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  作者: ひじきとコロッケ
アンドロメダ銀河
37/60

裏事情と改造計画

「えーと……」


「『通話だといきなり着られてしまうかも知れないのでメッセージにしました』って、余計なお世話よ!」


 ゴロンとベッドの上で向きを変えて続きを読む。


「テロをやってる連中は……ドリスたちの王位継承争いでドリスとは別の勢力とつながりがあった……か」


 そしてややこしいことになっていた。


 元々惑星間の交流を止めさせたいテロリスト達と今いる惑星を改造してしまえと言う強硬派が手を組み、資金提供やら情報隠蔽などの裏工作をしていたらしい。


「強硬派の思想って、惑星間の交流を良く思わない考えと通じるところがあるのかしら……あ、そうか」


 強硬派の目標は、今の仮住まいのような状態を脱して、自分たちの惑星に作り替えること。それはすなわち、元々住んでいた種族を絶滅させる事。イコール……別々の惑星に住んでいた種族間の交流はなくなると言うこと。……でいいのだろうか?


「無理やりな理屈ねえ……」


 そしてもちろんドリスの考える、さらに他の惑星を探して移住なんてのは移住先に誰も住んでいない、無人惑星だったとしてもNGなんだろう。よくわからない理屈だが。


 そしてある時、宇宙連合のターミナル――惑星間交流の象徴と言っていいだろう――を強襲、爆破に成功した。ここ最近の中では最も大きな戦果であり、彼らの士気も高まったようなのだが……あの状況で生き残った者がいて、いろいろな情報が警備隊に流れた、という情報が飛び込んできたら、そりゃあ騒ぎになるだろう。情報提供者を殺せ、と言う程度には。


「はた迷惑な……」


 ドリスがシオンたちに接触してきたのは偶然もあるのだが、自分たちの王位継承争いに少し絡んでいるテロリストにどういうわけか狙われている新人トラベラーを助けたい。ただそれだけだったようである。



「と言うことで、何となく事情はつかめました、と」

「はあ……完全にとばっちりじゃないですか」

「そうね」

「シオン、その状況だと……」

「ナオ、そうなのよ」

「へ?何?」

「リサ、よく聞いて。どこの誰でもいいからテロリストを殲滅(せんめつ)してくれないと、私たち、ずっと狙われ続けるって事なのよ!」


 あ、リサが固まった。


 まあそうだよね。これからも狙われ続けるかも知れないって、そんな話聞いたらそうなるわよね。……私だってたっぷり二時間くらい固まってたから。


「とりあえず今後の方針を少し修正するわ」

「はあ……」

「……シャキッとして聞いてね?まず、トラベラーズの仕事は引き続き受けていきます。何もしなくても食費その他諸々(もろもろ)で出ていく訳だし、他の銀河へ渡るための費用も必要になるからね」

「はい」

「ただし、受け方を少し変えます」

「変える?」

「短距離のモノだけにします」

「短距離ですか」

「ええ」

「どうして?」

「安全のためよ」


 距離が離れていると、それだけで狙う機会が増えるし、狙われた時に近くのステーションへ連絡をしても、対応がどうしても遅れる。だが、近距離ならばどうか。ステーション周辺では警備隊が出動しやすいこともあって、そうそう狙われることはないだろう。そして、狙いやすい場所が少なければ少ないほど、狙われにくくなるはずだ……多分。


「まあ、何となくわかりました」

「そう?ありがと」

「それに、どの仕事を受けるかとかも今まで通り三人で相談して決めるんですよね?」

「それはもちろん」

「なら、何も問題ないです」

「ありがと」

「話はそれだけ?」

「ええ。解散、自由にしていいわ」

「はーい。あ、そうだ」

「何?」

「あの飴、何とかなるかも」

「……マジで?」


 リサが不敵な笑みを浮かべながら操縦室を出て行った。あの様子なら本当に何とかしそうだ。


「あ、そうだ、ナオ」

「はい」

「これなんだけど……」


 ゲートの壁をぶち抜いて出る、というのはある程度想定されているらしく、宇宙船はほとんど問題なかったのだが、ナオのセンサーの一部が故障してしまった。そのままでも他のセンサーで補えるのでそれほど問題は無いのだが、出来ればきちんと修理したい。だが、部品がない。そこで、代替品を探しまくっていたのだ。


