どこに行っても寝坊は良くない
ノアンは走っている。なぜなら寝坊したのだ。尾行の最中にもかかわらず寝坊したのだ。
「はぁ・・・はぁ・・どこ行ったんだろう?さっき出て行ったって女将さんは言ってたからそんなに遠くには行ってないと思うけど・・はぁ・・・はぁ・・・」
ノアンは少し止まってゆっくり考えた。
「そういえば昨日、教会で魔法陣を使うとか言ってたな。きっとそうだ!あの二人は教会に向かったんだ!そうとわかれば急ぐぞ‼︎」
「レリカ様、教会に着きました」
ノアンの予想は見事的中していたようで、レリカとデヒトの二人は教会に来ていた。
「ここからどこに行くんだっけ?」
「えーと、ここですね。今はこの下町の教会にいるのでここからスナハ王国の城下町にある教会まで行きましょう!そこが復讐者が現れるであろう場所に一番近い教会です。その付近でもう一度いい場所を探しましょう!」
デヒトは昔と比べるとかなりしっかりして頼りになる男になっていた。これも全てレリカによる記憶の書き換えのおかげだ。しかし、そのせいで本来のデヒトはもういなくなってしまった。
「それじゃ、行こうか!」
「はい!レリカ様!」
二人は教会の中に入っていった。
「うわっ!すごいなぁ〜」
「なにがです?」
「いや、私のいた世界には教会なんて無かったから」
「無かったんですか⁉︎」
「うん、無かったんだよ。だから初めて見たし、初めて入った。なんか落ち着くな〜、ここは。薄暗くていい感じだ!」
中に入ると結構広く感じた。横長の椅子がたくさんあり、奥には女神像のような石像が立っていた。天井にはステンドグラスで模様が描かれており、太陽の光に反射してとても綺麗に見える。中の光景に夢中になっていると誰かがこちらへ近づいてきた。
「あなたが砂漠の魔女?」
「はい!砂漠の魔女のチムハと申します!」
この教会を運営する砂漠の魔女のようだ。
「教会に来るのは初めてですか?」
「はい!そうです‼︎」
「やっぱりそうですか!あなた、教会の中に入ってからやけにキョロキョロしていてとても目立ちましたよ」
教会の中には何人か人はいるが、十何年も生きてる中で今頃この教会に初めて来る人などレリカ以外いないだろう。
「ご、ごめんなさい‼︎見たこともない装飾で思わず見入っちゃって・・・」
「いえいえ、謝らないでください、いいんですよ!教会を気に入ってくれるならどんな方でも歓迎します!はい!」
「そ、そうですか・・・よかった。あの!」
「はい、どうしました?」
「魔法陣を使ってここまで行きたいんですけど・・・」
レリカは地図を砂漠の魔女のチムハに見せて、ここから移動したい教会を示した。
「転送移動ですね?」
「て、てんそいどう?」
「転送移動です!この教会から城下町の教会まで行くとなると・・・」
そう言って奥の部屋へ行って、なにやら瓶を持って帰ってきた。
「この瓶半分くらいの魔力が必要ですね」
「まりょく?」
「はい!大丈夫ですよ、魔力は誰でも持っていますし、使ってもしばらくすれば回復しますから!」
「なるほど・・・」
チムハは魔力抽出のための魔道具を取り出し、二人の魔力を持ってきた瓶に入れ始めた。
「いっ!りゅりゃ!うわわわ、なんか変な感じ〜」
当然レリカは体から魔力を抽出されることなど経験にない。初めての感覚に思わず変な声がでた。それに比べてデヒトの方は特に何か叫ぶこともなく静かに終わった。
「はい!抽出完了です!これで転送移動できますよ!それと、お二人の魔力を教会に登録しておいたので次回からの利用は自動的に魔力が抽出される仕組みになります!」
どうやら教会にはメモリー機能みたいなのがあるみたいで、一度抽出した魔力の持ち主は二回目からはただ魔法陣に乗って、転送移動する場所を指定するだけで簡単に移動ができるらしい。
「では、転送移動しましょう!」
“詠唱、創生魔法・・・幻想地図”
チムハはなにやら魔法陣の後ろにある主祭壇で何かを唱え、自分の魔力を使ってこの国の立体的な地図を作り出した。
「おお・・・すごいな!町だ!いや、小さい国ができた!」
レリカは初めて魔法を使う瞬間を見て感動している。
「あ、そうだ・・・ライト、能力を書き写す」
「えっ?どうしました?」
「いや、なんでもないよ。続けてくださーい」
「で、では、行き先を決めて行きたい教会にタッチしてください!」
「はい‼︎」
レリカは城下町にある復讐者が現れるであろう場所に一番近い教会をタッチした。
「この教会で間違いありませんね?」
「大丈夫です!」
「それでは行きますよー!転送移動は一瞬ですけど、良い旅を〜」
“詠唱、転送魔法・・・転送移動”
チムハが言った通り転送移動は一瞬で、あっという間に目的の教会まで移動していた。
