敵の敵の復讐者
「ニーゼ!!」
・・・クレンの声が聞こえる。いや、敵の声が聞こえる。敵が俺の名前を呼んでいる。
「ニーゼ、その女を砂で殺せ」
「わかった・・・殺す」
俺は目撃者の命令に従い、クレンという名の女騎士を殺さなければならない。しかし、なぜ敵の名前がわかるのだろう?敵と自己紹介でもしたのだろうか。まあ、そんなことは今はどうでもいい早く目撃者の命令通りに女騎士を殺さないと。そういえば目撃者の名前はなんていうんだろう?
「えっと・・・ あんたのことはなんて呼べばいいんだ?」
「ああ、そうだったな。俺の名はデヒト。名前の後に様でもつけて呼べ」
「わかった・・・デヒト様」
「それでいい。よし、早く殺せ」
「ああ、殺す」
俺は能力で砂を操り女騎士へ放とうとした。でも、ただ砂を放つだけでは威力が弱い。なので少し書き換えることにした。
「ライト、俺の操る砂の貫通力を鉄の鎧の防御力より強化する。くらえ!はぁぁぁっ」
砂の威力を書き換え、女騎士に放つ。
「ニーゼ!目を覚まして私だよ!クレンだよ!」
クレンはギリギリのところで避けたが砂に掠った部分の鎧が欠けてしまった。
「無駄だ、そいつに何を言ってもお前のことなど憶えていない」
「あんたデヒトだっけ?ニーゼに何をしたの!」
「記憶を書き換えただけだ。そこにいる元お前の部下も同じだ。少し記憶を書き換えるだけでお前への忠誠がコロっと俺への忠誠に変わる」
「記憶を書き換える⁇どういうこと?」
「簡単さ、俺もそいつと同じ復讐者でこの世界に来る前に能力をもらったんだ」
「・・・・・・??」
「なんだ何も聞いていなかったのか!こいつぁおもしろいな!ククク、お前はそいつに全く信頼されてなかったみたいだな!ニーゼ!クレンを殺せ」
「ああ、わかってるよ。デヒト様」
「ニーゼ・・・そうなの?私のこと・・・信頼してなかったの・・・?」
「砂で剣を生成。砂の剣!」
砂の剣。ニーゼが砂を操り作り上げた剣。砂の剣は形を保つために常にニーゼが操っている。それによりこの剣の貫通力、則ち切れ味は鉄をも簡単に斬ることができる恐ろしい剣になる。
「私はニーゼのこと・・・信頼してたよ・・・一緒に探してくれて・・・とても嬉しかったんだよ?」
「何を言ってるのかわからんな。終わりだ・・・死ぬがいい」
そう言ってニーゼが砂の剣をクレンに向け振り下ろす。
「砂の剣の攻撃力が有ることを無にする!」
突然どこからか声が聞こえた。砂の剣はクレンに振り下ろされたがクレンは傷一つなかった。
「砂の剣の防御力が有ることを無にする!いまだ!君の剣でその剣に攻撃するんだ!」
「えっ⁉︎あっはい!」
クレンは自分の剣でニーゼの砂の剣に攻撃をあてた。すると砂の剣はクレンの攻撃を受けたところから砕け、形を失ってしまった。
「そこのお前、何をした」
「君が仲間を殺そうとしたから止めたんだよ」
「そうじゃない。何だ今のは?普通の人間にできることじゃない。なぜ砂の剣が砕けた」
「君のご主人様が言ってただろ?復讐者はお前一人じゃないって」
「ニーゼ、下がれ。クレンという女騎士は俺が殺しておく。お前たちはニーゼを連れて拠点にもどれ」
「了解。デヒト様」
「「「了解しました!デヒト様」」」
「待って‼︎ニーゼ行かないで!」
クレンがニーゼを止めようとしたがニーゼは聞く耳を持たず行ってしまう。
「無駄だ、ニーゼはもう俺の部下。お前のことは全く憶えていない」
ニーゼはデヒトの部下と一緒にどこかへ行ってしまった。
「うっうう・・・ニーゼ・・・行っちゃいや・・・」
「クレンちゃんだっけ?僕の名前はノアン。有無を書き換える能力をもらった復讐者だ。ニーゼ君は後で必ず取り戻すだから今はここから逃げよう!僕を信じて!僕は君たちの味方だ!」
「・・・うん、信じてみる。さっき助けてくれたし」
「よかった!じゃあ、君の仲間を連れて僕の指示したところに集まって」
