最強に勝てる唯一の方法
五人の復讐者によってアモノが苦戦とまではいかないが、少々手こずっていた。
「全員で戦って全員で勝つ。戦い方としてはいいと思いますが、私を倒せると思っているのですか?」
勝つ気満々に見えるニーゼに対しアモノは改めて世界最強である自分自身を倒すつもりでいるのかと質問をしてきた。
「倒せると思いたいよ。だけどお前、“世界最強”なんだろ?今のところ、弱点もわからないし、全く倒せる気がしないよ」
「そうですか、この戦いは長引きそうですね」
「・・・そうだ、一つ質問してもいいか?」
少し間を開けてからニーゼもアモノに質問を問いかけた。
「質問?いいですよ、なんですか?」
「お前は書き換えた設定で世界最強なんだろ?それってこの世界にいる時だけか?他の世界ではどうなるんだ?」
質問の内容はアモノの設定、“世界最強”についての事だった。すると、アモノはニーゼの問いに対し、隠す事なくしっかりと教えてくれた。
「この世界にいる間だけですよ。それがわかったところでどうするんです?世界でも変えるつもりですか?」
「お、よくわかったな、大正解だ。俺とお前を他の世界に移動させる」
「・・・なるほど、それはいい考えです。しかし、この私が黙ってあなたと共に他の世界に移動すると思っているのなら、それは大間違いです」
アモノはニーゼの考えを肯定しつつ、簡単にはその考え通りにいかないと忠告もしてきた。
「わかってるさ、俺たち五人の力を合わせて無理やり移動させてやる!」
そう言ってニーゼは復讐者たちの顔を見て合図を出した。
「みんな!いくぞ・・・」
「待てニーゼ!」
合図の途中でニーゼたちの行動を止めた者がいた。それは復讐者のノアンだった。
「おそらく、世界を変えても意味がない」
「は⁈意味がない?なんでだよ、ノアン!」
ノアンは先ほどのニーゼの質問に対してアモノが親切に答えていたことに何か違和感の様なものを感じていた。そして、世界を変えてアモノに戦いを挑んでも勝ち目が無いことに気がついた。
「移動した先の世界でもう一度アモノが“世界最強”になったらどうする⁈お前には勝ち目どころか、逃げることもできないまま殺されるぞ‼︎」
「・・・くっ‼︎じゃあ、どうすればいいんだよ!弱点なんて本当にあるのかよ⁈」
ニーゼは何個か新しい策を考えていたが、その全てが通用しないように思えてきた。すると、そこへレリカが近づいてきて、真剣な表情で話しかけてきた。
「ニーゼ、落ち着いて聞いて。さっき、アンタに吹っ飛ばされてから少し考えて思ったんだけど」
「わ、悪かったよ‼︎」
レリカはそのまま続けた。
「もし、アモノの弱点が目で見てわかるものではないとしたら?」
レリカの言っていることが何となくわかるような気もするが、ニーゼは少し混乱していて頭の整理が追いついていない。
「?、つまり、どういうことだレリカ」
「つまり・・・」
レリカは先ほどの復讐者全員とアモノの戦いと自身の考えを踏まえて仮説を立てていた。そして、その仮説をニーゼに全て伝えた。
「なるほど、やってみる価値はあるな」
「まって、仮説だから!それに、もしこれが弱点だったとしてもそこからどうやって勝利に導くのかわからないし‼︎」
仮説を聞いてすぐに行動に移そうとするニーゼを全力で止めようとしてくるレリカだったが、ニーゼは止まる気など全くなかった。
「仮説でもなんでも、やってみなきゃ わからねぇだろ!」
「それはそうかもしれないけど・・・」
「だいいち、今はちょうど万事休すだからな、お前の仮説が次の作戦だ」
そう言ってニーゼは復讐者の四人を集めて簡単に説明を始めた。
「ノアン、セファ、デヒト、いいか?これからレリカの仮説をもとにした作戦で行動するぞ」
「わかった」
「で、何をするんだ?」
「レリカの仮説が当たっていると仮定し、奴の弱点を上手く利用して、アモノに俺たちの設定を“最弱”に書き換えさせる」
あろうことかニーゼは相手が“世界最強”なのに対し、自分たちの設定を“世界最弱”にしてもらうと言い出した。
「はぁ⁉︎お前頭大丈夫かよ!“最弱”の意味知ってるか⁈それに仮説が間違ってたらどうすんだよ!」
