていたことを忘れていたのだ。だから、買い物には行かず、お互いの研修期間報告をする予定に変更した。

 チャイムが鳴る。メイクをし、着替えて、髪の毛をセットし、自室でカフェオレを飲みながら、窓を開けて、一服していた。急いで煙草を消し、玄関に行く。

「あつー。予定変更でごめんね」

「全然大丈夫。つーか、髪型が変わってる!似合うよ。前髪あり、が久々すぎて新鮮」

「まあまあ、早くあがってよ」

「お邪魔しまーす」

「カフェオレで良い?窓開けて一服してて」

「あれ、お父さんとお母さんは?」

「ほらうちはさ、日曜は必ず一緒に出掛けるから。ドライブだって。あつーが来ることは話してあるから」

「相変わらず仲良いな」

「うん。部屋で待ってて。カフェオレ持っていくから」

「じゃ遠慮なく」

インスタントコーヒーでカフェオレを作り、マグカップをお盆に乗せて自室に入った。

彼は窓を開けて、煙草を吸っていた。

「お待たせ」 

マグカップを渡す。

私も並んで部屋に置いたままのカフェオレと一緒に、煙草を箱から1本取り火をつけた。

ベランダに並んで座りながら、カフェオレと煙草って合うよね、と。

煙草を吸い終えると、大きなクッションに寄りかかりながら、研修の話をした。

彼は金曜で研修期間が終わっていた。

「おれ、店舗決まったよ」

「どこどこ?」

私の最寄駅から、約15分の場所だった。

「いいなー。近いじゃん」

「んー…良いんだか悪いんだか」

「近いほうが通勤ラクじゃん」

「ま、そうなんだけどねー。まめに異動はあるらしいからさ」

「そっちはどう?」

「うん、明日からの1週間は実践研修。すごいよー!もう覚えること多過ぎて、頭ん中、ぐるぐるするもん」

「なんつーか、綺麗になったな」

「髪型?」

「全体的な雰囲気」

「褒めてもなんもでないよー」

「いや、百貨店じゃん。どこの店舗に配属になっても」

「うん、そうだよ」

「休憩室とかで男にも会う機会があるじゃん」

「そりゃそうだね」

「ヤバイなーって。メーカー、男性用もあるじゃん」

「あるよー。あ、スキンケア買ってあげるね。少し安く買えるから」

「それは有難い。でもヤバイ」

「ヤバイってさっきからなんで?」

「他に狙われるってこと。マジやべぇな…」

「はぁー?私、たぶん、それどころじゃないと思うよ。仕事、しっかりやりたいってすごく思ってるもん」

「やっぱり研修期間って大切だな」

「ん。あつーだって、職場に綺麗な女性たちが沢山いるかもよ」

「おれは……お父さんたちの前でもはっきり伝えたからな。仕事第一。ま、仲良い雰囲気作りは大切だけどね」

「お互い、まずは仕事だよ、きっと」

「だな」


 実践研修が始まった。

朝、同じ電車内で、同じグループのケータイを交換した人に会った。

「おはよう」

「あ、おはよう」

「髪の毛切ったんだねー」

「うん…切っちゃった」

「すごく良い雰囲気。綺麗だなぁって見てたら、あ、同じグループの人じゃんって気付いてさ」

「ありがとう。やー照れる」

恥ずかしくて前髪を触った。

「なんで?すごく良いと本当に思うもん」

「照れる照れるって」

小声で話題変えようよー、と笑いながら話した。

 研修のビルに入る。

飲み物買っておこう、ついでに煙草も、と誘われて

飲み物を買い、一服していた。

先生が喫煙所に向かってきたので

「おはようございます」と挨拶をした。

「おはよう。今週もよろしくね」

「私たちこそ、よろしくお願いします」

先生が私を真っ直ぐ見つめていた。

煙草の煙をフーッと吐いて

「草野さんだわ。髪型変えたのね。似合うし、雰囲気もすごく素敵だわ。さっきから、草野さんに似てるなぁ…でも髪型違うから、草野さんに似てる人っていたかしら?って考えちゃった。で、やっぱり草野さんだなってね」

