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  作者: ひじきとコロッケ
借金再び
19/60

情報

「そりゃ、始めたばっかりはみんなそんなもんさ」

「借金を返し終えてる時点で絶好調と言っていいぜ」

「そう言うものなんですね」

「ああ、そうさ」


 リサのコミュ力すげぇ……とシオンは感心していた。軽く挨拶、自分たちの状況、色々教えて欲しい……そうしたことを的確に伝え、話を引き出していく。

 話をしている相手はほぼ地球の人間と同じくらいの体格だが、顔かたち、肌の色などは全然違う。地球にいる動物に例えるのも難しい感じの見た目だが、シオンには思い当たる物が一つだけあった。河童だ。


 シオンたちはまだトラベラーとしての仕事は三つしかこなしていない。その内一つは自分たちではこなしていないというあたり、他と違うことは感じていたが、それ以上に借金を返し終えているというのはトラベラーの中ではかなり異色だと断言された。


「星の情報か……コンソールで情報をコピーできるのは知っているか?」

「え?」


 思わぬ一言にリサがこちらを見る。


「知ってた」

「知ってたなら教えておいてくださいよ」

「いや、いきなりそこまで話が飛躍するとは思わなくて」


「で、一応コピーできるんだが、トラベラーの中では惑星の情報ってのは金になる。トラベラーズの検索が金を取るところからもわかると思うが」

「ええ……」

「つまり、俺たちの持っている情報を渡してもいいが、相応の金は払って欲しい、ということさ」

「なるほど」

「だが、そうだな……こう言うのはどうだ?」


 声を抑えて、こう告げた。


「俺たちが今受けている仕事があるんだが、それをやってくれるなら惑星の情報、三つ渡してもいい」

「今受けている仕事?」

「俺たちもそこそこベテランだからな、お得意さんも出来てるわけ。そんなお得意さんから、トラベラーズを介さないで直接仕事を受けることもあるんだ」

「へえ……」

「ああ、やばい仕事ってわけじゃないんだ。ただ単に行き先の星にトラベラーズの管理するステーションがないんで、正式な仕事にならないってだけなのさ」


 連合に加盟している惑星は基本的にトラベラーズの仕事先になるのだが、惑星の文明度合いによってはトラベラーズの基準を満たす宇宙ステーションが建造できず、トラベラーズの管理外というケースが多くあるという。

 確かに、今の地球が連合に加盟しても、こんな人工的な重力を作り、大型の宇宙船が停泊できるようなステーションは建造できない。仮に建造できても維持できないだろう。トラベラーズを介さない仕事は、いわゆる闇営業と言えなくもないのだが、トラベラーズの基準でカバーできない部分でもあるため、特に禁止されることもなく、黙認されているというのが実情である。


「ちょっと考えさせてください」

「いいけど、俺らもそろそろ出発だから、早く決めてくれ」


 そう言うと三人は手にしていた飲み物をグイッと飲み干し、コップをカウンターへ返しに行った。態度は少しぶっきらぼうな感じだが、マナーはいいようだ。


「どうします?」

「んー、どうしようか」


 彼らが渡してくる情報に、こちらが欲しい惑星が入っている可能性は限りなく低い。だが、ゼロとは言い切れない。しかし、トラベラーになりたての自分たちが、トラベラーズを介さない仕事をするというのはリスクが高い気がする。


「リサ、コンソールを。私が話すわ」

「はい」


 コンソールを受け取ると、シオンは改めて三人に向かう。


「お、決まったか?」

「二つ質問させて」

「ん?何だ?」

「運び先、どのくらい遠いの?」

「お前らの推進ユニットの型式は?」


 シオンが警備隊から受け取った修理作業明細書の記載を答えると答えると、一人がコンソールで計算をする。


「ここから三、いや四日だな」

「そう。じゃ、もう一つ。荷物は、違法な物じゃないよね?」

「ああ、そう言う心配か。それなら大丈夫だぜ。まあ、開けて中を見せるわけに行かないから、そこは信じてもらうしかないんだが」


 シオンは素早く、自分でも計算する。現在の宇宙船の燃料その他の物資から計算。目的地まで移動後は、またここまで戻ってこなければならないし、燃料補給はこのステーションでないと出来ないのだが、その分は……なんとか足りる。


「おっけ。その仕事、引き受けるわ」

「よし、それじゃ早速荷物を渡すぜ。こっちだ」


 三人はそのまま宇宙船が停泊しているドックまで歩き始める。


「ところで惑星の情報だけど」

「ああ、三つだな。どういう惑星の情報が欲しい?」

「そうね、あなたが持っている中で文明値が一番高い物から三つでお願いするわ」

「文明値ね、ちょっと待ってろ……よし、これだな」


 連合に加盟している惑星はその星の文明――科学技術や文化芸術など――を元に文明値という数字が算出される。調査項目は数千に及ぶのだが、シオンが試しに地球の文明値を出してみたところ、七十くらいになった。ちなみに連合に加盟するために必要な文明値は五百以上。先の長い話だ。


 そして、三人の乗る宇宙船の前に到着。一人が中に入り、荷物を持ってくる。


「これが荷物だ。壊れ物じゃないが、丁寧に運んでくれよ」

「わかったわ」

「それと、これが運ぶ先の情報」


 シオンのコンソールに一つの星の情報が表示される。念のため確認すると、所要時間は四十二時間。確かに言われたとおりの距離のようだ。

 続けて、渡す相手の情報も表示されてくる。


「確認したわ」

「よし、じゃあお望み通りの惑星の情報三つだ」


 三つの惑星の情報が送られてくる。


「ん……こっちも確認できたわ」

「じゃ、よろしくな」


 すぐに出発するという三人が宇宙船に乗り込むのを見送ると、シオンは(きびす)を返し、リサと共に荷物を持って自分たちの宇宙船へ戻る。惑星の情報を確認するのは後にして、リサに荷物の固定を頼むと操縦室へ。ナオに経緯を説明して、目的地の設定をしながら出発準備にかかる。


「ギリギリ往復できる距離ですね」

「ちょっと節約気味で行きましょう」


 念のための予備燃料があるから、あまり心配しすぎる必要はないが、船内の明かりを少し消すだけでも充分節約になるので、リサにも協力してもらうことにしよう。


「では、出発」

「「はい」」


 ステーションからの出港許可を受けてシオンたちの宇宙船は目的の星へ針路を取る。


「自動航行設定、と」

「じゃ、後はのんびりですね」


 とりあえず各所の明かりは最小限にして、ナオとシオンが交代で航行状態を確認する他は自由に過ごす事になる。


「あ、リサ」

「何ですか?」

「節電のため、しばらく料理は禁止です」

「はぁい。わかりました」


 状況が状況だけに仕方ないだろう。


「無事に着けるといいんだけど」

「シオン!それフラグ!」


 ちょっとマズいかも知れない。

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