ニーゼの衝撃発言にセファは驚きながらも色々と聞き返した。
「もちろん最弱の意味は知ってる。そして、レリカの仮説があっていても間違っていても、俺たちが“最弱”になることが唯一、アモノに勝てる方法だ」
「どういうことだよ⁉︎」
セファとデヒトはニーゼの言っていることがまったくもって理解できていない。
「何をするつもりか、わからないけど。僕は良いよ」
ノアンもニーゼの意図を理解したわけではないが、作戦には協力するらしい。
「本気か⁉︎ノアン!」
「ああ、なぜだかこの作戦は試す価値があると僕は思うからね」
「ありがとう、ノアン。セファとデヒトはどうかな?もちろん強制じゃ無いんだけど、ここにいたら巻き込まれちゃうかもしれないから、協力が難しいなら一旦城に避難してもらうことになるけど・・・」
「うるせぇ、くそっ!わかったよ、ちくしょう、どうせ、レリカも協力するんだろ⁈私だってやってやるさ、最弱だろうが何だろうが上等だよ、どんな状況になろうとお前の作戦に協力してやるよ!」
「もちろん俺は最初から協力するつもりだったぜ!」
セファとデヒトも作戦に協力してくれることになった。これで役者は揃った。
「二人ともありがとう。よし、それじゃあ、うまく奴を誘うぞ」
“世界最強”となった“神”アモノを倒すために“最弱”にならなければならないニーゼ達はアモノに設定を“最弱”に変更してもらうように誘わなければならなかった。
「・・・私を別の世界に移動させる為に何かするんじゃなかったのですか?ずっと、その何かに備えて待っているのですが」
「あ、あー、待ってくれてたところ悪いが、お前を別の世界に移動させる作戦は中止だ。だが、別の方法でお前を倒す」
「別の方法ですか、それは一体なんです?」
「教えることはできない、ライト、指定座標に流砂!それに、お前が“世界最強”だとしても俺たちとの差がそこまで大きくなければ五人で力を合わせれば勝てるかもしれないからな」
ニーゼは“世界最強”に実力だけで勝てる可能性をアモノに提示した。
「なるほど、“世界最強”とは言ってもこの世界の頂点に立っているだけで私の次に強いであろう自分たち復讐者がうまく力を合わせれば倒せると言いたいのですね?」
そう言いながらアモノは自分を飲み込む流砂に強い衝撃を与え、流砂そのものを破壊して脱出した。
「ああ、そうだ!ライト、“事象消去”」
セファの能力で破壊した事象が消去され、アモノは再び流砂に飲み込まれていく。
「・・・やはり、厄介ですね。では、力の差が大きくなればあなた方はどうするのです?それでも、まだ私に向かってきますか?」
“世界最強”の自分に何度も何度も立ち向かってくる復讐者にアモノは流砂に飲まれながらも質問を問いかける。
「差が大きくなったとしても、“最弱”でさえなければ僕たち復讐者以外の仲間の力も借りてでもお前を倒すさ」
ノアンがさりげなく“最弱”という言葉を使ってアモノを誘った。
「なら復讐者全員を“世界最弱”にでもしてあげましょうか?」
「・・・っ⁉︎」
その質問に復讐者全員が緊張で答えられなかった。アモノを倒せる唯一無二の条件である“最弱”にこうも早くなれるとは誰も思っていなかったからだ。しかし、ここで質問に誰も答えられなかった事こそがアモノからしたら驚きと絶望で声が出なくなったと勘違いさせた。アモノは先ほどと同じ方法で流砂から脱出し、五人の復讐者に向けてペンを構えた。
「それでは、ライト、五人の復讐者の設定を“世界最弱”に変更する」
たった今、ニーゼ達はアモノの能力によって“世界最弱”となった。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!突然ですが‼︎皆さんは家にタペストリーを飾る時どうしてますか?私は壁に突っ張り棒を固定してS字のフックをかけてそこにタペストリーの紐をかけて飾っています。ですが、たまに突っ張り棒が落ちてきてしまうことがあり、何か他に綺麗に飾る方法があれば知りたいのです!いい方法があれば是非教えてください‼︎お願いします!では、また次回〜