先生は自分を笑いながら話す。

「そんなに違いますか?清潔感、大丈夫でしょうか?」

「なんていうか、雰囲気がぐっと変わったわ。清潔感はもちろんあるし、とても綺麗よ」

「ね。ほら、私が言った通りじゃん!」

髪型を変えると指摘し合うのは、ごくごく普通のことだ。でも褒めてもらえるのは、やはり嬉しい。照れるけれど。

「もう少し時間があるから、ゆっくりしていてね。今日からまた、みっちり研修だから。メリハリは大切よ」

「はい。ありがとうございます」

2人同時に言った。

「良い先生だよね。綺麗でチャーミングだし」

「うん、研修指導の先生だけど、一緒に働きたいって思っちゃうもん」

「わかる、その気持ち!」

「ねー、そうだよね」


実践研修が始まる。

まずは、同じグループの人を相手に1人ずつ。

次に隣のグループの人たちと、同じく1人ずつ。

1人ずつ相手に感想を書き合って、交換する。

実践研修の1日目の今日は、スキンケア前の肌悩みチェックからだ。

shipsの紺色のアンサンブルのカーディガンを途中で脱いで、半袖だけにした。このほうがやりやすい。

先生は室内を歩きながら、アドバイスをしたり、じっと見つめてたり、とにかくゆっくり見て回ってくれていた。

 2日目と3日目は、スキンケアチェックにプラスして、サンプルをお渡しするレッスン。

4日目と最終日は、メイクのタッチアップレッスン。

スキンケア製品を簡単に言えば、春夏、秋冬と分かれており、また新製品が発売されれば、プッシュする。もちろん、サンプルからお渡しして、実感していただく。

メイク製品も春夏、秋冬によって、ファンデーションを変える。カラーも変化する。新製品は、春も夏も秋も冬も発売するし「コフレ」と言う名前で、スキンケアのセットやメイク製品のセット、スキンケアとメイク製品の合わせたセットなどが発売される。

「いつものを」

そうお客様から言われたら、そのお客様が普段使っている製品をカウンターに置き、新製品を紹介してみる。新製品と一緒に購入されることを狙っているからだ。もしくは、新製品に変更される場合も含まれる。

すべて、プッシュするタイミングを見ることが大切だと教育された。


 「研修期間、お疲れ様でした。みんなありがとう。大変かもしれませんが、とにかく夢中になることを目標にして下さいね。来週中には、研修レポートと配属先の店舗名、制服を送りますので、確認を忘れないように。制服は自宅で洗える生地ですし、しわにならないので常に綺麗なものを着てくださいね。連続勤務もありますから、制服は3枚ずつになります。

何か質問がある人いますか?遠慮なく、手を挙げて下さい。不安なく、店舗に行けるようにしましょう」

ざわざわとみんなが迷い出した。

「はい。店舗に挨拶に行っておいたほうが良いですか?」

手を挙げて質問したのは、私だ。

「正解。良いところに目をつけましたね。配属先の店舗は、必ず見に行って確認しておいてください。できれば挨拶をしておいたほうが良いですね。店舗によって違いますが…そうですね。平日の午前中か、平日の午後2時頃は基本的に挨拶しやすい時間帯だと思います」

「ありがとうございました」

私はすぐに時間帯をメモっておいた。

「他の質問はないですか?大丈夫であれば、スキンケアとメイク製品の配布に移りますよ」

そう。研修最終日は現在店舗に並んでいる製品の現品を貰って帰宅することになっていた。

もちろん、新製品が発売されるごとに現品を店舗で受け取る。新製品が発売される前に、自分できちんと使用し、自分なりに感じることをお客様にアピールするのだ。

自分が選んだスキンケア製品と全員が使う製品。

メイク製品は、アイシャドウを2セット、口紅を2本、リップライナーとチークを1つずつ、自分が好きなカラーを。アイライナーとアイブロウ、マスカラも自分が選んだ製品を1つずつ貰えた。

メーカーのショッパーにどんどんいれていく。

重い。でも、これだけもらえる分、やりがいは増した。


「ありがとうございました」

研修を担当してくださった先生にお礼を伝える。

「とても向いていると感じましたよ。大丈夫。ゆっくりで大丈夫だから、常に前に向かってね。本当にこちらこそ、ありがとう」

そっか。私、向いているのか。

確かに大変かもしれないけど、私なりにやってみる気持ちが表れていたかもしれない。


「重いねー。研修早かったね」

「うん、重い。あ、座ろうよ」

席が空いたので並んで座り、重いショッパーはお互いに抱えた。

「配属先店舗、気にならない?」

「なるよ、もちろん」

「メールしたりして励まし合おうね」

「うんうん。ありがとう」

同じ店舗にはならないだろう、たぶん。

でも、近くの店舗だったら…

そんなことを考えながら帰宅した。


「ただいまー」

「おかえり。お疲れ様」

「ありがとう。良い勉強になったよ」

「それなら良かったわ」

「お母さん、明日から、復習に付き合ってね」

「わかっているわ。大丈夫よ。なんなら、籐の教室の人にも付き合ってもらえるよう頼むわよ」

「有難いけど…緊張する」

「ま、お母さんに飽きたらでも良いしね」

母は強い協力者だ。

「そういえば、敦くんから電話があって、明後日うちで夕ご飯食べることにしたからね」

「え、メールすら届いてないけど…」

「良いじゃない。敦くん、もう働いているんだし。同じ、早番と遅番があるし休みもシフト制でしょう?」

「ま、それは同じだけどね」

「とにかく手を洗っていらっしゃい」

「うん、わかった」

イヤな予感がした。

研修が今日終わることは彼も知っている。

まさか…もしかして…

一緒に住む話だろうか?


やはりストッキングに慣れない。

ストッキングを脱ぐとホッとしてしまう。

面倒で嫌いだ!ストッキングなんて。

部屋着に着替え、もらったスキンケア製品とメイク製品を並べた。

これから私を作る大切な製品。

愛おしさすら感じる。




 


 


 

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