「本当に一瞬だったね、便利だ〜」
「ですね、どこかへ行くときはまた利用したいです」
転送移動の便利さを実感した二人は教会を後にした。
「さて、そんな事は置いといて・・・拠点!拠点を建てる良い場所を見つけなきゃ!」
「そうですね!頑張りましょう!レリカ様!」
そう、レリカとデヒトは自分らの拠点を建てるために昨日から拠点を建てる場所を探しているのだ。
「ここは城下町・・・か」
二人は城下町の商店街の出入口付近にいた。
「ない!ない ない ない ない ない ない!」
「な、なにがですか!」
ここは城下町なので当然どこかに建物を建てるスペースなどあるわけがない。
「場所!拠点を建てる場所が無いの!」
「まあ、ここは城下町ですからね、お店や民家で隙間なく賑わってますよ」
二人の周りには沢山の建物が並んでいてレストランや武器防具屋などのお店やこの国の人たちが住んでいる民家や豪邸がある。商店街の方を見ると沢山のお店が並んでいた。ま、まあ、当たり前か、だから商店街って言うんだもんね。
「・・・お店」
「えっ?」
「お店だ!お店出してそれを拠点にすればいいんだよ!それで商店街の路地裏にすぐに行けるようにしよう!うん!それがいい!」
「お店ですか・・・いいですね!それ!」
「早速、閉店してお店をやる人を募集しているところに行くよ!」
「はい!」
タイミングよく閉店しているお店なんて、そうそう無いと思うが二人に迷いはない!二人は商店街でお店を経営するために、商店街で閉店したお店があるか探しに行った。
・・・その頃、さっきまでレリカ達がいた下町の教会ではチムハが誰かともめていた。
「だから!たとえ友達でも、どこへ転送移動したかなんて教えられません!」
「そこをなんとか教えてくださーい!」
「無理なものは無理なんですー!」
そこにいたのは尾行中に寝坊して宿屋を慌てて飛び出してきたノアンだった。
「な、なんで無理なんでしょうか⁇」
「えっ?そ、それはプライベートなので個人の行動を他人に教えるなんて良くないじゃないですか!」
「他人じゃないですって!友達ですよ!」
「信用できませんよ!友達だっていう証拠はありますか⁈」
「そ、そんなのないですけど・・・」
「じゃあ、ダメです!お引き取りください」
「わかりました・・・帰ります」
ノアンは残念そうに教会から出て行ったと思ったらすぐに元気になって戻ってきた!
「あれ?!さっき帰ったのに!また来たんですか⁉︎」
「僕には有無を書き換える能力があったぁぁぁ!!」
「な、何を言っているんですか⁉︎だ、大丈夫ですか⁈」
「ダイジョーブです!えーと、二人の行き先がわから無いのを有にする!」
ちょっと無理やりだけど大丈夫かな?
「あ!わかる!わかるよ!いけたっぽい!」
「な、何がですかー!怖いんですけどこの人ぉー!」
チムハは感情がすぐにコロコロ変わったり、独り言を言ったりするノアンを見て少し引いている。
「転送移動させてください!二人の行き先は聞きませんから!」
「そ、それならいいですけど・・・」
「やったぁ!早くお願いします!」
「で、では、この瓶の半分くらいの魔力をあなたから抽出しますね」
「はい!」
チムハは魔道具でノアンの魔力を抽出し始めた。
「うっ!こ、こんな感じなんですか、魔力を抜かれる感じは!」
「最初だけですから大丈夫ですよ!」
「最初だけ?」
「はい、教会にあなたの魔力を登録しておきましたので次からは自動で魔力が抽出されます」
「そうなんですか!すごいなぁ」
「では行き先を決めてタッチしてください」
“詠唱、創生魔法・・・幻想地図”
「うわ!地図が出てきた!魔法って本当すごいな」
「どこにしますか?」
「えっと、ここで!」
「(えっ⁈あの二人が転送移動した教会を選んだ⁉︎で、でも教えてないし、一体どうやって・・・)わ、わかりました」
ノアンがレリカ達が転送移動して行った教会を迷うことなく当てたのでチムハはさらにノアンのことを怖れるようになった。
「では、転送移動します!早く移動してください!」
「え、なんでそんなどっか行け!みたいな・・・」
「お、お願いですから、この教会にはできるだけ来ないでください!さようならー!」
「な、なんd・・・」
“詠唱、転送魔法・・・転送移動”
こうして、とある教会での復讐者と砂漠の魔女のやり取りは幕を閉じた。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!私はよく寝坊していました...朝 弱いのです。でも!最近はしっかり朝起きていますよ!朝ごはんを食べる時間はありませんが(これは起きれているのか?)
皆さんは寝坊しないように早寝早起きしましょう!夜更かしはダメですよ〜。ではまた次回〜