「使えそうかな?」

「んー、仕様上は問題なさそうですが……」

「やっぱりインタフェースがネックか」

「ええ」


 川本の残した人工知能の性能制限の一つ、外部インタフェース機能の制限はかなり厳しい。ナオは比較的制限の緩い仕様となっているが、それでも性能の良いセンサーを接続しようとすると専用の回路を色々組まなければならない。


「んー、手持ちの互換品じゃ大きすぎて頭部に収まらないか」

「そうですね」

「はあ……もう少し他にないか探してみるわ」

「はい……でも、無理をしないでください」

「おっけ」


 それだけ話すとシオンは自室へ戻り、また考える。

 ナオの人工知能は何かを創造すると行った独創性はかなり抑えられていて、誰かの世話をするとか、手伝いをすると言ったことに特化している。しかも、そこには効率を追い求めるという概念を重視しておらず、状況によっては無駄なことも許容するというコンピュータにあるまじき処理をしている。


 タブレットを取り出し、一般には公開されていない映像データを呼び出す。ナオを見つけた時、そばに落ちていたメモリーチップに記録されていた映像データだ。


「この人工知能搭載アンドロイドは……今までで一番人間くさい反応をするようにしてみた」

「無駄、遊び、余裕……そういった、もしかしたら最適解に比べると効率が落ちるような要因を重視した判断をする」

「もちろん、誰かが傷ついたり、生命の危機に(ひん)したりしている時には最適解を考えるが、そうでない時はむしろ判断を誤ることもあるかも知れない」

「学習、成長していけば、それこそ何気ない会話が出来るようになるだろうし、冗談も言うようになるかも知れない」

「売るつもりもないから、こう言うのもアリかと思って作ったが……これはこれで面白い物が出来たと思う」


 人工知能が爆発的に売れてからは川本の収入は毎年のように増加して行ったそうだが、それまでの研究がこのような「無駄」「お遊び」が多かったり、結果が出るまでに時間がかかる物が多かったりしていたため、実は借金まみれだったらしい。全額返済できたのは亡くなる数年前で、その後も自由奔放な研究をしていたので、それほど多額の遺産は無かったと聞いたことがあった。


「ま、研究者ってそんなモンよね」


 映像が消えて真っ暗になったところで、再生を終了しようとしてふと手を止めた。なんでこれ、残り時間が二時間(・・・)もあるんだろう?今まで気付かなかったけど……

少し早送り……出来ない?ん?そんなバカな。もう一度……んんん?再生位置を調整するバーも動かせない。どういうこと?


 どうせ暇だし、何となく興味もわいたのでボリュームを上げて気付きやすくして放置することにした。多分何か仕掛けをしたんだろうが……ただの映像データでどうやったら出来るのかわからないけど。


「さて、ここまで待ち続けた暇人にご褒美だ」


 残り時間十分ほどのところで、突然映像が現れ、川本の声が聞こえてきた。


「ちなみに早送りできない映像を作るには映像データにちょっとしたエラーデータを混入させるだけで出来るぞ。詳細は……そうだな、ナオの記憶に入れておこう。後で確認するといい」


 極めてどうでもいい情報だな。面白そうだから後で確認しておくけど。


「さて、ご褒美だが……ナオの各種制限を解除する方法だ」


 何だと?


「まず、メイン基板のここを確認してみてくれ。こことここのジャンパ線。これを切る。そして、こことここの端子を繋ぐ。それから……」


 ここから先は一時停止も出来るようなので、細かく止めて、映像を記録し、内容をメモしていく。


「以上だ。くれぐれも……壊さないように慎重に作業してくれたまえ」


 そして今度こそ再生が終了する。


「はは……」


 メモした箇所を読み返す。

 この改造をすると……現状の人工知能の制限となっている、各種機器との接続しているバスが汎用性の高い物に置き換えられるようになる。八ビットしかない低速バスでなく……例えば今回持ち込んでいるガラクタの中にもある、二百五十六ビットバスを使えるようになる。

 ナオの故障箇所を直すための部品がもっと安価で入手しやすい物で出来るようになる。現状で四割程度しか稼働できていないでいるナオが、ちゃんと全ての能力を発揮できるようになれば、どれほど助かるか。


「まずはナオに相談ね」


 足取りも軽く部屋を出た。

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