砂塵の嵐
一方、“神”を見張っていたはずのニーゼはアモノに向かって叫んでいた。
「お前っ!何してんだーーっ‼︎」
“神”二人を見張っていたニーゼの目の前で突然、アモノが“設定を書き換える能力”を使用してアルノの呼吸器を停止させた。
「がっ・・ぐっ・・あっ・・ア・・モノ・・・な・・に・・・を」
「こいつの醜態を見たでしょう?この程度では“神”に相応しくない。元はと言えば消滅世界の一人を復讐者としてこの世界に転移させた事もこいつの考え。そして、私たちは今、自分達で誕生させた復讐者の始末をしようとしている」
アモノは全ての責任はアルノにあると言っているようだ。しかし、それが命を奪っていい理由にはならない。
「それが何でそうなるんだ!今すぐ能力を解除しろ!」
「“何で”ですか。それはやはり、“神”は唯一一人の存在であるべきだと思うからですかね。そして私も疑問に思ったんですが、何故あなたがこの者を気にかけるのです?殺す気満々だったくせに」
敵であるはずのニーゼがアルノのことを気にかけるのが不思議に思ったアモノはニーゼに質問をした。
「確かに、俺は殺す気でやっていた。アルノが死ぬことに何の躊躇いもない。でもな、お前がそいつを殺す事だけは黙って見ていることは俺にはできない。なぜだかわかるか?」
「さぁ?なんででしょうか?」
「それは、お前たちは味方同士で仲間だからだ!そいつはお前のことを信じていた、それなのにお前は裏切り、殺そうとしている。信頼していた奴に殺されそうになる奴がどんな気持ちがわかるか⁈」
ニーゼは自分がデヒトに記憶を書き換えられ、クレンに刃を向けてしまったことを思い出す。
「・・・心臓が張り裂けそうになるくらいの悲しみと寂しさに襲われるんだ」
「それがどうしたというんです?私には関係ないですね」
「そうか、そうかよ。口で言ってやめないなら、セファ、頼む‼︎アモノが能力を使用した事象を掻き消してくれ!」
ニーゼはセファにアルノを助けるように言った。それを聞いたセファは思わず聞き返した。
「は⁈本気で言ってるのか?あいつは敵だぞ⁈」
「そうだ、でも!同じ“神”に殺される事なんてあってはならない‼︎ あいつは俺たち復讐者の手で殺されるべきなんだ」
ニーゼはとても真剣な目をしていた。ニーゼが本気だという事が伝わってくる。その目を見たセファは仕方なくアルノを助けることにした。
「わかったよ、ただし責任はしっかりとれよ!“事象消去”」
「ああ!ありがとう!」
セファはニーゼの頼みを聞いてアモノが能力を使用した事象を掻き消した。しかし、なぜか能力が解除されずにアルノは今も呼吸ができずに苦しんでいる。その後も何度か試したが、セファの能力が通用せず、アモノの能力は解除されなかった。
「ダメだ、ニーゼ!私の能力が効かない‼︎」
「なんだと⁉︎くそっ!なら、この辺り一帯を吹き飛ばしてでもその行為を止めてやる‼︎セファ!急いでみんなを避難させてくれ!」
ニーゼはアモノに味方を殺させないためだけにここら一帯を吹き飛ばすつもりのようだ。
「避難?わかったけど、何をする気だ⁈」
自分たちが避難をするほどの攻撃とは何なのかセファは気になって直接ニーゼに聞いた。すると、ニーゼはアモノにも聞こえる声で次の攻撃方法を教えてくれた。
「砂嵐で吹き飛ばす」
「は⁉︎正気か⁈・・・うわ、これ、やる気だよ。みんな、ここから逃げるぞー!」
ニーゼの攻撃の巻き添いをくらわないようにセファは“神”vs復讐者の戦いを少し離れたところで見ていた星放社にも声をかけて撤退の合図をした。
「逃げるってニーゼを置いていくのか⁈」
ニーゼが一人残っているのを見たレグルがセファを問いただす。
「あいつの指示だよ」
「そ、そうか。でもどこに逃げるんだ?」
レグルは心配したが、ニーゼの指示だと聞いて逃げに徹することにした。しかし、逃げるといってもどこに逃げるのか全く決めていなかった。
「そうだな・・・あそこだ!一番頑丈そうだ!あの中へ急げ!」
セファはしばらく考えてから辺りを見渡し、目に映った“一番頑丈そうな建物”つまり、城の中に逃げることにした。
「セファ、どこ行くんだ⁈」
ザギンとレリカの戦いを仲裁させて戦闘に復帰しようと戻ってきたノアンとすれ違った。
「おぉノアンか、城の中だ!お前達も急げ!ニーゼが砂嵐でこの辺り一帯を吹き飛ばす気だぞ!」
「なっ、何でそうなった⁉︎」
セファは簡単に現状を報告したが、ニーゼがこの辺り一帯を吹き飛ばすことの説明を省いた為、ノアンの頭の中は混乱していた。
「色々と説明は後だ!ここにいたら巻き添えになるぞ」
「わ、わかった。急ごう!」
気になる事があるがノアンはみんなと一緒に避難するためにセファについて行くことにした。ところが、この時ある一人の復讐者の辞書には“逃げる”という言葉は存在しなかったようだ。
「待ってノアン!復讐者なら砂嵐の中でも生きられる」
「何言ってんだお前は!ニーゼの砂嵐はただの砂嵐じゃないんだぞ!あいつの砂嵐は全ての砂が鉄の鎧を貫く程の威力を持ったまま出来上がるんだ、常識で考えちゃだめだ!」
レリカが言ったことに対してノアンは否定をした。ノアンの言う通りニーゼの砂嵐は通常の砂嵐とは危険度が全く違った。
「ここにいる四人の復讐者で力を合わせれば、そんな砂嵐なんて通用しない。大丈夫、行こうノアン!」
ノアンは少し間を開けてレリカに返事をした。
「・・・わかった、行こう」
「まじで言ってるのか⁉︎くそっ!デヒト、行くぞ」
ノアンの返答にセファは少し呆れた様子だったが、協力しないわけではないらしい。
「えっ!俺も行くのかよ⁈」
「当たり前だろ!今のレリカの台詞聞いてたか⁈あ、それとも、私たち三人は行くのに、お前はここで逃げるのか?」
「くそっ!わかったよ!行けばいいんだろ行けばっ‼︎もう やけくそ だっ!」
四人の復讐者は城へ向かう星放社と別れてニーゼの元へと向かった。
「ライト、アルノの周りにある空気を全ての攻撃を無効化するバリアーに変更!」
ニーゼは呼吸ができずに苦しんでいるアルノの周りにバリアーを展開した。
「アルノにバリアー?そんなもの無意味だと思いますよ?そんなことをしてもこいつの呼吸は止まったまま」
「いや、それでいいんだよ。それより、お前ガードした方がいいぞ?」
ニーゼはガードをするようにアモノに忠告をした。しかし、アモノはその忠告を真剣に受け入れなかった。
「砂嵐程度でガードですか?では、私が必要と判断したらしますよ」
「そうか、判断する時間があればいいな。ライト、風を操る能力を付与。そして、砂と風の両方を操ることによってこの最強の技は完成する、くらえ!“砂塵嵐”‼︎」
こんにちは!作者のユウキ ユキです!この物語を書き始めてから一年が経ちました!なんかあっという間で凄く早く感じてます。これからも最後まで休まず毎週金曜日に投稿していくのでよろしくお願いします!では、また次回〜




