能力を与えた者vs能力を与えられし者
こちらに向かってくる集団、それは下僕の十二星座の中でまだ城にまだ到着していなかった、牡牛座を司るタウラス隊だ。
「ノアン、奴らのことは我らに任せよ!お主らの邪魔はさせん!」
「ああ、頼む!」
焔赤兜はタウラス隊を城に入れない為に自分達が相手をすることを決意し、ノアン達に背を向けた。
「聞け!焔赤兜、敵はギューマ率いるタウラス隊だ!なかなか手強いが、戦いながらエクリの木の方へと追い込むぞ!」
「「「了解!」」」
「よし、ゆくぞ!」
焔赤兜はシャブニカを先頭に一斉に走り出した。
「さて、君はどうるんだい?一対一でも君は勝てないと思うが、今は二対一だ。この状況で君は逃げるのか?それとも勝てないとわかっていて立ち向かうのか?さあ!教えてくれっ!とても気になる‼︎」
アルノが話しかけてきた。確かに今の状況は最悪だ。敵が二人で、しかも僕たち復讐者と同じような能力を使うアルノとアモノと名乗る二人は“神”という存在らしい。
「二対一じゃない、私がいる」
崩れた城壁の中から黒いフードを被った金髪の少女?が“レイピア”を引きずりながらでてきた。
「レリカっ⁉︎お前は・・・‼︎」
「わかってる。私は取り返しのつかない事をしたのは確か。でも、今は、今だけは私と手を組んで“神”倒すために一緒に戦ってほしい」
「・・・わかった。今はお前のした事の全てを忘れて手を組んでやる」
ノアンはこれまでのいざこざは一旦水に流し、レリカと共に戦う事を決意した。
「楽しいお喋りは終わったかな?で、結論はなんだ?どうするんだ?手を組むのか?」
「どっちでもいいだろ!ライト、“忘却”」
アルノが一瞬だけ油断した時をレリカは見逃さず、アルノの記憶を消すことに成功した。アルノはその場に倒れた。
「よし!あとはあいつだ」
二人はもう一人の“神”アモノに向かって走り出す。
「あらら、仕方ないですね、忘れた記憶を復元する能力を私に追加。ライト、記憶治癒」
倒れていたアルノが何事もなかったかのように立ち上がった。アモノの唱えた言葉通り、レリカによって消されたアルノの記憶が完璧に復元されたようだ。
「二人ともどこへ行くんだい?ライト、二人を対象とし、対象の動きを停止する」
「か、体がっ!」
アモノの方へと走っていたノアンとレリカの動きがが突然時間を停止したみたいに止まった。
「くっ、“事象消去”」
しかし、レリカの一言でそれは無かった事になり、再び二人はアモノのめがけて走り出す。
「めんどうですね、ライト、レリカに書き加えられた設定を抹消」
「ライト、“忘却”」
「倒れないぞ⁈・・・なら、脚の力が有ることを無にする!」
レリカ能力が効いていない様子だった。それを見たノアンは自分の能力でアモノの脚の力を無くし、その場から移動できなくした。
「おっとっと、これは・・・立てなくなってしまいましたね」
「アモノとレリカに距離が有ることを無にする」
「終わりよ、“加魔刺突”!」
ノアンの能力で一気に距離を詰めたレリカはアモノめがけて攻撃を放つ、が。
「ライト、アモノを対象とし、対象の位置を私の隣に移動する」
アモノを間合いに捉えた次の瞬間、アモノの姿が目の前から消え去ってしまう。レリカの攻撃は空振りした。
「なにっ⁉︎どこへ行った‼︎」
「こっちだ」
声のする方を見るとそこにはアルノとアモノが一緒にいた。
「一瞬にして移動したのか⁉︎」
「私の力だ。君たちはもう少し楽しめると思ったのだが、つまらん。ライト、アモノを対象とし、対象の状態を正常に回復する」
すると、ノアンに脚の力を無くされたはずのアモノがスッと立ち上がる。
「ノアン、私の書き写した能力が使えなくなってる」
「なんだって‼︎それじゃあ、さっき能力が効いていなかったのはそのせいか!」
レリカが自分の身に起きたことに気がついたようだ。しかし、気づくのが遅かった。
「では、二人ともさようならです。ご縁があればまた会えるでしょう。そうですね、十秒差し上げます。ライト、ノアンとレリカに十秒後、意識を失う設定を追加する」