「わ、わかった」
「ノアン!なぜそいつらの味方をする!貴様には関係ないだろう?」
「僕は君たちとは敵対しているだろう?敵の敵は味方だ。それに君たちはある程度人数がいるが僕は一人だ。仲間が増えるに越したことはない」
「ふん、そうか。メモリーライト、お前の中の俺の能力を風を操る能力に変更」
デヒトは元クレンの部下に向けてペンを構え唱えた。
「メモリアルチェンジ」
するとデヒトの周りに風が集まりデヒトを中心として風が渦を巻いている。
「風を操るの?」
「そうだ。くらえ!せあ!」
デヒトが手を左から右へ横に振ると風の斬撃のようなものがノアンに向かって飛んでいく。
「風が僕に与えるダメージが有ることを無にする」
ノアンがそう唱えた瞬間、風の斬撃がノアンに当たった。スパッという音がして何かが斬れたような気がしたが、ノアンは無傷だった。ノアンの後ろにある建物の残骸のようなものは綺麗に斬れているがノアンはまるで今の攻撃が無かったかのように平然とそこに立っている。
「最初会った時はすぐ逃げやがったからな、初めて見たよ。それが貴様の有無を書き換える能力か?」
「そうだよ。君は記憶を書き換える能力かな?」
「ふん、察しがいいな」
「さっきからメモリーやらメモリアルって言ってるじゃん」
「そうか、言葉の意味がわかるのか」
「ま、そんなことはどうでもいいんだよ。君を捉えるトラップが無いことを有にするあと、君がトラップから逃げる時間が有ることを無にする」
次の瞬間、デヒトの足元にあった砂が突然下へ行き始め蟻地獄のようになり始めた。デヒトの足はどんどん砂に埋もれていくがデヒトはその場から逃げることができない。そしてとうとう簡単には抜け出せないくらい埋もれてしまった。
「なっ!いつの間にこんな埋まった⁉︎」
デヒトには逃げる時間が有ったがノアンの能力よってそれが無くなったのだ。
「すごい、ニーゼが勝てなかったやつを圧倒してる」
クレンが部下たちと一緒にノアンの戦いぶりを見ながら安全なところへ避難している。
「クレンちゃん!そこの瓦礫の裏にまわって!」
「う、うん!みんな、行くよ!」
「「「はい!」」」
崩壊した建物の瓦礫の裏に集まり、ノアンがペン構え唱えた。
「ここから地下へ逃げる道が無いことを有にする」
瓦礫の下に地下へと続く道が現れた。
「さあ!みんな早く!」
「よし!みんな行こう」
クレンとその部下たちはノアンに続いて地下へと進んだ。みんなが地下にきたことを確認してノアンがまた唱えた。
「この道の入り口が有ることを無にする」
この道へ入るための入り口が閉じた。
「よし、みんなもう少し下へ進もう」
「わかった、行こう」
しばらく下へ歩いて行くと水の流れる音が聴こえてきた。クレンたちは地下に水が流れてる地下水路のトンネルに辿り着いた。
「ここから歩いて行けば王都の真下まで行けると思うよ。そこまで行けば上に上がる道もあると思う」
「ありがとう。色々助けてくれて」
「いや、いいんだよ。僕が助けたくて助けたんだから」
「でも、どうしてこんなに助けてくれるの?」
「敵の敵は味方だからかな?ニーゼ君を助けて僕と一緒に戦ってほしいから、ニーゼ君の仲間も助ける」
「そっか。まあ、本当にありがとうね。でもニーゼは私が絶対助けるから!」
「うん、それでいいよ!それじゃ行こうか!まだ王都までは長い道のりだからね!」
「よーし、行くぞー!」
「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」
こうしてニーゼとは一旦別れてしまったが、絶対にニーゼを取り戻すと強くこころに誓い、再び地下の道を歩き始めた。
どうも、作者のユウキ ユキです。どうですか?少しは面白くなってきたでしょうか?少しでもおもしろいと思っていただけたら嬉しいです!毎週金曜日に休まず投稿してるのでこれからもよろしくお願いします!ではまた次回〜