「十・・・九・・・八・・・」
隣にいるアルノがカウントダウンを開始する。
「ふざけるな!なんだよそれ‼︎くそっ!」
「ノアン!私の能力を元に戻して!早く!」
レリカはアモノの言っていたことを思い出し、カウントが終わった時にはもう手遅れだということに気づき、ノアンに急いで能力を戻してもらうように言った。
「・・・五・・・四・・・」
「わ、わかった‼︎レリカの書き写した能力が無いことを有にする!」
「・・・二・・・一・・・」
ノアンのおかげで全ての能力が戻ったレリカは急いで“事象を掻き消す能力”を使用する。
「イベントキャン・・・」
「零」
レリカは“事象消去”でアモノが能力を使ったことをなかったことにしようとしたが、少し遅かった。カウントが終わり、アモノの言った通り二人が同時に意識を失ってしまった。その数秒後、城の窓ガラスが割れる音が聞こえた。
「ノアンっ‼︎くそ!いや、レリカも⁈ライト、落下ダメージを無効化する能力を付与。ライト、ノアンの・・・しゃあねぇ、ノアンとレリカの周りにある空気を全ての攻撃を無効化するバリアーに変更!」
アモノが上空に目を向けた。そこには玉座の間でレリカがいないのを確認し、急いで城門向かったはずのニーゼがいた。
「・・・おや、ご縁がありましたね」
「誰だ‼︎」
「そうでした、直接お会いするのは初めてですね。私はアモノ、あなたに“世界を書き換える能力”を与えた機械提供者、そしてこの世界に二人しか存在しない“神”です」
「お前が機械提供者?神?・・・いや、お前たちが誰だろうと関係ない!何でノアンと敵であるはずのレリカが一緒倒れてんだよ!お前ら、こいつらに何したんだァ!」
状況がよく理解できていないニーゼはノアンと敵であるはずのレリカまで一緒に倒れているのを見ると、すぐそばに立っていたアルノとアモノを新たな敵と判断し、二人に向かって怒鳴った。
「ん?用済みになったから処分しただけだけど?」
アルノは常識を語るような口ぶりでノアンとレリカの現状を説明した。
「“用済みになった”だと・・・?ふざけるな!こいつらはお前の道具じゃないんだぞ‼︎」
「そんなことより、君の能力は本当に興味深い‼︎もっと見せてくれよっ!」
「“そんなこと”?お前はこの状況を“その一言”で終わらすのか?」
アルノの言動にニーゼは言葉には出さないが、心底うんざりしていた。
「しつこいなぁ、もう終わった奴らのことはいいだろ。さぁ、早く君の能力を見せてくれ!」
「わかった」
「ありがとう!アモノが与えた能力で一番気に入っているんだ!よ〜く見せてくれ!」
ニーゼの返答にアルノはテンションが上がっている。
「今すぐに、“お前を殺すため”に能力を使ってやるよ。一瞬で終わらすからよく見えないかもなっ!」
そう言うと、すぐにペンを構えてこう唱えた。
「ライト、誰も触れることのできない光速のスピードを俺に付与。“砂の剣”!」
鉄製の鎧も簡単に切り裂くことのできる“砂の剣”を生成し、右手で構える。そして、左の手で再びペンを構えてアルノの足元に向け唱えた。
「ライト、指定座標に底なし沼」
指定した座標はペンを向けた先、アルノの足の下だ。そこに突如、直径三十センチ程度の小さな円状の底なし沼が現れアルノの動きをある程度制限した。次の瞬間、ニーゼは得たスピードで瞬時に距離を詰め“砂の剣”を振りかぶった。
「ライト、攻撃の対象をそこにある瓦礫に変更」
あと数センチでアルノに当たったというところで突然、“砂の剣”が横に逸れ、アルノには当たらずにすぐそこにあった瓦礫に攻撃が当たった。どうやら“世界を書き換える能力”を持つニーゼでも一筋縄ではいかないようだ。
こんにちは!作者のユウキ ユキです!今年ももうすぐで終わってしまいます‼︎この一年があっという間でした!この物語を書き始めて初投稿したのが今年の“2月15日”です。10ヶ月という期間もすごく短く感じます!来年の最初の金曜日にも続きを投稿する予定なので来年もよろしくお願いします!では、皆さん良いお年を〜。また次回〜




